仲間と妹
ディアナとんでもない約束をしたわりにポジティブなプラナ。パーティーは目前……
「はー、そりゃ大変な事になったもんやなぁ」
ドワーフの少女ストレは金色の脚をもつ豪華な椅子にどっしりと深く座り、ギシギシと揺らす。
「ちょっと! 私の家の家具はみな高級品なんだから荒っぽい扱いはやめてくださいます!?」
「まーそうカッカしなさんなって。プラナん家はこれくらいのモンいくらでも買えるやろ」
「そーいう問題じゃなーい! まったく、この太足女は礼儀と言うものを全っぜんわかってらっしゃらないのですから……ねえ、パメラ」
「……」
ストレがプラナの家に遊びに来たのは、これがはじめてだった。折角の休みだからと言うことで、単細胞な彼女を説得して豪邸への泊まり込みまで可能にしたのは、彼女の行商ドワーフ仕込みの話術の為せる業であり、凸凹なのだが何か馬の合う2人の友人関係の為せる業でもあった。
「で、なんとかなる見込みはあるんかいな? あんさんから恋愛話なんて聞いたこともなのに……失敗したら悲惨やで〜」
「フン! 私を誰だと思ってらっしゃるの? カイザーウォーク家のこの私なのですから成功するに決まっているでしょう!」
出任せで言った事実無根の出来事も、目的をちゃんとボロを出すことなく達成すれば真実になるのだからから問題ないというのがプラナの強引でありポジティブな思考であった。
「問題は2人きりになってからですわね……社交界デビューをして間もない方をいきなり心を傷つけてしまわねばならないのですから。なるべく温和に交際をお断りする方法を考えないと」
「はー、ある意味プラナのそういうとこには感心するわ」
「ある意味……って部分が余計でございますわよ」
「へいへい。まったく、こんなお姉さんがいて、パメラちゃんも大変やろ?」
話を急に振られて、プラナの横にいる少女は驚きあたふたした。彼女の名は、パメラ=カイザーウォークと言い、その名の通りプラナとは血の繋がった姉妹である。
容姿は姉によく似ている彼女だが性格はほぼ真逆の内気で無口なおとなしい子だ。ちょっと声をかけるとすぐに照れてもそもそしてしまう姿は小動物のようで可愛らしい。そして、貴族特有の上品さも漂わせていた。
「はは!パメラちゃんはおしとやかやなあ! どっかのすぐキレる野蛮なお嬢さんと兄弟とはとても思えんわー」
「それ、思いっきり私の事言ってますよね! この恩知らず! なんなら、今から家から締め出してやろーかしらっ? 」
「すいませんでしたーお嬢様、それだけは許してくんろ!」
「それ、本気で言ってないでしょ!?」
「へへへ〜だって、そんなことしないの分かってるし。なんだかんだ、プラナって良い奴やしな」
それを聞くと短気な彼女の顔はかーっと赤くなった。
「そ、それは誉めてるつもりなのかしら?」
「まあな、そうじゃなきゃパメラちゃんもそんなにあんさんの側には寄らんやろう?」
おとなしい彼女はこくりと頷いた。それを見ると、プラナはフンと鼻息を出してクールダウンした。
「まったく……仕方ありませんわね、野宿の件は無しにして差し上げますわ」
「さすがはプラナ様。では、今日の夕飯も楽しみにしてますよぉ!」
「はー、図々しいことこの上ありませんわ!」
プラナ達がこうして他愛もない話をしている間も、世界は戦いの中にあった。共和国連合と帝国の戦いの炎は夜も燃え、彼女の仲間達は今まさにその中に立っているのだった。