愛の空間
達也は美香としばらくの間、ドライブをした。
東京での話やレコーディング、ツアーの予定に雑誌の取材、関東でしか放送されない深夜番組に少しだけ出演したこと。
美香は黙って達也の話を聞いていた。以前は当たり前のように隣で聞けていた達也の声に懐かしい思い出を沢山乗せながら。こんな風に助手席できらめく街を走った夜のことや、雨の日の土曜日に校門まで迎えに来てくれたこと。達也の車にポテトを落としてしまって見つからなかったこと。公園のわきに止めた車内で始めてキスをした夜…。
その夜、達也は高級感漂うきれいなホテルへと入る。
美香はあらためて達也を目の前にすると極度に緊張した。
ぎこちなくシャワーを浴びて、バスローブに身を包むのも恥ずかしかった。
達也がシャワー室にいる間、室内のクーラーが効き過ぎて身体の芯まで冷える。
この人にもう何度も抱かれた事があるなんて信じられなかった。緊張しすぎてベッドの上で体育座りをしたきり腕がほどけない。
達也はそんな美香を見つけて自然に笑みがこぼれた。
なんて可愛いんだろう…。これからもベッドで足を組んでタバコをふかす様なふてぶてしい女だけにはならんどいて欲しい。
美香にそっと近づき腕を回した。
「なんで体育座りなん?(笑)」
「分からん…けど寒くて」
「今からむちゃくちゃ汗かくで。まずは全裸でラジオ体操やな!準備体操やねん。」
「なんで?達也さんホンマにおかしいわ…」
「緊張してんやろ?全裸でラジオ体操すれば羞恥心が吹き飛ぶねん(笑)」
そう言って達也は後ろから美香の腕を上げてラジオ体操のあるパートを始めかけた。
「いやや(笑)ホンマにせんでよ。いややって(笑)」
美香が笑った隙に彼女の体をベッドに優しく押し倒して自分の体も重ねる。
その後、もう二人に言葉はいらなかった。
若い二人が肌を重ね合わせるこの部屋は 真っ赤なバラの花びらが嵐の様に舞う 正に愛の空間。
美香は抱かれている最中にもはっきりとまだ自分が愛されている事を感じられた。
あなただから私はいつも私を捧げられる。あなただから……。
好き。ホンマに好き。好きで好きでホンマにどうしようもない。
冷たかった身体は熱を帯びて触れられる快感を再び思い出した夜だった。




