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緑の季節

陽気のいい新緑の季節も達也がいないだけで寂しく思える。




夕食の後、百合子がくれた高い緑茶の葉で丁寧にお茶をいれて優と二人で味わい





眠る前にはそっと部屋の窓を開けて向こう側を行き来する車のライトを目で追いながら達也がドライブにつれて行ってくれた時のことなんかを振り返ったりした。




美香は達也からもらったフェンディの茶色いバレッタを毎日学校に付けていった。




これがあれば挫けそうになってもきっと大丈夫。お守りなのだ。





梅雨に入り 恵と加代子、他の友達が違うインディーズバンドを見に行くようになり




美香の事も誘うのだが、美香は他のバンドを見に行く気にはなれなかった。




ただローディーっだった内山のバンドだけは付き合いで一度だけ見に行った。




ふと数ヶ月前までこのライブハウスに立って歌っていた達也を重ね合わせて見てしまう。





それから初めてライブハウスに行った日の衝撃が今でも鮮明に脳裏をよぎる。





ここで初めてTAKEを見てあの人に会って、好きと言われて今ではどうしようもないくらい自分の方が彼のことを好きなのだ。





初めて男の人と付き合い、キスをした。セックスもした。セックスをしても彼の優しさは変わらず私に降り注がれて…私は幸せだった。





あの人は強くて人の何倍も元気を持っている。いつも楽しいことを見つけるのが上手くて笑うのも笑わせるのも本当に得意なのね。





私を元気づけて抱きしめてくれた時の幸福感をタッパーかなんかの中に保存できたらいいのに。





何度抱きしめてもらってもやっぱりそれは体をすり抜けていってしまうのかしら?だからまた恋しくて寂しくなるの?







ライブ後は一人で帰るのがなんとなく不安で恵について打ち上げまで出てしまった。




思いっきりはしゃぐメンバーが面白くて笑顔で見つめていた時、




ビール臭いドラムの人が美香の隣に腰を下ろし声をかける。




「達也おらんで寂しいやろ。後で一緒にどっか行かへん?ドライブ連れて行こうか?」




美香の顔は曇りすぐに恵を探したけれど向こうの席に移動してしまっていた。





達也さんの事を知っているのに声をかけてくるなんて信じられない…。




やっぱり打ち上げまで来たのが間違いだったわ。一刻も早く家に帰りたい。




美香はトイレにこもり、自分の一連の行動をとても後悔した。




こんな時に達也さんが居てくれさえしたら…。私はやっぱり達也さんなしでは本当にだめだ…。




内山が恵の家の前まで送ってくれた頃、空はもう薄い青色をしていた。




梅雨の季節らしい肌寒い湿った風が木々を揺らす。




曇った空に緑がより一層映えて 濃く豊かに見える。




達也さんに会いたい。達也さんに会いたい…。




誰もいない日曜日の明け方にワンピースの裾を揺らし美香はとぼとぼと家路に着いた。






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