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変化

大阪での3人だけの生活に




変化が起き始めた…。






クリスマスの日……





父親が丸二日間




家に帰って来なかった。





12月24日クリスマスイブの日




家にいた子供達に一本の電話が掛かってきた。





「お父さんなあ、今夜帰られへんわ。仕事が忙しくてな。ごめんな、許してな」




電話を取った優は暗い返事をして受話器を置いた。





「とうちゃん帰られへんのやって…」




「そっか…」美香は小さな声で答えた。




今年はケーキ屋でケーキの予約をしていないので




ケーキがない…。




プレゼントもない。




京都にいた頃は、高島屋に連れて行ってもらいプレゼントを買ってもらえた。




なんとも寂しいクリスマスだろう…。




優はサッカーボールを持ち出しアパートの裏で小雪が舞う中



一人リフティングの練習を始めた。




美香は夕食の食器を洗い始める。




食器にやかんのお湯をかけ




温まったらスポンジで洗い




ゆすぎは冷たい水だ。




これは母親がやっていた方法と全く同じだ。




それからこたつで冬休みの宿題を始めた。



寒さでかじかむ指先が




心の芯まで冷やすような




そんな思いがした。








結局、父親の修は翌々日の夜遅くに帰宅をした。




着替えはどうしていたのだろう…?




会社に泊まりこんだのだろうか…?




ごく普通のサラリーマンがまる二日も家に帰れずにする仕事とは…?




小学生の美香には




そんな疑問を抱く知恵もまだなかった。




寂しい正月をやり過ごし




三学期を迎える。




優はもうすっかり新しい友達に打ち解けて




相変わらずサッカーの練習に精を出す日々だった。




美香の方は……




まだ馴染めずに後ろ向きな心を抱えている。




卒業式の練習が始まった頃、




一人だけ校歌を覚えなくてはいけない。




たった一人校歌の歌詞カードを担任に用意してもらい練習に参加する自分を




なんだかとても惨めに感じていた。




とうとう迎えた卒業式。




修は仕事が忙しく休暇を取れずに




式には来なかった…。




美香は仕方なく一人で出席し




卒業証書を手にとぼとぼと家路についた。




一緒に記念撮影をする友達もいない。




サイン帳を書いて欲しい友達もこれと言ってなく




またサイン帳を買うこともしなかった。




卒業式の翌日、




ポストを開けると一通の手紙が入っていた。




切手はおろか封筒にも入っていない裸の手紙で




「佐藤さんが好きです。




同じ中学校に行きたかったです。




もし、僕のことを好きだと思ったら電話をください。




吉川孝彦」




と書いてある。




吉川君とはクラスメイトで




正直、美香は彼のことがあまり好きではなかった…。




手紙も一度は机の中にしまったものの、




数日後には捨てていた。




父親が忙しく時間が取れないので




美香は中学の制服屋に自分一人で行かなければならなかった。




おばちゃんにウエストを測られ制服のサイズを決められる。




周りにいる子供達はみな




母親と一緒だ。




その場に一人でいることがなんだか




とてつもなく恥ずかしいことのように思え




一秒でも早くその場から立ち去りたかった。






一人で来たのは私だけだったな……。




そんなことを思うと涙で帰り道が見えない。




学校指定のスニーカーと上履き、ナップサック、学生カバンを両手に抱えながら




涙も拭えずに来た道を帰る。





きっと入学式も一人……。




お父さんは来れないだろう…。



悲しい予感が巡った。




それから父親は




度々家に帰らないことがあった。





金曜日に戻れない夜は





日曜日の遅くに帰ってくる。






美香は




なんとなく父親の変化に気づき始めていた。




父親のワイシャツから少しだけいい匂いがする…。




女の人の匂いだ。





もしかして……




お父さんは………




想像もしたくなかった。







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