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急にうずくまった柾につられて実咲人も体勢を崩しかけたがどうにか転倒することは免れた。見事に獲物を仕留めた直巳は即座に実咲人の傍らへ急行する。
柾はそれ以上の逃走をあきらめたらしい。後頭部をさすりながら不貞腐れた猿みたいに尻を落とした。
「柾くん、そこに正座」
だが実咲人に言われてすぐに座り直す。まるで叱られたペットだ。
哲平は息をついた。良かった。この世に正義はあった。
不幸な誤解こそあったものの、今となっては裁かれるべき罪人が誰なのかは明らかだ。あとは当事者同士で心置きなく決着をつけてもらおう。
「テッペイ、きみも。柾くんの隣に」
俺もかよ。
固い床板の感触より、時折向けられる他の生徒からの視線が痛かった。正座する学ラン男二人の前に、セーラー服の少女が二人仁王立ちしているという絵面は、男子高においてはかなりシュールなものだろう(セーラー服の片割れは自称男だが)。関わり合いになるのを恐れてか誰も近くまでは寄って来ない。
「それじゃあ約束通り、二人には一緒に責任取ってもらうからね」
実咲人はきっぱりと通告した。