根層~樹層
行ってきまーす!!」
あれから毎日勉強に励んだ。不思議な現象が起こったあの場所に翌日行ってみても
その場所だけは青々としていて隠れて何度か試してはみたが何も起こらずに諦めた
時は立ち今日は出発の日。荷馬車の荷台に乗り見送りに来た街の人たちに」手を振る
ここから樹層までは役二日間。途中野営しながら進んでいく。
「なんか、アズの髪色がグレーって変だね」
「また言ってるのか。アズの髪色は目立つんだから仕方ないだろう」
「そうだよねー。でも綺麗なのにもったいないな~」
出かける前日、オメガに言われたのは髪色だった。
オメガが根層に来る前は樹層にいたらしい
アズの髪色は樹層でも珍しいらしく目立ちすぎるとのことで
髪色を変える魔法を教えてもらった。
この色なら悪目立ちもしないらしく、何度もかけなおさなくていいように
定着させる用の不思議な粉ももらった。
学園の試験に受かれば作り方は分かるらしい。
「勉強する?おやつにする?」
「まだ、出発したばかりだぞ」
「お母さんがねー。朝から作ってたから甘い香りのせいで朝ごはん種たのに
なんかお腹ペコペコなの」
ふくれっ面のソリュとその言葉に呆れた顔のルクス
まだ街からそこまで離れていないからかいつも通り笑う二人に
つられる様にアズの顔にも笑顔が浮かぶ
勉強をしようにも道が舗装できないせいで荷馬車はガタガタと揺れる
暗記もののクイズを出し合いながら流れていく景色を眺める
樹層に近づいていくと緑が増えていく。
初めて来る場所。初めて見る景色にアズの気持ちは高鳴る
「今日はこのあたりで停まるか」
ソリュのお兄さんの言葉で荷台から降りると
野営の準備をする
「アズ、テントを張るの手伝ってもらえるか」
ソリュのお兄さんに声をかけられ夕食の準備をソリュに任せて着いていく
「ここに、魔石があるだろう?そこに魔力を注いでくれるか?
俺一人でやると日が暮れちまう」
指さされた黄色い石を手に取ると割らないようにゆっくりと魔力を注ぐ
濁った色をしていた魔石は段々とはちみつ色の光を放っていく
「やっぱ、アズは凄いよなー。地の魔石なら俺も相性がいいんだけど」
羨ましそうにアズの手元を見つめるソリュの兄
一度強い光を放った魔石にはそれ以上魔力は注げず押し返される感覚に
魔石から手を放す。宙に浮かぶ魔石にくっつく布が広がっていき
大きめのテントへ形を変える。
「父さんから借りてきたんだ。魔石は貴重だけど3人が野営中に風邪でも引いたら
大変だからって。皆応援してるんだぜ。もちろん俺もな」
ソリュと似た顔で笑う彼は、照れくさそうにそそくさと他の準備へ向かう
楽しそうに準備をする仲間たちの元には戻らずその場に留まり先ほど魔力を注いだ
魔石に触れる。温もりを感じるような気がするその魔石。
魔力量は種族により異なるらしい。
根層に住むのはかつてこの世を滅ぼしかけるほどの大罪を犯した人という種族の末裔が多く
ほとんど魔力は使えない。そんな人と共に過ごす変わり者はドワーフ。
地や火の魔法と相性が良い。地中で隠れて過ごした名残だと言われ
あまり背は高くないが力持ちの種族だ。
ソリュの家族は人とドワーフの血が混ざっているらしい。
耕したり、火をおこしたり。生活に直結する魔法が得意で作った食器を売って生活している
ルクスの家は母親が樹層出身だが父親と暮らす為に根層に降りてきたらしい。
元は、森人という種族で森の守り人だったらしい
妖精に近い種族で、体力はあまりないが賢く努力で
水や樹の魔法が得意。魔法薬の調合が得意な種族だ
「アズ~早くこっちおいでよ!」
ソリュの声に魔石から視線を外すと、手を振るソリュに振り返す
自分は何者なのか…昔オメガに聞いたときは人の子だと言われたが
なにか腑に落ちていない
暗い顔をしていたら周りに心配される。口角を無理やり上げると
