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かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。  作者: エース皇命


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第9話 ハーレム部活とはちょっと違う

 新しい陰キャ部なるものを発足しようと提案するも、その条件として出されたのが元カノとの復縁。


 その元カノは美人で、頭がよくて、スタイル抜群で、全校生徒の憧れ。


 誰がそんな元カノからの愛を拒むだろうか。


 だが、考えてみてほしい。


 そんな完璧な存在は()彼女なのであって、一度別れを経験している。つまりは、そんな完璧美少女と別れるだけの理由があったということだ。


「絶対に復縁はしない」


 俺は夢菜からの甘い誘いを断った。


 もう俺とこいつの間の恋は終わったのだ。

 今の関係は単なる友人関係に過ぎない。


「そう。だとしたら絶対に協力しないから! それでもいいの?」


「……」


 何か別の手はないか。


 復縁するつもりもないのに復縁すると言って、なんとかやり過ごす。

 それもアリだ。


 一度復縁してまたすぐ別れればいい。


 だが、俺の中にある良心というものがズキズキと痛み始めたことで、その案を採用する計画は一瞬で白紙になった。


 相手の気持ちを踏みにじるようなことはしたくない。

 一応、別れた元カノではあるものの、夢菜は俺の友人だ。


 だとしたら――。


「ねえカズっち、こっちこっち」


 琥珀(こはく)が何かを企んでいるような表情で手招きしてくる。


 そのまま彼女は俺の耳元に顔を寄せると、吐息混じりにあるアドバイスをした。

 ほんの少しだけドキドキしたことはさておき、琥珀にしてはなかなかの名案である。


「夢菜、この学校、文芸部とかあるのか?」


「文芸部? 文芸部なら私たちが入学する前に部員不足で潰れたそうよ。世羅(せら)先生が顧問だったって聞いてるわ」


「そうか」


「あんたまさか――」


「そのまさかだ。陰キャ部改め、文芸部発足を申請する!」


 そもそも陰キャ部とかいうアホみたいな名前は受け入れられそうになかったしな。


 普通に文芸部という形であれば、生徒会長の夢菜も変な条件をつけて揺さぶったりできない。

 俺はただ、正当な権利を主張している。


 あとは部員を4人集めることと、顧問をつけること。


 顧問は世羅先生に頼んでみるとして、部員は――。


「琥珀、文芸部に入ってくれないか? 名前だけでいい。毎回来る必要とかはないから」


「いいよ~。カズっち、ちなみにそれ、あたしの案だからね」


「琥珀、あんたは私の味方でしょう!?」


「え~、でも面白そうじゃーん」


 琥珀が味方してくれるのは心強い。


 琥珀は面白そうなことの味方だ。

 そういう意味では自分に正直であり、誰よりも自分を貫いている。


 夢菜は琥珀の裏切りにショックを受けているようで、苛立ちを隠さないまま俺を睨んだ。


「私は絶対に文芸部なんか入らないわよ! そもそも生徒会長としての仕事で忙しいし――」


「いいの~? あたしが代わりにカズっちとイチャイチャしちゃうけど?」


「私も絶対に文芸部入るから! 生徒会がない日に活動しなさいよね!」


 琥珀すごいな。

 夢菜の扱い方を完全に熟知している。


 結局のところ、夢菜は俺のことが好きであり、俺と一緒に行動したいと思っているらしい。


 まあ俺としては、二人が活動に参加しようがしまいが関係なく、部が発足すればどうでもいいわけだが。


 そして1番の問題は、4人目の文芸部のメンバーとなる、清衣(すい)の勧誘だ。




 隣の席といえども、人気者の清衣は友達に囲まれていて、陰キャが話しかけられるような状況ではない。


 だから俺は、まさに陰キャっぽい呼び出し方法を採用した。


 チャットで『放課後一緒に帰ろう』『話したいことがある』とメッセージ。


 既読はついたし、可愛らしいクルリンのスタンプが返ってきたので、呼び出しはひとまず成功しそうだ。


 すぐ隣にいるのに話しかけられないというコミュ障陰キャ感。

 それを演出できたことに感動し、自分の陰キャとしての1年間の努力に感謝する。


 この努力は間違いじゃなかった。




「実は、新しく文芸部を作ろうと考えてるんだけど、部員になってほしいんだ」


「いいよ」


 なんとまあ、二つ返事で承諾する清衣。


 もう少し考える時間があるのかと思っていたから、このテンポのよすぎる展開に内心驚いている。


「高校ではカズ君と同じ部活に入りたいって思ってたんだよ。そんな魅力的な誘い、断るわけないよね」


 清衣の笑みは明るかった。




 夢菜はやっぱり優秀な人間だ。


 文芸部の発足手続きをその日のうちに済ませたようで、俺の思いつきの文芸部は翌日から早速活動開始となった。


 部室もあてがわれたし、顧問は世羅先生。


 とはいえ、先生が部室に来ることはない。

 ただの形だけの顧問だ。数年前もそんな感じだったらしい。


 琥珀と夢菜には感謝を伝えつつも、幽霊部員として文芸部には来なくていいからということを伝えた。


 だが、彼女たちがそれを素直に聞くような人種ではないことを、俺はよく知っている。


 実はまだ、俺以外に部員がいることを清衣には伝えていない。


 だからこそ、夢菜と琥珀と同じ部活だと知って、いきなり逃げ出したりしないだろうか。


 二人とも悪い女子ではないが、清衣との相性はそこまでいいような気がしない。


 それに、夢菜は夢菜で、琥珀は琥珀で暴走しそうだ。


 そんな嫌な予感を押し殺しながら、新しい部室に入室し、換気をする。


 広さはだいたい2-1教室の半分くらい。

 まあまあ広いんじゃないかと思う。


 文芸部に必要なのは本とかパソコンくらいだし、特別な機材とか設備はいらないからな。


「それで、文芸部では何するの? 読書会?」


 部室には今、俺と清衣だけがいる。


「好きな本を読んで、紹介し合って、語り合う……そんな感じの緩い部活にしたい」


 もしかしたらその過程で、本音をぶちまけてくれたり、本来の自分を取り戻してくれるかもしれないから。


「やっほー、カズっち。今日は何する~?」


 そんなところに、元気いっぱいの琥珀が登場した。


 その様子を見るにザ・陽キャって感じだ。


 まさに文芸部には似合わない系女子。

 しかも女子テニス部にも入っているので、文芸部との二つの部活を兼部しているということになる。


 そして――。


「来てやったわよ。だから復縁ね」


 あの女がやってきた。


 強気な表情で部室に入ってくる夢菜。

 すぐに清衣と目を合わせる。


「久しぶり、静野(しずの)さん」


 夢菜は悪役令嬢のような意地悪な笑みを浮かべた。

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