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 駄目だ、逃げられる。

 哲平はがっくりと項垂れた。

 直巳がこのまま済ますことはないだろう。必要なら白瀬家の力に訴えてでも柾に制裁を加えようとするはずだ。

 しかしそれは全部後の事、今この場で直巳の怒りを引き受けるのは哲平しかいない。切腹を控えた武士の気分で、哲平は介錯人たる直巳を盗み見た。

 ぎょっとする。

 直巳は紫の布に包まれた棒を構えていた。いやむしろ振りかぶっていた。

 その先にいるのは哲平でない。それはいい。しかし。

 まさか投げ付けるつもりか!?

 それはさすがにまずい。

 布の中身が何か定かでないが、たぶん小太刀の類だろう。鍔に当る部分が無いようだから鉢割りとかか。

 いずれにしろ鉄の塊には違いない。いくら抜身ではないといっても(ないよな?)直撃したらただでは済まない。手の内にある場合とは違って、ひとたび放してしまえばもはや寸止めも加減もきかない。

 そのまさかだった。

 直巳は流麗なフォームで棒を投擲、紫色の包みは流星みたいに柾の後頭部へ飛んでいく。

 少しでも狙いが逸れたら実咲人に当りかねないというのに、さすがの思い切りの良さだ。人として褒めていいのかは相当に微妙だが。

 棒の先端が柾を捉えた。哲平は唾を呑み拳を握った。金属と骨とがぶつかる、鈍く重い致死の音がここまで聞こえ。

 ぽくっ。

 あれ。意外と軽い響き?

 力が抜ける。なんか大したことなさそうだ。

 それでも痛かったことは痛かったらしい。「ぐがっ」と珍妙な呻き声を上げ、柾は頭を押えてしゃがみ込んだ。

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