温かい光の元へ小走りで向かった
「ねえ!あれ、なんて生物かな」
鳴れない荷馬車で疲れたのか昨日はテントに入ると直ぐに眠りにおちた
朝早くから移動し始め進む。昼頃には砂漠も見えないくらい遠い所へ来ていた
見たこともないくらいに緑が広がり見たことのない動物や昆虫が視界に入ってくる
絵で見たことはあっても、実際見るのは初めてだ
五感がフルで動く。いつになくキラキラとした顔で嬉しそうにする顔を
幼馴染たちが嬉しそうに眺める
小さなころからどこか大人びすぎていたアズのここまでキラキラした顔はいつ以来だろうか
「お前たち、もう着くぞ」
ソリュの兄の言う通り、大きな門が見えてきて
「俺は、門のところまでしか行けないから
オメガさんの言った宿まで寄り道せずに行くんだぞ」
「もーお兄ちゃん分かってるよ~」
いつも通りに見せかけるソリュの顔にも緊張が走る。
宿はオメガが取ってくれていて明日には試験が始まる
「じゃあ、行ってこい。なんかあったら魔法飛ばしてくれよ」
見慣れた大人とはしばらくお別れだ。
門の中ではどんなことが待っているんだろうか
ソリュの兄にお礼と別れを告げ門番に声をかける
門に立っているのは見たことのない種族で
頭の上に耳が付いていて体も大きい
「なんだ、坊主たち!根層から来たのか」
ガハガハと小気味よく笑うその男にオメガから預かった手紙を渡すと大きな門の横の扉を開けて通してくれる
「そこに座って待ってろ!」
通された部屋には大きなテーブルとソファがあって
言われた通りに腰を下ろす
「ねえ、私たち大丈夫かな」
「オメガさんが書いてくれた手紙だし大丈夫だろう」
大きなソファで小さくなるソリュとルクス
しばらくして戻ってきた男が持つお盆からはいい香りがして
「待たせたな。ほらココアだ」
大きめのマグカップに並々と注がれたココアを一人一つ渡される
「坊主たちには遠かっただろう!今日泊まる予定の宿まで送ってやるから」
大口をあけて笑う男は、まだ警戒の解けないアズたちをニコニコと見ながら
ココアを勧める。一番最初に口をつけたのはアズ。
零れそうなココアを慎重に口に運ぶ。口いっぱいに広がるココアの味と頬が落ちそうなくらいの甘み
アズの大きな目が更に大きくなる。
そんなアズの表情に更に笑みを深める男とアズの行動をマネするようにカップを手に取る二人
「聞いてもいい?」
カップを置くと、アズが男に声をかける
「おう!なんだ」
「獣人だよね?」
好奇心が勝るものの、種族を聞くことが失礼に当たるのか分からず
いつもと違って聞き方が弱弱しい
「あーそうか。根層には居ないもんな。
ライオンの獣人のガルディアだ。好きに呼んでくれ」
「俺、アズ。こっちの赤い髪がソリュで黒髪がルクス」
アズが視線を向けると抱えるようにココアを飲んでいた二人が慌ててお辞儀をする
「獣人って、皆ガルディアみたいにでかいのか?」
「いや、俺はライオンだからでかいが小さいのもいるぞ」
「ふーん。本に書いてあった通りなんだ」
「じゃあ!皆耳とか尻尾とかも違うの?」
温かく甘いものを飲んで緊張がほぐれたのか、ソリュが身を乗り出すように聞く
「そりゃな。全然違うぞ!樹層は色々な種族が住んでるからな。」
そこからは、ソリュの質問攻めが始まりアズは話を聞きながら考え込むように黙り込む
「おーと。嬢ちゃんの質問にもっと答えてやりたいが
そろそろ宿に向かうとするか」
ガルディアが立ち上がり続くように三人も立ち上がる
「行くぞ。物珍しいものだらけだろうけど今日は我慢してくれよな」
ガルディアの言う通り、門から出た先は気になるもので溢れていた。
綺麗に立ち並ぶ建物
美しい草花と木々で溢れた街を色々な見た目の者たちが楽しそうに歩いている
空を見上げれば、翼の生えた者が飛んでいたり
根層とは違い、色にあふれた世界が広がる




