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アールグレイ

春休み中にとある変化が起きていた。




優あてに特定の女の子から電話がかかってくるようになったのだ。




今までにもバレンタインの日や優の誕生日なんかに




数人の女の子から電話がかかってくることはあったけれど




続けて何度も同じ相手からは初めてのだった。




新学期も始まったある夜、ついに優が口を開いた。





「あんな…明日、家に人が遊びに来るけど…」





「友達?何かお菓子あったかな?」





「友達っていうか……俺、女と付き合った」





「ホンマに?え??どんな子なん?」





「菊地女子の女。年は同じやねん。百合子って名前」





「菊地女子ってお嬢様学校の…優くんすごいわ~」





「なんや生意気そうな女やけどな…」





美香は心の中でくすっと笑った。




弟は生意気そうな女の子が好きだったんだ…。




そんな風に再発見して明日が何だか楽しみだった。




「優くん、うち出かけとくね」




自分が居ては彼女も居心地が悪いと思ったので美香はその間出かけようと考えた。





「美香ちゃんはおった方がええねん。二人だと会話があらへんし…」





「え?彼女さんは二人きりがええと思ってるのと違う?」





「美香ちゃんから色々と話かけてや」





優がそう言うので美香は学校の帰りに出かけないことにした。





夕方6時近くに百合子は制服のままケーキを持って現れた。





美香とは対照的な少しふっくらとした気の強そうな女の子で




整った髪形から、持ち物から、靴の輝き、至るところから裕福さをうかがわせる。




その口調も堂々としていて羨ましさすら感じるほどだった。




私の入れたアールグレイが彼女の口に合いますように…。




美香はそう願う。




話が進むにつれ百合子は本当のお嬢様なのだということが分かった。




夏休みは家族でハワイ旅行に行くだの、





熱海に別荘があるのだの、雲の上のような話が飛び出す。





一番、羨ましかったのは家に電子レンジもオーブンもありケーキやクッキーが焼けること。




美香は一度でいいから手作りのパイを焼いてみたかった。




百合子にはそういう生活が当たり前なのだ。





果たしてこんな子が優とつり合うのだろうかとも思ったけれど




百合子の見せる優への満面の笑みがその心配を打ち消す。




帰りに優は百合子をアパートの向かいのバス停まで送って行った。




「可愛い子だったね、優くんの彼女」




「まあまあちゃうの?」




ずいぶんと時間が経っていたのでその夜は二人で夕食作りをした。





翌日の金曜日、




手芸部での部活動を終えてまだ日が落ちる前に帰宅したした美香は




一本の電話を受け取った。




電話の相手はなんとあの女の人だった…。




「上条恭子です。銀座プルメリアの…覚えてくれてはる?」




「はい、覚えてますー。ご無沙汰しています」




「美香ちゃん元気だった?ごめんなさいね、突然電話してしまって。番号はたっちゃんに聞いたの」




「いえ、とんでもありません」




「再来週の日曜日、あのね…私 京都に一人でお茶を飲みに行きたいなと思ってて




その頃だったら花見も終わり頃で ゆっくりお茶を飲むにはいい時。




でも、一人はなんだか寂しいから美香ちゃんに会えないかしら?と思ってね。」





「お一人で来はるんですか?」





「そうよ。お客さんとでなくて一人よ。一人なら美香ちゃんも会ってくれはる気がしてね…でもたっちゃんに断りを入れてから掛け直した方がいいから?」





「いえ、あの…………」




「やっぱりこんな水商売のおばさんと会うのは気が進まないわよね・・・」




電話越しなのに なんて寂しそうなため息をつくのだろう…美香は気が動転してしまい約束を受けた。





「いえ、私で宜しければご一緒致します。宜しくお願い致します」




「ありがとう。それでは再来週の日曜日、お昼12時に京都駅の前で会えるかしら?たっちゃんには一応、私から連絡入れておきますね。あなたは大事な彼女さんだから」





「いえ……はい、再来週分かりました」




電話を切ると、軽はずみに会う約束をしてしまった後悔ばかりが募り、今すぐに達也に電話で話を聞いてもらいたかったが




今からあの銀座のママが達也に電話をかけるであろう。




電話をできずに新しい心配事が増えてしまったような感覚に襲われた。




夜、布団に入った頃に達也からやっと電話があり





ママはいい人だから京都で楽しんでおいでと




実にあっさりした内容だった。




本当は達也も一緒に行くと言い出さないか少し期待していたのだが




はかない期待は見事に裏切られた。





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