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転校

父、修の転勤に伴い秋に大阪に引っ越すことが決まった。




美香にとってはショックで相変わらず夜な夜な泣きながら眠った。




最後の半年だけ違う学校で過ごすのは12歳の小さな女の子にとっては大きな事件で色んな考えに胸が締め付けられた。




転校したくない…

転校したくない…



皆と離れたくない…

寂しい…



言いようのない不安に押しつぶされていた。




10月…



美香は新しい学校に通い始めた。




控えめにしていても目立つ彼女は可愛い転校生として知れわたり




興味本位でクラスを覗きに来る生徒や 女子の目、男子の目、




逃げたい気持ちで仕方なかった。



彼女の誕生日が来てもそれを知る友達もいないので「おめでとう」言ってもらえる事もなかった。






この経験が美香の性格をより気の弱いものへと変えていき、後々の人生に大きな影響を与えるのであった。




学校には心地の良い居場所はなく、転校をして3ケ月過ぎた頃でもどこかまだ不慣れで緊張と憂鬱な日々が続いた。




唯一、落ち着ける場所は西日の当たる居間。




この黄昏だけが美香を優しく包んで慰めてくれるような気がしていた。




優の方は順応性が高く新しい学校でもサッカークラブに入りすぐにまた新しいサッカー仲間を見つけた。




外が暗くなるまでサッカーの練習をして家に帰ってくるのはいつも日没後。




ライバルになるような仲間が見つかり以前よりもよりいっそうサッカーに打ち込んでいた。




これが優を負けん気の強い子へと変える。




女の子や恋には以前として全く興味がなかった。





美香はその寂しさから転校前の友達によく手紙を書いて送った。




この文通が美香の心のよりどころで




学校帰りに毎日ポストを確かめる習慣がついた。




帰宅後は、ランドセルを下ろすと食器棚の引き出しに入っている封筒からお金を出しスーパーへ向かう。




買い物も食事の支度も美香の仕事だ。




洗濯、そうじ…これも美香の仕事。




どうして私だけ……




時々訳もなく怒りにも似た悲しい気持ちに襲われながらも健気に続けた。



毎日ポストを確かめる美香のもとに




ある日一通の手紙が届いていた。





封筒の裏に差出人の名前はない。




薄い黄緑色の封筒をあけて中身を見ると…




そこには「元気ですか?本当は好きだった。中学になったら会いに行きます」




と少し下手な文字が並んでいた。手紙の中にも名前はない。




それでも美香は誰がこの手紙をくれたか分かったような気がした。



きっと(みのる)くんや…。




実君の気がする…。




実君だといいな…。




美香は実のことが




ほんの少し気になっていた。





皆に優しいくて強い男の子。




彼と再び同じクラスになった4年生の終わりから気になり始め、




とうとう同じグループになった5年生の時には恋にも似た感情を抱いていた。





美香は居間のこたつテーブルの上で茜色の夕日に包まれながら なんとも切なくて寂しい思いに涙を浮かべた。




濃い鉛筆で書かれた文字は歪んで見えなくなる。




次の瞬間には文字の上に涙が落ちた。




今日もやっぱり寂しい。



そんな風に思った。




それでもしばらくすると涙をふいて台所で硬いかぼちゃを切る。




お母さんがよく作っていたかぼちゃの煮つけ。




大好きだった…。





いつもお腹を空かして帰ってくる弟の為に作る。




父親は接待や残業で遅いので朝しか顔を合わせない。夕食は外で済ましていつの間にか家には寝に帰って来るだけという生活が出来上がっていた。







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