孤独なイライラディナータイム
話は今に戻る。
プラナは優秀な女騎士へと成長したが、性格に問題がありすぎて人徳はゼロ。今日も彼女の単細胞は元気ハツラツで……
「まったく、一体これは何なんですの!」
「アムウェイ魚のキュロットソースがけでございますが……」
「名前を聞いてるんじゃありません! 何でこんな紫の花が乗っているのかと聞いているのです!! この前にお頼みした時はピンクのプロンガだったでしょう?」
「それは、季節によって替えておりまして……」
「こんな毒げた色が側にあっては、折角のお料理が台無しですわ! あのお花に替えて持って来てくださいませ!」
「は、はい……畏まりました」
怒れる乙女に怒鳴られて、壮年の男は料理を持ってトボトボトホホと厨房に戻っていった。
ここ、高級レストラン「サルートサワカ」 は上流貴族に好まれる名店である。サワカ湖の際に立っていて、店から見える澄んだ湖面は美しい。特に夜空に月が栄えるときは、湖の中にもう一つの月が現われるので格別なのだ。料理も最高のものなのだが、この景色を目的に来る客も少なくない。この日も絶好の月夜だった。しかし、それを邪魔するような存在があった……プラナである。
彼女はこの店が好きで、さらによくなればと思って文句たれているのだが、それが主観的見地による勝手な理想に基づいたありがた迷惑な行動であり、その上本人は自分の言動に自信満々で丸で疑う事が無いのため、店側からすれば、下手なクレーマーよりよっぽどタチが悪い存在のであった。
しかも、国内で有数の権力者の娘なので文句を言うことも出来ないあたりが困りものである。まさにモンスターゲストと言ったところだった。
「まったく、なってませんわ!」
白いワンピースのドレスに白い花のワンポイントが冴えるその上品な服装を台無しにするかのように、プラナはドシンと荒っぽく席に座り、メニコの上赤ワインをぐいっと一気に飲み干すと、若いウエイターに直ぐに継ぎ足たせた。グラスが並々と紅で満たされると。プラナはさっさとウエイターを追い払う。追い払われた店員は、こういう人とは絶対に結婚したくないなと思ったが、表向き平静を貫いた。
「ふんっ! どうしてみんな、これ程までに私をイラつかせるのでしょうね?」
誰も目の前にいないのにプラナはグダグタ喋り続ける。いつもの事だった。数少ない友人のストレは貧乏なので、こんな店に来るのは家族同伴かこの身1人の時しかなかった。このレストランに誰も伴わずに来るのはプラナ意外まず見ることはない。なので、当然周りからは浮いた存在になる訳だが、そこを気せず堂々と、寧ろふてぶてしいくらいの態度で平然と居座るのが彼女なのであった。
そんなこんなで不機嫌な態度で料理を待っていると、意外にもコツコツと彼女に近づく者が現れる。プラナに近づいてくるのは、余程の変人か或いは知り合いだけである。
プラナは、その相手を見ても険しい表情を崩すことはなく、むしろさらに悪化させた。