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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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───こんな筈ない



仰向けに倒れたまま、僕は必死で起き上がろうとする


自分の躰の、肩なのか胸なのか解らないくらいの場所が僅かにだけ持ち上がる

愕然とした僕は、思わずそこに視線を向けた


視れば、持ち上がっているのは右肩で、視る間にも何度も昇ってはずり落ちる事を繰り返しているという事に気が付いた


それが現在自分に出来る唯一の事なのだと解るにつれ、恐慌が脳裏を満たしていった



蕩けたような声、

ゆっくりとした足音、

金槌で辺り一面を叩く音……


これらは君が僕の名を呼びながら、歩き回っている音だ

その場所が近くで無い事を祈りながら、僕は何度も起き上がろうと必死で躰を揺すった


声が漏れ、汗が額から流れて瞳に浸入しようとする

幾度力を込めても、僕の躰が起き上がる事は無かった



───こんな筈がない、絶対にない


起き上がろうとするのを諦めると、僕は真っ暗な天井を視た



呼吸を整える


こんなに意識がはっきりしてる以上、躰が致命的な打撃を受けているとは到底思えない

頭を金槌で殴られたせいで、一時的に全身が脱力しているんだ



呼吸を整える


息を吐くたびに視界がぼやけ、ぜえぜえと音がした



───早く起きないと


呼吸や躰の様子を整えると決意した筈なのに、直ぐに焦りが頭の中を染め上げた


必死で焦る心を抑えようと深呼吸をしたが、その息すらが濁って震えたものになっている事に僕は気が付いた



───絶対に大丈夫だよ、少しずつ躰を動かしてみようかな


頭、両手、腹部、両足………


一つ一つ動かそうと点検していく中で、両脚の感覚が完全に喪われている事に気が付き、僕は視線を向けようとして────直ぐに止めた



もし折れているのを視てしまったら、動揺してしまうかも知れない


もう、脚は折れているものと考えよう


這って逃げる事が可能かどうか、僕はもう一度だけ自分の上半身を揺さぶった

両手は、感覚こそ有るものの思い通りに動かず、胸とも肩ともつかない部分が左右に揺れるだけだった



────逃げないと!早く、少しでも遠くに……


何度も左右に揺れているうちに、ようやく僕の躰は転がって俯せになった


頭がおかしくなる程の必死で力を込め、右手を視界の先の空間に伸ばす




その時、後ろで君の声が聞こえた

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