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根層4

翌日。アズはオメガとともに朝から薬草摘みにでていた。


「休みでいいと言ったのに。」

「昨日、目標金額は達成したんだ。

今日は師匠と動くよ。お金もうけとってくれないし」

「初めてじぶん達で稼いだお金だろう?何か大切な時につかいなさい」

「分かったよ。砂糖のお礼はまたいつかな」


アズの言葉にオメガはクスリと笑う。あんなに小さかった赤子が

自分で稼いで根層から出ていこうとしている。


一生懸命薬草を採るアズを見てオメガは目を細める。

樹層にいくことでこの子の運命は大きく動き出すだろう。

本当は、根層で一生を終えさせた方がよかったのかもしれない。

でも、何を強要したわけでもなく書物に興味を持ち吸収していくアズを

オメガに止められるはずがない。

オメガも、探求心を止められないのだ。それに、枯れた大地のごとく

知識を吸収していくアズがオメガにはまぶしかった

まるで、昔の彼のようで。


「師匠?大丈夫か?」


しばらく立ち止まってアズを眺めていたオメガを心配そうに見つめる瞳。

まだ汚れを知らないキラキラとかがやく瞳にオメガはもう一度笑うと


「今日はそろそろ戻ろうか」


ローブを翻し。家に戻っていくオメガをアズが小走りで追いかけていく


家の前にはソリュがすでに待っていて一緒に家に入ると昨日と同じクッキーを作っていく

手が空けば、オメガの薬草の仕分けの手伝い江尾し午前中が過ぎていく

オメガにも何枚かクッキーを渡し、昼食はソリュの家に誘われたので籠いっぱいのクッキーを持って

三人で街へと向かう


「いらっしゃい。まあ。クッキーがこんなに。二人とも頑張ったのね」


ニコニコで出迎えてくれるソリュのお母さん。家の中には兄弟やら従妹やらが勢ぞろいで

御飯が出来るまでのあいだは、帳簿の計算を手伝ったり子供たちの相手をしたり

キッチンからいい香りがしてきて、食卓に大皿が並んでいく。


2人暮らしのアズはこのずらりとならんだ料理をみるのが好きだ

食べ始める前から満足してお腹がいっぱいになる気がする。

大皿の上のものは食卓にならぶと一瞬でなくなる。


魔法でもつかったのかと思うほどのスピードで無くなった料理の皿を

ソリュのお兄さんたちが片付けていく。


「じゃあ、行こうか。」


緊張した面持ちでルクスの家の方を見るソリュ

買ってきたフルーツを籠に詰めてソリュと並んで歩く


扉を何度かノックすると、一昨日あった時よりもやつれたルクスの母親が出てきて


「あら。来てくれたの?ルクスは自分のへやにいるわよ」


力なくそういうと部屋の前まで着いてきてくれる

「ルクス。二人がお父さんにお土産を持ってきてくれたわよ」


扉の向こうにいるはずのルクスに話しかけるも返事はない

首を横に振る母親に代わりソリュがそっと扉を開く

ベットの隅で膝を抱え壁をうつろな目で見つめるルクス。

まだ自分を責めているんだろうか。それとも絶望しているのであろうか。

どちらともとれる表情のルクスにソリュが駆け寄り声をかけるとやっとこちらの存在に気付いたのか

視線が絡む。


「ルクス!一緒に試験受けられるよ」


とにかく元気付けたいのだろう。少し頑張った笑顔でソリュがいう


「何言ってるんだ?僕の試験のお金は父さんの薬代にするんだ。

父さんを見殺しにしてまで受けたい試験なんてない」


先ほどまで力のなかった瞳に怒りの感情が現れる


「違うよ。お父さんもたすかってルクスも試験を受けるんだよ」

「そんな都合のいいはなしがあるわけないだろう。

僕をからかいに来たなら帰ってくれ。」


扉の近くから二人のやり取りを黙って見守る母親とアズ。


「からかいになんて来ないよ。

アズとお金を稼いだの。街の皆がルクスも試験を受けられるようにって

お金を出してくれて…用意できたんだよ」


その言葉に、ルクスと母親が口を大きく開ける

ルクスに至っては目も大きく丸くなっている


