異世界の戦士Ⅱ
「出撃するぞ!! アロワにアルフォンゾ!」
アデラは飛行体を操縦する二人に声をかけた。
「はい! アデラさん」
「お前達は初めての実戦だな、びびってんじゃねーぞ!!」
「はい!! 魔導士の称号は伊達じゃないところをお見せしますよ!」
「よし、その意気だ! すぐにカーゴルームに集合だ、急げよ!」
アデラは先にカーゴルームへと向かった。
「了解です!」
「くーーっ!! いよいよ実戦か、腕が鳴るな!」
「気負い過ぎてヘマするなよ、アロワ」
「大丈夫だって! こんな所で終わるアロワ様じゃねーよ!」
「よし、俺達もカーゴルームに急ぐぞ! 操縦はオートに切り替えて、この場に固定だ」
「急ぐぞアルフォンゾ! ぐずぐすしているとアルバナード隊長にどやされる」
カーゴルームには二体の魔導機動歩兵が、その大きな体をひざまずいた形で出撃を待つ。
この人型の機動歩兵は人工知能を有し、単独で状況を判断し作戦を実行する自律戦闘型の機動兵器なのである。
長距離砲撃用の魔導ガンを装備するジェンカという名の魔導機動歩兵と近接戦闘型のシルフィーの二体である。
そして、奮い立つ心を抑え出撃を待つラナークとアデラ、イーダの三人。彼らに新人隊員のアロワとアルフォンゾを加えた五人と二体が今回の作戦のメンバーである。
「すみません、遅くなりました!!」
走ってカーゴルームに飛び込んで来るアロワとアルフォンゾの二人。
「よし、出撃するぞ! ハッチを開けろ!!」
ゆっくりと機体のハッチが開くと、高層ビルの連なる東京駅周辺の景色が目に飛び込んでくる。
「各個に敵を撃破だ! ただし、あまり離れるな。敵の素性は定かではない、何が起きるか分からないからな……だが、この感じ久しぶりだ……これだけの数を相手に本気で暴れるというのは滅多に無いからな……」
ラナークはニヤリと笑った。
「お前達、俺に続け!!」
「はい、アルバナード隊長!」
「エイティブ・グロー」
ラナークは呪文を呟いた。
彼の体を取り巻く二重の光の螺旋。この呪文は重力制御の飛翔呪文であり、空中を思いのままに移動することができた。
ラナークは弾かれたようにハッチから機体の外に飛び出す。
「さぁ、私達も行きますよ! シルフィー、サポートを宜しくね」
「了解した、マスター……」
魔導機動歩兵の原動力は『マナ』と呼ばれる魔力の源となるものである。これ無くしては彼らは機動することが出来ない。よって、
マナを提供できる特定の人物と主従関係を結び行動することになる。
そして、イーダの両手に抱えられている直径一メートル程の円盤。これは軽量の金属製の魔法具であり、飛行を補助する為のものであった。
「おらっ!! お前達の分だ! これが無いと飛べないんだろ!?」
アデラはアロワとアルフォンゾの二人に円盤状の魔法具を放った。
「チェッ、アデラさんだって使うくせに……」
「あ!? 何か言ったか?」
「いえ……別に……」
「お前達、気を抜いてヤラレルナヨ!」
アデラは不適な笑みを浮かべた。
「縁起でもないこと言わないでくださいよ!!」
「ハッハッハ! よし、出撃だ! 付いてこい、ジェンカ!」
魔法具は彼女のマナにより発動する。金属製の円盤が彼女の背後に固定され、彼女自身の体を空中に浮かび上がらせた。
魔導機動歩兵ジェンカは立ち上がり、アデラに続いてハッチの外に飛び出す。
風を切って飛ぶラナークの目前に、空を飛ぶ黒い物体の群れが迫る。彼は鞘から剣を引き抜いた。
「戦闘モードに移行しろ!」
『イエス、マイマスター!!』
彼の頭の中に声が響く。彼の持つ剣は聖剣ラグナリオンと呼ばれる物で、文明が最高期であった嘗てのイリテリアで造られた物である。
ラナークの体の中にはナノマシンが注入されており、ラグナリオンの戦闘サポートシステムと常にリンクされている。彼の頭の中に響いた声は、その戦闘サポートシステムなのである。
戦闘モードに移行することにより、彼の体は身体能力を極限までに高めることができ、
思考力のアップや超人的な俊敏性・強靭な肉体を手に入れることが出来るのだ。
「フッ、怪物どもめ、好き勝手にさせるものか……清めの青き炎よ我が剣の力となれ。エグザスト・フレア!!」
ラナークは呪文を詠唱すると、眼前の敵の群れに向けて剣を振り下ろした。剣から放たれた炎の斬撃が敵の群れを飲み込み焼き尽くす。
黒き異形の怪物は自分達の群れの中に異物が混じっていることを知ると、それを排除にかかってきた。
空を飛ぶ数千の群れの固まりが、一斉に進路を変えて彼に向かって来たのだ。
その時、その怪物の群れを光の一閃が切り裂いた。光に焼かれた怪物は一瞬で蒸発して姿を消す。予想外の方向からきた攻撃に、怪物の群れは統制を無くして四散した。
ラナークの視界に魔導機動歩兵ジェンカの勇姿が映る。先程の怪物を焼いた光は、彼の魔導ガンによるものであった。
「アルバナード隊長! 余計なお世話だったかい?」
「アデラか……いや、雑魚どもはお前らに任せた。俺は地上のデカブツを片付ける!」
「了解した! けど、やつら数だけで歯応えが全然ねーな……」
「油断するなよ! こいつらの力は、こんな物じゃ無い筈だ。だが、今のうちに出来るだけ数を減らせ! 後は任せたぞ!」
ラナークは急降下をして地上の怪物を目指した。
「あいよ……ていうか、隊長は何か知っているような口振りだったな……まぁ、良いか。今は目の前の敵を片付けるのが先決だ!」




