クズ彼氏と喧嘩して俺の家に来た幼なじみが、なぜか今さら本気になった
いままでの私の作品と比べてかなり作風が違うのでよろしくお願いします
ある夏の日の夜、ムンムンとした暑さのせいでなかなか眠れずにへばりにへばり切っていた俺は、自宅のソファでぐでーっと垂れさがていた。
もう大学生だというのに、彼女の1人もいないが、片思いの好きな人はいると言うさみしーい生活を送っていた。
スペックは悪くないはずなのだ。顔は自分で言うのもなんだが整っている方で、三年前に起業した会社も上場し、俺の年収は五千万を超えている。おまけに偏差値も七十を超えているというリアル俺TUEEE系主人公なのだ。
そのせいなのか、寄ってくるのは金目当てばかりの女の子ばかりなのだ。
そんな時、俺のマンションのインターホンが鳴った。
「どなたですか?」
俺はインターホンを通じて、ドアの向こう側の人に問いかける。
すると、可愛らしくもあるが、少しクールな感じの女の子の声が返ってきた。
「私、開けて」
俺は言うとおり扉を開けた。
そこに居たのは数本の缶チューハイの入った袋を下げている、幼稚園時代からの幼馴染、夏川千里であった。
身長155cmと少し低めで、黒髪を後ろで結えている華奢な女の子だ。
クール系というのだろうか、自称ではないサバサバ系で、よくボーイッシュな服装を好む子だ。
現に今日も、ショートパンツにダボっとした半袖パーカーを着ている。
でも、なんでこんな夜中に俺の所へ……?
「いや、ちょっとあいつのこと忘れたくて。愚痴吐きに来ちゃった」
千里の言う「あいつ」とは、千里の現在付き合っている彼氏のことだ。
どうやらとんでもないクズらしい。三日に一回ぐらい俺に愚痴を吐きにくるのだ。
だとしても、こんな深夜は初めてだ、となると……
「喧嘩して飛び出してきたのか」
「……正解」
千里は驚いたような顔をして、そう言った。
やっぱりか。いつも愚痴を聞いてたら千里の行動パターンだって読めてくるのだ。
「そんなこといいからさー。私の話聞いてよー」
……どうやら、先ほどの「クール系」と言うのは撤回したほうがいいかもしれないな……
俺は「仕方ないな」と言い、その相談に乗ってやることにした。
* * *
数時間後、千里はいまだに彼氏の愚痴を話し続けていた。
俺は千里の話を無理矢理止めた。
「そんなに嫌いなら別れればいいじゃないかよ」
俺がそういうと、千里は虚な顔をして話し始めた。
俺たち2人は少しずつお酒が回り始め、千里も顔が赤くなり始めていた。
「別れられるのなら別れたいよ。でも、あいつが逃してくれないんだ」
千里は飲みかけの缶チューハイをテーブルの上に外置き、どこか遠い目をしながらそういった。
俺が何かいってあげようと、あーでもない。こーでもないと考えていると千里が口を開いた。
「ほら、なんかこう言うときに慰めてやるのが幼馴染の役目でしょ?なんか言いなさいよ!」
千里は、シリアスな空気をぶち壊すかの如く、いつものテンションに戻って俺の背中を軽く叩いてそういった。
俺は、スペック高い割にこういった女性経験と言うのが皆無なのだ。こう言う時、どんなことを言えばいいか。
「じゃあなんだ。俺が彼氏になってやってもいいぞ?」
俺が冗談まじりにそう言うと、千里は飲んでいたチューハイをむせ返した。
「何バカなこと言ってんの⁉︎冗談でもやばいって!」
千里は赤面しながら俺にそう言った。
その赤面はお酒のせいなのか、照れているせいなのか。俺には区別が付かなかた。
正直なところ、俺は昔から千里のことが好きだった。だから、今のは冗談ではないのだ。
でも、俺たちの関係上、冗談で解決してしまうと言うものだ。
「でもお前。なんで俺みたいなイケメンで高収入で幼馴染の愚痴を夜通し聞いてやるとか言う優良物件じゃなくてそんなクズ男選んだんだよ」
俺はその時、酔った勢いでそんなことを口走ってしまった。
いや、酔った勢いじゃなくて、本心だったのだろう。
俺がそう言うと、千里は驚いて「冗談きついって!」なんて笑って流すと思ったが、その時は違った。
「……確かに。私、なんであんなクズ男を選んだんだろう」
千里はソファの上で、体育座りのような体制をとり、顔を真っ赤にしながらそう言う。
俺は、さっきまでの酔いが一瞬で覚めたのかと思うぐらい、背筋が凍った。
まさか、このまま本当に千里はクズ彼氏から俺に乗り換えるのか、そんな考えが頭によぎった。
「そ、そうだな」
俺はそんな不器用な言葉を千里に投げかける。
千里はそれでも黙ったままだ。
ここは俺が出なくてはまずいと思い、第一声を発した。
「お、俺は千里のことが好きだ。今からでもその……乗り換えないか……?」
俺が千里から目線を逸らして恥ずかしがりながらそう言うと、千里は持っていた缶チューハイを床に落とした。
流石にキモかったか?浮気なんてよくないよな。と思い、俺はさっきの発言を取り消すつもりで、恥ずかしさのあまり瞑っていた目をうっすら開けた。
でも、そこにいたのは先ほどよりも顔を真っ赤にして、自分の髪をくるくるといじっている、まんざらでもなさそうな千里であった。
「ま、まぁ。確かに……それもありかな……なんて」
俺は千里の言葉に驚きすぎて、腰を抜かしそうになった。
そうやら千里によると、大学のサークル内で自慢するために作った彼氏らしく、昔からずっと、俺のことが好きだったみたいだ。
その後、少し沈黙が続いた。
「……このあと、どうする?」
俺は、千里の彼氏について言ったつもりであったが、千里には別の意味で聞こえてしまったみたいだ。
履いていた靴下を脱ぎ捨て、千里は俺の前へとスタスタと寄ってきた。
「私を本気にさせた責任、とってよね」
千里は俺の耳元で、まるで茹蛸のように顔を真っ赤にしながらそう言った。
俺は、千里の言ってる意味がわからず、少しフリーズした。
だが、その後に続いた言葉によって、俺は千里の言っていることの意味を確信した。
「あの男にはずっと、許してなかったの。初めてだから……優しくしてよね」
* * *
翌朝、俺が目覚めると、ベッドの上で、隣には生まれたままの姿の千里が寝ていた。
俺は昨夜のことを思い出し、悶絶していると、千里が起き上がって俺の肩に寄りかかりながら、優しく呟いた。
「まだあったかい……もしもがあったら、責任……とってよね」
千里のその声は、脅しなどではなく、愛情のこもった、優しい声だった。
俺は千里に向かって、無言でコクリとうなずいた。
欠陥品と彼女達 ~俺の世話係の瀬戸さんは今日もツンツンしている~
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