「ほら」


アズがベットの近くまで行き皮袋に入ったお金を渡す

最初は受け取るか悩んでいたルクスがソリュからの期待たっぷりの視線に根負けし

なんとも言えない表情で皮袋をうけとる


「数えてみろ」


静寂の中覚悟を決めたようにベットのうえに出した硬貨

母親が後ろで息をのむのが分かる


一枚一枚丁寧に数えるルクス。


「…本当に。ある…」


信じられないのか何度も数えなおすルクスと

後ろで崩れ落ちるように座り込み静かに涙を流す母親


「でも。行けない…これは、街の皆のお金だろう?」

「なんでよ!三人でいこうって言ってたじゃん!約束したじゃん!

お金もあるよ!行けるんだよ!」

「町のみんなだって裕福なわけじゃないんだ。

僕だけこんなに良くしてもらうなんて…それに、父さんだって

まだ、良くなったわけじゃないし。父さんと母さんを残してなんて…」


いつまでもウジウジと御託をならべるルクス


「大工のおっちゃんが夢なんだって言ってた

俺らが三人で試験を受けて受かって。

多分もっとこの街が住みやすくて豊かになることが

他の人も頑張れって。応援で自分たちだって苦しいのにお金出してくれたんだ」


アズが、ベットでうずくまるルクスに淡々と告げる


「親父さんのことが心配なのは分かるけど

皆の気持ちを受け取らないのは違う」


アズの言葉にルクスの瞳が揺れる。

何か言おうと口をパクパクとさせるが言葉が出てこない

長く感じるみじかい時間。アズはもう何も言わずにルクスからの言葉を待つ


「行ってこい。試験にうかって、もらった恩を倍で返すんだ」


いつから聞いていたのか。扉に寄りかかるようにして

まだ顔色の悪いルクスの父親が沈黙を破る


「父さん!…まだ寝てないと!」

「お前がどんよりした空気を出してたら余計具合が悪くなる

やっと育ったお前を甘やかした自覚はあるが腰抜けに育てた覚えはない

俺や母さんを言い訳に逃げるな。絶対合格して根層を変えろ」



いきなり喋ったからかゴホゴホと苦しそうに咳をする父親を母親が支えるように立つ


「合格、できるかな」

「するんだ」


ルクスがアズに問いかけても優しい言葉は返ってこない


「だよな」

諦めたように笑うルクスが一度目を瞑り深呼吸をする


「やる。三人で試験を受けて三人で根層を住みやすくしよう」


目を開けたルクスは覚悟が決まったらしい。以前よりも目に力が宿った気がする


「じゃあ明日からまた勉強ね!」


ソリュの嬉しそうな声に頷きあい、その日は解散する

根層を良くする。ルクスのこ言葉が頭に残るアズは岐路の間中考える。

砂漠化を止められれば…物知りなオメガでもできないのにどうやって?

ふと、数か月前に枯れた木の実の苗が視界に入る


何気なく近づき苗へと水魔法を使う。

どうしたのかは分からないが、いつもとは違う水の色。

輝く黄緑の液体が苗だけでなく辺り一面に降り注ぐ。


降り注いだ場所の土の色が乾いた黄土色から濃い茶色に代わり

ポコポコと何かの芽がでる。枯れたはずの木の実の苗も息をふき返したかのように

濃い緑色の葉が風に揺れる


試しにもう一度乾いた土に水魔法を使ってみるが何も起こらない。

ただ乾いた土があっという間に水を吸ってまた乾いた土に戻る。


道中見かける枯れた苗木に何度か試してみてもただ水に濡れるだけ

気付けば家についていて。先に帰っていたオメガが出迎えてくれる


「何かあったのか?」


手を何度も見つめたり、水が蒸発するほどスープを煮込んだり

いつもと違うアズに痺れを切らしたオメガが声をかける


相談してみればいい…一度はそう思ったものの


「いや、何でもない。疲れただけだと思う」

「そうか。今日は早く寝なさい。明日からまた勉強するんだろう」

「うん。そうするよ」


まだ半分も食べていない夕飯も喉を通らない。

早めに自室に戻ると不思議な出来事をかき消すように眠りについた

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