道化師少年の回想
『片眼鏡少女と道化師少年』の外伝(?)です。
回想部分を無きものとすれば、『片眼鏡少女と~』を知らない方でも大丈夫だと思います。
読んでくださった方は、是非! どんな些細なことでも! 感想を!
『誰も逮捕者を出さない』『誰も死なない』『というか超能力スレスレの能力を持ってる登場人物がいる』というミステリらしからぬミステリを片眼鏡少女が解決して、一週間と少し。
正直、あの事故の真相を稀子に解かせたのは少々酷だったと思う。僕もその特性上、人の目をものすごく気にしてしまう。そうしないと、際限なく周囲に気味悪がられるから。
でも、稀子は僕なんかの比じゃない。普段、『話すと気味悪がられるから』という理由で口すら開かない奴なのだ。
『おい七海。食べるときは口を開いているよ。話さないだけだ』
黙っててよ! あげ足取るな!
・・・・・・まあとにかく、それくらい気にしているっていうのが伝わっていればいい。
そんな女の子が、不特定多数の人間を相手に超能力スレスレの推理を披露したんだ。披露したのは稀子の判断だけど、僕も同類だから、稀子のことがちょっとだけ分かる。
怖かっただろうな、って。
人の目ほど怖いものはない。その目に、自ら曝されに行くんだ。怖くないはずがない。ましてや稀子は、中学そこそこに見えるごく普通の小さな女の子だ。
『小さくなんかないぞ』
十分小さいだろ。僕の肩下くらいまでしかないくせに。
『早く本題に入れ! この観覧車!』
稀子の見事な黒髪が舞い、真っ白な手に握られた銀色の何かが宙を切り裂く。
それは僕の手の五センチメートルほど横にヒットし、キーンと冷たい音を立てて床に落下した。
溜息が出るほど整った顔をほの赤く染め、ものすごいミスマッチ感を発する片眼鏡の奥の瞳にうっすらと涙の膜が張る。ひんやりした無表情だけど、その背中に青い炎が見えた。