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旅立ち

ついに達也が上京する日が迫ってきた。




その日は何のへんてつもない平日で




達也は美香にとってその方が良いと思っていた。




美香が涙を見せずに笑顔で見送ってくれる可能性は限りなく低く




泣き顔を見るのは達也にとっても少し辛かった。





上京前夜、達也は美香に電話を入れる。





「ほな、明日行ってくるわ。また着いたら電話する。何にも心配せーへんでな」





「うん、分かった……」





最後の電話はお互いに口数が少なくなんだかそっけなかった。





美香はその夜、勉強机に向かって座り達也との色んな思い出を深夜まで振り返っていた。





達也と出会ってから本当に沢山の出来事があり





自分の知らない色々な世界を教えてくれたのも達也、彼氏のようで兄のようで時に父親のような存在。





その夜、初めて達也と離れる悲しみよりも達也に対する感謝の気持ちの方が勝った(まさった)。




翌朝は実に良く晴れていて柔らかい日差しが泣きはらした目には眩しすぎた。





いつもの時間に起きて新聞を取る。お弁当と朝食の支度を始める。




今朝は優の朝練がない日なのでバスで登校する美香の方が少しだけ先に家を出発する。




家のドアを開けた瞬間……




そこに紙袋がかかっていた。





中を見ると京都のとある寺の学業お守りと札、合格祈願の絵馬が入っていた。




いつの間に……?




名前はないけれど瞬時にそれが達也が置いていったものだと確信する。





あまり時間がないのでその紙袋を玄関の隅に置き、バス停まで歩き出した。





学校では一日中、達也の事を考えてしまう。




窓の外を見ては達也との思い出が浮かび、お弁当の時間にクラスメイトが流した音楽を聞いては達也のことを重ね合わせてしまう。




その日はとてもじゃないけど部活動に出る気分になれなくて美香は早々と帰宅をする。




玄関の隅に置いた紙袋を大事に抱え、居間のテーブルでそっと中身を出した。




お守りに札と絵馬、フェンディのバレッタ(髪飾り)…。




達也さんありがとう……。涙腺が緩んで涙がこぼれ落ち制服に染み込む。





私、やっぱりもっと勉強を頑張らなくては。進学したい…。





美香は部屋に優しく忍び寄る西日を見つめながらそう思い直した。





達也と次に会えるまで私なりに頑張れることを頑張ろう。





しかし、そう誓ったもののどこにいても何をしていても毎日が切なかった。





切ない…。切ない…。




日記にもそんな風に書いてしまうくらいに。




まるで一日中、西日を浴びながら夕暮れの中に佇んで(たたずんで)いる様に…。








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