第三話 第五部 初打席と口笛
チョンジャ「(なかなか良いバッターね。)」
相手投手もこのバッティングで完全に目が覚めた顔に変わった。甘い球は一切来ないだろう。夕菜、出だしが大事ですからね。
シューーー バシン!
ボールワン!
ストレートがしっかりと決まっている。やはり全国代表で選ばれる投手は強豪ぞろいだ。
巴美羽「なにこれ、こんなレベルなの世界大会って。」
由紀「えっ? なに言ってるの?」
巴美羽、いくらなんでも相手のことを舐めすぎではないのだろうか。そんなこと言っていると絶対に痛い目にあうよ。いくら良いバッターだとしても…それは最低だよ。
シューーー ギィイン!
夕菜「ちっ。」
打球はセカンドフライ。ライズボールも持っているのだろうか。セカンドがゆっくりと構えてとる。
バシン! アウト!
夕菜さんはアウトになってしまった。さすがにこの投手から初見で打つのは厳しいものがあるのかもしれない。
そして夕菜さんがベンチに戻ってきた。
夕菜「由紀。」
由紀「どうしたの夕菜。」
夕菜「ストレートは由紀なら対応できる。ライズボールは相当伸びてくるから気をつけてね。」
夕菜からのアドバイスだった。私はそれを十分理解してヘルメットをかぶってネクストバッターサークルに入っていった。湯子はバットを短くもって構えている。
シュッ ググググッ
湯子「(なっ!?)」
ギィイン
ああ、湯子のバッティングの時に出る悪い癖が…。遅いボールに体が突っ込んでいって凡打になってしまった。サードが綺麗に処理してファーストに投げる。
バシン! アウト!
湯子「うーん。」
湯子も凡退になってしまった。湯子、この癖を直さない限りこういうバッティングは増えていくよ。といって私も凡退になったら元も子も無い。私が打ってこの悪い流れを断ち切らないと。
みちる「先輩、頑張ってください!!」
私はバッターボックスに入ってバットを一回、二回と回した。あのピッチャーの球筋を調べていてはこの打席にヒットは難しい。だからいけるとおもったら行くしかない。
シューーー バシン!
ボールワン!
あれがライズボール。かなり浮いてくる。真ん中より少し高めだとおもっていたけどかなり上に伸びてきた。だったら…狙うべきは…ストレート!
シュゴオオオ ギィイイイン!
衣世「おお!」
みちる「二塁いけます!!」
打球は左中間に飛んでいく。私は自慢の足を使ってセカンドベースまで一気に走っていく。そしてスライディングをした。いきなりツーベースを打つことができた。そしていよいよ巴美羽の出番…?
巴美羽「ひゅーひゅー。」
口笛を…吹いているのか?




