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京都大学

二学期が始まりまだ暑さが残るものの夜は少しずつ涼しくなり




過ごしやすかった。




秋の長雨か天気が崩れがちの日々が始まり、美香は最後の文化祭に向けての作品づくりに取り掛かっていた。




そんな中、京都大学を受けようかと思いがぼんやりと沸いてきて




やがてその思いがまとまりつつあった。




東京の大学に行きたいとも思ったが、優のことを考えると自分だけ東京で暮らすことはありえない。




それならばここからも通える伝統ある京都大学に入りたい。




そこでフランス文学を学べたら…。




なんとなく優に思っているいる事を告げてみた。




「優くん、うち京都大学を受けてみたいと思ってる…」




「すごいやん!美香ちゃんならいけると思うで!!」




優は自分のことのように少々興奮気味だった。




「俺もそろそろどこの大学に行きたいか決めたいなあ…」





優は達也の車から見た東京の景色やそこで思ったことを鮮明に覚えていた。




東京大学…ここに入ることが出来たら確実に自分の未来が開ける。




自分の未来を変えられるのは自分しかいない。




信じる者もおのれのみである。




優の決意は美香のものよりも遥かに固く現実的なものだった。





10月には進路について個人面談があり、美香は担任と進路指導の山本に現状を伝えた。




国立大学は推薦制度がないことや、新しくセンター試験が取り入れられることなど進路指導の山本からの話が続き、滑り止め受験の件、でも最後は自分を信じて精一杯頑張ることと励ましを受けた。





もう後には戻れない…。




夕暮れ寸前の穏やかな西日を背に美香は校門を出て家路に着いた。





その夜から赤本(教学社発行の大学入試過去問題の呼び名)の問題集も真剣に解くようになり美香はまた一歩前を見るようになった。





京大の願書、滑り止めの私立大学のパンフレットや願書を取り寄せて その詳しい要項にも目を通す。





願書の下書きを担任に見せ、チェックしてもらう作業などを進めていく中で美香の迷いは消えかけていた。






だいぶ寒くなってきた頃についに父親の会社に電話を入れた。





「お父さん…うち進学することに決めてん…」





「どこ受けるの?」





「京大と府立、私立一つ…。でも公立しか行く気はないねん…」





「そうか…。お父さんなあ、係長になってん。だから学費のことは心配せんでな。優はどないやねん?」





「優くんは元気よ。うちなんかよりも成績もいい」





「そうか。美香の受験が終わったら一緒に麻衣子の墓参り行こうか?」





「そうやね……。また連絡する」





「おう。しっかり頑張ってな。何かあったらお父さんにいつでも電話してきなさい」





修の胸はじーんと熱かった。




逃げてしまった、見放したと言っても過言でない子供達が今、自分を超えようとしていること。





同時に申し訳なさと自分への情けなさが募るばかりだった。





美香の方は上辺うわべだけの会話、現状報告のみで済んでホッとしていた。




達也からの学費のことは言う必要もないし、母親が亡くなってからお父さんも父親業を終わらせている…そんな風に思えて甘えることも家族らしい会話を交わすのも気が引ける。




ましてや彼にはもう新しい家族がいて、その事実が意味するものとは…?元親子、他人……。




考えたくもなかった。




結局、達也からの現金は額が大きいため一度に貯金することも出来ずに 美香と優名義の新しい口座をそれぞれ作り そこにちびちびと入金していった。




バブル期の銀行の運営は今よりもかなり甘く未成年でも簡単に口座が作れ、また支店が異なれば同一人物が複数の口座を同銀行内に設けることも可能であった。更に10年ものの定期預金の金利は8%~12%と今とは比べ物にならない程の爆発的高金利だった。新規口座開設や定期預金利用者に配られる粗品も粗品の域を超える物でブランド瀬戸物、テレホンカード、商品券、グラスセットなど様々である。










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