ハッタリの結果無茶な約束に発展
レストランで一人淋しく(本人は思ってません)食事をしているプラナのところに、知人のディアナが現れた。彼女の事をうざったいと思っているプラナのイライラはかなりのもの。さらに負けず嫌いの見栄っ張りな性格が災いし、思わずウソを連ねてしまった。そして、その真偽をディアナに試される羽目に……
「私を試そうと、そうおっしゃりたいの!? はん!まったく、命知らずでございますわね! ……どうなさるつもりかは存じ上げませんが」
ディアナは妖かしい笑みを浮かべて、プラナをジリジリと挑発する。
「明後日のナイトパーティー、プラナさんも勿論いらっしゃるのよね?」
「ええ、勿論でございますわ! そのために先日はおニューのドレスの準備したのですから」
「では、あの事もご存知なのかしら?」
「何ですの!? さっさと言ってくださいまし!」
「ミトルスカ家の御子息が社交界にデビューする話よ」
「……あ、ああ、勿論、存じ上げておりますわ」
プラナは知ったかぶりであったが、ミトルスカ家がサカル国の有力貴族であること、カイザーウォーク家に匹敵する財を持っていることは知っていた。
「私やプラナさんより年上らしいのだけど、今回やっと腰を上げるなんて、今まで何をしていたのかしらね?」
「まったくですわ。そんなに表に出られない程、お恥ずかしい姿でもしていたのかしら?」
「ううん、噂ですと、背は高く、端正な顔立ちをした美声年だそうよ」
「ふーん。で、それがどうかしましたの?」
「ここまで言えばお分りでしょうに。プラナさん、あなたはナイトパーティでその御曹司にアプローチしてセカンドディナーに持ち込んでくださいませ!」
「のはへっ!?」
プラナが驚くのも無理はない。なぜなら、セカンドディナーと言うのはお持ち帰り……つまり男女の交際を承諾し、その夜を2人きりで過ごす事なのだから。場合によってはそのままニャンゴロになり結婚するに至る事例も少なくはない。ただ、初対面でこのお持ち帰りにで行き着くのは極めて稀な事であった。ましてや、社交界デビューしたての人間となれば、様々な要因から成功率は限りなくゼロに近い。
「あら? まさか、怖気付いたわけじゃありません世ね?」
「あ、あったり前でございますわ。そのくらい、私にかかればチョチョイのチョイってやつでございます!」
「そうですか、流石は名門カイザーウォークの方ですわね。では、当日この目で見させていただきますよ。」
「オーッホッホ! 格の違いってものを見せてあげますわ! 」
「期待してますわ。ただ、無いとは思いますが、もし失敗るようなことがあれば、土下座して謝っていただきますからね」
「フン! そっちこそ、当日私たちの幸せな様子を嫉妬しないよう、注意なさいませ!」
「ええ……では、今日はこれで。パーティー、楽しみにしていますわのね」
そう言い残してディアナは颯爽とその場を去っていった。
「かーっ!」
それを見届けた後、プラナは怒りをこめて机の足をガシッと蹴った。とてもイライラしていたが、あれだけの口から出任せを言ってとんでもない約束をしてしまったことに関しては、ほとんど後悔しないのが、ある意味彼女の美徳だった。