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ライブハウス 後半

黒色の細身のコットン地のパンプスを貸してもらい




3人で地下鉄に乗った。





加代子も楽しみで待ちきれないという顔をして




そのバンドがどんなにカッコイイかを延々とじゃべり続ける。




「カセットレコーダー欲しいわぁ~」と時折ため息も漏らした。





ライブハウスに着くと




そこには若者が何人もいた。





タバコを吸う人、数人で固まって話をしている人



歩道に座り込んでいる人




いろんな人がいた。





受付で加代子が名前を言うと




刺青の入った若い男がチケットを3枚手渡す。




「加代子ちゃん……」




「いいねん。大丈夫やねん。今回はうちの奢りや」加代子が手をぶんぶんと振りながら笑顔で答えた。




「ホンマにありがとうとゴメン」美香は小さな声で謝った。





加代子が厚い扉を開けると



鳴り響く大きな音に




美香は驚いた。




暗い小さなホールに小さなステージ




爆音の向こうで髪の長いバンドマンが激しいパフォーマンスを繰り広げる。




その小さなステージは




とても眩し(まぶし)かった……。




「たぶん次のバンドやねん!」



加代子が二人に向かって声を張り上げた。




彼らの音楽に体中で答える観客、




小さくリズムを取る人、ただ黙って見ている人々。




色んなお客がいた。




こんな世界があったなんて…・・・




美香はそんな風に思った。




そのバンドのパフォーマンスが終わると



ライブハウス内は幾分か静かになり



次のバンドのファンと思われる女の子達が最前列を陣取る。




加代子を友達を見つけて大声で駆け寄った。




その彼女に場所を譲ってもらい加代子は最前列に。




美香と恵は加代子の後ろの列に回った。





流れる洋楽の音がだんだんと大きくなり




5人のメンバーが位置に付く。




パッとライトが小さなステージに集中したと同時に




凄まじい音楽が始まった。




美香が今まで聞いたことのない激しいロックだった。




髪を金色に染めたボーカルの男が何かを叫びながら勢いよく頭を振り乱す。





とても早いドラムのビートに乗ってギターもベースもこの激しいロックを作り上げる。





「衝撃的……」




そんな言葉で表せばよいのか……




目の前に広がる異世界に美香の大きな瞳は瞬きすることさえも忘れてしまったようだった。




4曲でライブは終了。




その後には耳がキーンとした。




興奮した加代子は全ての曲でジャンプしたり髪を振り乱していた。




恵と美香は音楽に乗るどころではなかった…。




「なあすごいやろ~」



加代子が二人に話しかける。




「ほんま、すごいわ…」



二人は口を揃えて言った。




「外に出るとじゃべれるかも知れへんねんで!」



そう言う加代子の後をくっついてあの厚い扉の外に出る。





外では楽器や機材を運び出すバンドマンの姿があった。




彼らと少しでも話がしたい女の子や男の子が彼らの周りをさりげなく囲んでいた。




加代子はここで知り合った友達何人かに恵と美香を紹介する。




「かわいいな~」加代子と同世代の女の子が口々に二人に声をかえる。




美香は何だかとても嬉しかった。





やがて加代子とその友達のグループにあのバンドマン達と少し話せるチャンスがやって来た。




「お疲れ様です~」



加代子やその友達が一斉にバンドマンへ声をかける。




「おーありがとう」



あのマイクに向かってがなって歌っていた金髪の男と




ギターかベースの男が答える。




加代子の友達2人が




次のライブのチケットを彼らから直接買っていた。




金髪の男が財布からチケットを出し終わった瞬間




なぜか一瞬、美香と目が合う。




美香はドキッとしたと言うよりもびっくりした。




慌てて目をそらした……。




道路の向こう側には他のバンドのメンバーが同じよう



二人三人と別れてファンと話をしている。





続いて加代子が「私もチケット欲しいな~」と口を開いた。




「加代子ちゃんありがとう!」とギターの男が財布からチケットを出す。




どうやら自分が応援しているバンドマンから直接チケットが買えるらしい。




「この子らはまだ分からんねん…うちの妹の恵と友達の美香ちゃんやねん」




「今日はありがとう。どうやった?楽しかったやろか??」



ギターの男が話しかけてきた。



「楽しかったと思う。。。」恵が答えた。



「うん。楽しかった」美香も恵に続いた。




それから金髪の男とまた目が合う。



今度はその金髪が話しかけてきた。



「高校生??」



「…中学生……」恵が答える。



「ホンマに?びっくりするわ…」そう言うと金髪の男が笑顔を見せた。




スプレーで立てられた長い髪の隙間から覗かせる笑顔は



なんだか優しい人の笑顔に見えた。




このバンドは俗に言う



ビジュアル系バンドの走りだった。




当時はそんな言葉がなく




ヘヴィメタルに分類されるかパンク




髪を染めている事から




一部で「色もの」とも呼ばれたりしていた。




後に美香は新しい表現をする若いバンドマン達の幕開をこの目で見ることになる。






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