爺と魔王
初投稿です。
あまりいい文章は書けませんが、
どうぞお付き合いください。
天正10年6月12日 午後7時
尾張の一国主から桶狭間合戦を経て、将軍義昭を擁立させ、近畿を制圧した後に武田、毛利、上杉と戦い、天下を今治めんとした
『織田信長』は京都の本能寺に滞在していた。
「では、信長様、私は部屋の警護を担当していますので、今宵も安心してお眠りくだされ。」
「うむ、よろしく頼む。蘭丸よ。」
現在信長は長年小姓だった蘭丸から見ても、いつになく上機嫌だった。
しかし、信長は上機嫌ではあるものの、
何か懸念があるように蘭丸は感じた。
それとなく、
「…どうされました?」
「いや…どうも爺の顔が浮かんでな…」
爺というのは、まだ信長が尾張の一国主で
あった際、信長の教育係であった
平手政秀である、
まだよく自分が「尾張の大うつけ」 と呼ばれていたとき、よく叱ってくれ、そして悩みなどの相談にも乗ってくれる、信頼できる家臣であった。
結局は、爺は信長を諌めるために自害してしまったのだが、今でも信長は気に病んでいた。
「爺と言いますと、平手政秀殿でございますか? 父上からよく話は聞きます。政秀殿がどうかされました?」
「…いや大丈夫だ。それより信忠はどうだ?」
「信忠様ならもう消灯しているかと…。」
「うむ、では俺も寝るとしよう。」
「承知致しました。ではこれにて。」
そう言って蘭丸は部屋から退出した。
ふと外を眺めると、美しい星が瞬いていた。
そういえば爺が天文について語っていたことがあった。もう一度この空を爺と共に…
信長は気付くと泣いていた。
「俺は天下をとる。」
そう呟き、この星空に背を向けた。
不思議と爺に呼ばれているような気がした。