4/11
氷彫刻と千里眼
『七海、君は妹が欲しいのかい?』
稀子の冷たい視線が痛すぎる。
結局帰ってからも悩み続け、知恵を絞り続けたのだけれど、いかんせんダメなものはダメだった。
「そういう訳じゃないけど・・・・・・」
ふん、と稀子が鼻を鳴らす。
細い腕を組んで、片眼鏡の向こうから絶対零度の視線を投げかける稀子。こういう時、稀子は非常に怒っていらっしゃる。
『で、どうするんだ』
僕は答えられない。約束してしまった以上、無碍にするわけにもいかないけど。
「僕は魔法使いじゃないからなあ」
僕は一介の道化師だ。魔術は専門外。
『また明日、考えてみようか。こちらでも方法を探す』
「協力してくれるの?」
まあ、それを狙ったんだけど。
ガバッと顔を上げると、氷の彫刻みたいに怜悧な美貌と目があった。
『それを狙ったんだろうが』
稀子にはお見通しだった。