根層3
外でねむそうに眼をこするソリュと合流すると記憶をたどりに進んでいく
オメガと出る時間も十分早いのだが今日はいつもの採取よりも多く採らなければならない
しかも、木の実は薬草よりも珍しい。以前行ったことのある少し遠いところまで足を運び
住んでいる街よりも草木の多い所へ行くと持てるだけかご一杯の木の実を摘みとり帰る
以前来たときは近くの村の人々に怒られたから気持ちとしてアズたちの作った薬をいくつか
おいて帰る。植物の少ない根層において食べ物はとても貴重だが知識のないものが多いこの場所では
薬はもっと貴重である。
翌朝、朝日が昇るよりも早い時間。オメガに置手紙をすると家をでる
オメガとの薬草採取の時間に間に合う様に早めに出たが思ったよりも距離があった。
もしかしたら、あの頃よりも砂漠化が進んでいるのかもしれない。
帰りも行きと同じで走る。大切な木の実を落とさないように慎重に
帰るころには朝日も昇っていてもうオメガの姿はない。代わりにオメガからの置手紙が
【やるべき事を優先しなさい今日明日は採取はお休み。
夕飯は一緒にたべること】
ソリュとアズが顔を見合わせ笑う。おかげで作れるクッキーのか数が増える
「お父さんがね、少しだけどナッツをくれたの
これね、お父さんの内緒のおやつなんだよ。」
いたずらっ子のように笑うソリュ。
手分けして作業を始める。アズがナッツを砕き
ソリュは木の実を仕分ける。
木の実は今日のクッキーに入れる用と明日以降使う分。
卵もバターもない。混ぜて焼くだけのクッキーが全て焼けるころには
外にもあふれるくらい甘い香りがして。ソリュはよだれを何度も飲み込みながら
かご一杯のクッキーを眺める
「一回帰って飯食うか?」
「ううん。時間かかると思ってアズと食べるって言ってある」
ソリュの言葉にアズが頷き三人分の昼食を作る
あったかいスープに木の実で作ったジャムをパンにはさむ
「幸せな香りがするね」
出来上がるころにはオメガも帰ってきて。三人で少し豪華な食事をすると
広場に向かって歩く。
ソリュの声掛けの効果だろうか。今日の広場には子供だけではなく大人たちも集まっていて
いつもなら問診にいくオメガも今日は近くの根に座り話が始まるのを待つ
わくわく、ソワソワした顔の子供たちの目はソリュの持つクッキーの入った籠と話しを始めようとするアズを
行ったり来たりする。
アズが定位置に座ると今日のお話が始まる。今日の話は創造主の女神のお話。
アズが話を始めると、おしゃべりをしていた子供たちも静かに聞き始める。
ここ最近では、アズが魔法を使いながらお話をする。本でしか見られない絵を
アズの得意な水魔法で再現する。
そんなことをしていたなんて知らない大人たちは美しさに息をのむ。
まさか、ここまで魔力コントロールが出来るようになっていたとは…
オメガもアズの成長に驚きながらも少し考え込む。
アズが、話を終え水魔法が消えるとしばらくの静寂の後大人たちから拍手が送られる
拍手の音で話が終わったことに気付き動き出し籠にかけよる子供たち
話はじめよりも人が増えている…
「アズ。ソリュ」
子供たちにクッキーを売ろうとしていた二人の元に体の大きな男が近づく。
初めてオメガが来た時に絡もうとした大男は
今では、街のほとんどの家を作ってくれていて。
「ルクスの話は聞いたぞ。俺は代わりに全部払ってはやれないが
これで、この菓子を売っちゃあくれねえか」
そういって差し出されたのは銀貨で。
「これは、小銅貨5枚なのでこんなに受け取れません!」
ソリュが悲鳴に似た声を出す。
「ああ。でもお前さんたちは俺の夢なんだよ。
オメガさんが来て屋根のある家に住んで仕事もあって
今度はここから三人も試験受けれそうな奴が出てきて。
だから、金貨はねえけど。これで俺の夢かなえてくれねえか」
そういってソリュのエプロンのポケットに銀貨を無理やり入れると
籠から一枚クッキーを持って去っていく
これを皮切りに子供達も大人たちも心配の声と共にお金を払ってクッキーを持っていく
エプロンが破けそうなくらいのお金。ソリュは隣で泣いていて
困った顔で笑うアズが受け答えと感謝を伝える
籠いっぱいのクッキーはいつの間に無くなっていて
アズたちの周りには美味しそうに笑顔でクッキーを食べる住人達。
ソリュだけは一人まだ泣き止まずにアズが背中をさする。
まさかこんなに集まるとは思っていなかった二人は一度ソリュの家へ向かうと
エプロンが破ける前に硬貨をテーブルに広げる
「アズ…凄いよ。こんなに沢山お金が…集まった。
これで三人で試験受けられるかな」
「まだ分からないけど数えてみよう」
涙で顔がボロボロになったソリュと二人で数えていく。
「銀貨九枚分と小銀貨八枚分…あとは銅貨が六枚と小銅貨が三枚」
一日でこれだけ稼げたら十分だ。
でも、ソリュは納得いかなそうだ
「アズ…お金を稼ぐって大変だね…あともうちょっとなのに
こんなに皆が協力してくれたのに」
さっきまでは、たまったと思っていたのだから当然と言えばな反応である
「あれ?アズもう売り切れかー?」
分かりやすく落ち込むソリュの元にやってきたのはソリュの親父さんで
「なんだソリュその顔は。」
「父さん…お仕事は?」
「可愛い娘と可愛いソリュが商売するからって見に来たんだ。
なんだ売り切れじゃ仕方ないな。」
パチリと音を立ててソリュのお父さんが小銀貨を二枚置く。
「父さん、これは?」
「明日のクッキーの予約だ。材料はまだあるんだろう?」
豪快に笑いながら言う
「二百枚は無理だよ」
「作れるだけでいい。ルクスだって俺の息子みたいなもんだからな」
アズとソリュの髪を豪快に撫でまわすと仕事へ戻るのか部屋から出ていく。
「アズ!集まった……んだよね?今度こそ…三人一緒に、試験が…」
「ああ。こんなにしてもらったんだから試験合格しなぎゃだな」
流石にあれだけ泣いてもう涙も枯れたのかニコニコと笑うだけ
泣きつかれたんだろう。眠そうで。
「師匠の夕飯も作らなきゃいけないし今日は、もう帰るからソリュは寝ろ
銅貨三枚だけもらっていくからな。」
「残りは?ルクスの親父さんのお見舞いでも買って明日持っていこう」
アズの言葉にソリュが頷く。
問題解決の光がみえたのであれば、少しでも勉強を進めたい。
大工のおじさんの言葉を思い出してやる気が入る
体は疲れているきがするけれど、頭はすっきりとしている。
今ならいつもよりも集中できそうだ。自然と小走りになる足元。
上がる口角。暖かい風が吹きアズの心情を現すかのように木の葉が踊るように舞った




