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かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。  作者: エース皇命


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第4話 陽キャ時代の元カノ

「どうしてあの女(・・・)がこの学校にいるのよ!?」


 殺意のこもった声が生徒会室に響く。


 椅子に座らせられ、後ろで手を拘束された俺は、その苛立ちを真正面から受け止めていた。


「おかしいでしょ! 中学の頃、突然パッといなくなったはずよね! なのに超垢抜けてカムバックってどーゆーことよ!」


「ありゃありゃ、相当溜まってるね~」


 呑気なセリフで場の雰囲気をマシにしたのは、生徒会副会長の琥珀だ。


 俺をここまで連行した張本人でもある。


 ボーイッシュで爽やかなショートヘアに、中性的な整った顔立ち。

 引き締まった太もものおかげで男性人気も高いが、彼女は女性人気の方が圧倒的に高い。


 生徒会副会長なのに、責任感の欠片もないような呑気な口調と楽観主義も、彼女の人気を確立する要素のひとつだ。


 俺だったらこんなヤツ副会長にはしないけどなと思いつつ、今現在自分の手を拘束している琥珀を見る。


「逃げないから手を離してくれないか?」


 琥珀は俺の手首を強く握っていた。


 俺が逃げ出さないように。


 そもそも、生徒会室に足を踏み入れた時点でそんな心配は必要ない。ここから逃げ出すなんて不可能だ。


「ダメよ琥珀、もっときつく握りなさい」


「りょうかーい」


 生徒会長で俺の元カノ、立花(たちばな)夢菜(ゆめな)はよほど機嫌が悪いのか、終始顔をしかめている。


 黙っているか笑顔であれば学校ナンバーワン美少女。


 だが俺の前では黙っていることも笑顔であることも少ない。


「カズっちごめんね~、ちょっと強く握っちゃうよ」


「……」


「ねえ、今えっちぃこと考えたでしょ?」


「考えてない」


「やっぱりね!」


 琥珀のヤツ、本気で手首を握ってきやがった。


 琥珀は握力が強い。

 なんなら俺より強いのかもしれない。


 女子テニス部なので、ラケットを握るという動作が握力にも影響しているんだろう。知らんけど。


「カズ、聞いてるの?」


「あ、はい」


 元カノ夢菜は、ヤンキーのようなオーラを纏いながら、椅子から立ち上がり俺の方に近づいてくる。


 普段彼女が友達や先生に見せている姿とはまったく違う、裏の姿。


 なんならこの姿で生徒会長挨拶とかすればいいんじゃなかろうか。

 きっと一部の男子は興奮してくれるだろうし、むしろ親近感が湧いて人気が上がるかもしれない。


 実際この立花夢菜という女は、親近感の欠片もない超人だ。


 成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、高いコミュニケーション能力。


 まさにパーフェクトガール。


 それでいて生徒会長もしているわけだから、この学校の誰もが彼女のことを知っている。


「それで、どうして静野(しずの)清衣(すい)がこの学校にいるの? よりにもよってあんたのクラスに」


 夢菜が足を俺の太ももに乗せ、グリグリ踏みつけてくる。ついでに言うと裸足だ。


 みんなの憧れ美少女生徒会長がすることとは思えない。


 そもそも、なぜ彼女は靴下を脱いでいるのか。

 なぜスカートから覗く太ももが、根本(ねもと)まではっきりと見えるのか。


「足をどけてくれ」


「なに、痛いわけ? ちょっとツボを刺激してやってるだけじゃない」


「そっか。それはどうも」


「適当な返事はやめて! 私の質問に答えてくれれば、激痛マッサージ(・・・・・)はやめてあげる」


 やっぱりいい性格してるな。


「俺もよくわからん。北海道に引っ越してたとか言ってたから、普通に戻ってきたってことなんじゃないか?」


「そんなことはどうでもいいのよ!」


 聞いたのはお前だ。


 理不尽すぎる。


 夢菜はさらに機嫌を悪くすると、俺から離れて会長席に戻った。

 ドカッと腰掛け、艶のある美脚を机の上に乗せる。


 はいはい綺麗な脚ですね。


「この様子を録画して全校生徒に見せてやりたいくらいだ」


「何か言った?」


「いや、何も」


 夢菜の前では、俺も素に戻ってしまう。


 そもそも、俺の中学時代を知っている人間の前で陰キャを演じる必要はないのだ。


 この女が同じ高校に進学してくるなんてのは誤算だった。


 副会長の琥珀に関しても同様だ。


 この学校はそこまで偏差値が高いわけじゃないから、頭のいい夢菜が受験するわけないと思っていたし、一応他の生徒が受けないことも聞き込みで確認していた。


『夢菜は高校どこ受けるんだ?』


『なんか公立受けるって言ってたよ~』


 ちなみに琥珀も同じ中学。

 中学時代から夢菜の親友で、よく一緒にいるのを見かけていた。


 そんな琥珀にこっそり確認を行った際、『夢菜は私立神青(しんせい)高校を受けない』という情報を手にしたわけだ。


 結局、その言葉は嘘だった。


 あの会話の後、俺のことを裏で笑っていたに違いない。琥珀の罠にまんまと引っかかってしまったのだ。


 あの頃の屈辱を思い出し、琥珀を睨む。

 その効果は……まったくない。


「カズ、こうなったら奥の手を使うわ」


「は?」


 夢菜は勝ち誇った笑みを浮かべ、腰に手を当てて堂々と立ち上がった。生徒会長をやっているだけあって威厳と迫力は凄まじい。


「私と復縁しないさい」


 何を言い出すかと思えば、わけのわからないことを。


「なんでそうなる?」


「あんたが私の本性バラすって脅してくるなら、私はあんたが実は中学で陽キャだったことを全校生徒にバラすけど。それが嫌なら私と復縁しなさいって言ってるの」


「な、なんだって……!」


 そんな人生最大の黒歴史……誰にも知られるわけにはいかない。


 とはいえ、どうしてこの流れで復縁という話になるのか。


「それが嫌だから夢菜の本性バラすって脅すわけだろ? だったら復縁の流れは余計じゃないか?」


「……」


 頭はいいはずなのに、たまに馬鹿だ。


「よくわかったじゃない。合格よ、合格」


「俺は何の試験も受けてないぞ」


「うるさいわね。じゃあとりあえず復縁しなさいよ」


「復縁なんてしない」


「だったらなんでここに来たわけ!? ふざけてるの!?」


 お前がここに呼んだんだろ。


 わざわざ琥珀という手下に連行させて。


 この鬼畜にはさすがの琥珀も苦笑いだ。よくこんな鬼畜の親友でいられるな。


「復縁しないなら出てって! 早く!」


 どうして俺が最強の美少女と別れたのか。

 この有様を見れば馬鹿でもわかるだろう。

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