表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

根層



いつの間に出来上がったのか

砂の舞うそこに気付けば一軒の砂の家が建っていた

根層でも更に追いやられた者たちが住む砂漠地帯は

常に砂埃が舞い、建物以外では物を食べることですら一苦労である


植物も育ちにくい死んだ大地のそこでは

食べ物も飲み水も奪い合いである



そんな場所に移り住む変わった形の家から出てきたのは

黒とも紫ともとれる暗い色のローブに身を包んだひょろ長の男だった


男の腕に抱かれているのは、白銀に輝く髪をもつ赤子である


人前で泣くこともなくただ眠りこける赤子と

顔が見えないくらいに目部下にローブを被る男の

組み合わせは不気味で

血気盛んなスラムの連中も近づこうとはせず。


お陰で彼らは、トラブルに巻き込まれることもなく

その地に馴染んでいく



砂漠化が更に進んだ数年後。最初は恐れられていた男だが

住居の作り方や薬草の知識によって


根層のなかでの地位を築いていっていた

そんな男の横でニコニコと笑う子供


砂漠の中でもキラキラと輝く髪は自身が発光しているのでは?と錯覚を起こすほどで


男とも女ともとれる可愛らしい見た目は娯楽のない根層のオアシス的存在である




アズと呼ばれるその少年の周りには自然と人が集まり

荒んでいたスラムの人間も次第にやる気や笑顔に満ち溢れていく

少年が6歳になるころには、砂の上に藁を引いて眠る民も減り

砂漠化の止まらない根層でも活気のある街が出来上がっていた



そんな中を年頃の友達と走り回るアズ。

子供たちの泣き声よりも、笑顔が増えたのは戦争以来だろう

子供たちの笑い声に大人たちも笑みが溢れる


アズと共にやってきたオメガの薬草の知恵で病人も減った

そんなオメガから学ぶアズは同世代の子たちより飛びぬけて賢い


一緒になって、オメガから学ぶのはアズの一個上のルクスとアズと同い年のソリュである


ルクスとソリュは家が隣同士で、オメガが家の作り方を教えた初めてのスラムの家族だ


そこからは、交流も多く気付けば幼馴染として風が吹き荒れる日も理由をつけては三人で遊んでいた


以前根層からテストを受け、出ていった者は30年も前になる

でも、来年はこの三人が試験を受けることになるのだろうと。

元スラムの住人達もそう確信していた


毎日の習慣で、朝日が昇る前にアズはオメガと共に薬草を取りに行く。

朝一番の薬草が一番効果が強いからだ

最近は、ルクスとソリュも一緒で実際に薬草を採集しながら学んでいく


たまに、食べ物となる木の実や動物を見かけてはお土産として持って帰る。

ソリュの家族は、樹層と根層を繋ぐ商家なので街の中でも裕福な方だが家族も兄弟も多い。

年頃の子供がたくさんいる家は、食費も多くかかるらしい

ソリュは薬草探しにでても食べられるものを優先して探しがちだ


一方ルクスは、一人っ子だからか食べ物への執着はほとんどなく貪欲にオメガから知識を吸収していく




薬草を回収した後は、それぞれ一度家に帰り朝ご飯を食べ

今度は、アズとオメガの家に集まる


アズたちの家はあの頃と変わらず街からは少し離れていて

家の周りにはオメガの研究の成果か、砂漠でも育つ植物が少しずつ成長していっている


午前中は、朝とった薬草の処理や勉強をする。

街にある教本とオメガの作る問題を解きながら、たまに来る患者の対応

たまに成績が良いとどこから持ってくるのか?根層では見かけることのない菓子をもらえる



昼を過ぎると、ルクスとソリュは家の手伝いに帰っていく

アズは、オメガと共に家から動けない年寄りや重病人のもとへ薬をもって往診


オメガが街の相談に乗っている間、アズは労働の助けにならない子供たちを集めて

文字を教える。最初は必要ないと突っぱねていた民も文字があることによって

商売でも役にたつと気付いた者から広まり今では4歳くらいの子供たちがアズから

文字を覚えたり物語を聞かされたり。ちょっとした託児所のようだ

2時間くらいそんな時間を過ごすとオメガが迎えにくるのでアズは一緒に帰る



そんな二人が家に着くころにはもう日も沈みかけていて


ランプに魔法で火を灯すと質素な食卓でやっと一息つける時間になる

昔は、オメガが料理をしていたが研究者気質のオメガは味に無頓着で

毒でもない限りなんでもいい食事は悲惨だった

今では、料理はソリュの母親に習ったアズの役割だ


穀物入りのスープと干し肉と香草のサラダがいつも通りの夕飯で


「このスープうまいな」

「ソリュの母さんから教わったんだ。薬草で煮込むとうまいって」

「ふーん。これは回復にも効く薬草だし…」



どんな時でも研究で頭がいっぱいなオメガはスープを食べながら

ぶつぶつと何か喋りながら、自分の世界に入り込んでしまう


ため息をついた後、残りの食事を平らげたアズは食器を片付けると

自室のランプに火を灯し、読みかけの本を開く

街にある本ではない、オメガの私物の蔵書は家から持ち出さないことを条件に

貸してもらえる。どこから仕入れてくるのかは分からないが

気付いたらオメガの蔵書は増えていて。


不思議に思いつつも、読書をしているうちにそんな些細なことは頭から消え去っていく



「アズ、そろそろ寝なさい」


どれくらい没頭していたのか、オメガの言葉にアズは本から視線を外す


「今日は満月だから明日はいつもより薬草を多く採りたいから

早めに寝なさい。明日は忙しいぞ」

「分かった。師匠も早く寝ろよ」

「ああ。分かった。おやすみ」


アズが本にしおり代わりのハーブを挟み布団へと向かうと

オメガが腕を振るう。ふわりと舞った掛布団はアズの体を覆うようにかかり

ランプの灯が消える。


オメガの言う通り窓から差し込む光はいつもよりまぶしくて

光に背を向ける様に寝返りをうつと、魔法で温かい布団のお陰であっという間に眠りについた


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