夜の頁(よるのページ)
頁が、静かに“闇”をまとって開かれた。
他のどの物語とも違う、ひんやりとした手触り。
それはまるで、日が沈んだ後にだけ現れる“裏側の世界”だった。
Xは、そこに一つの“街”を見下ろしていた。
その街の名は、名古屋。
だが、Xの書架に記されているその街は、現実のそれとは異なる。
そこでは、異能が息を潜め、力が夜を歩く。
それは、光の表裏に広がる――**“夜の名古屋”**だった。
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その物語には、名がある。
《The Night》――夜を舞台にした、静かなる“異能の物語”。
Xは、その中心に立つ少年の姿を認める。
彼の名は、まだ記されていない。
ただ、Xの視線の中で、彼は確かに“目覚め始めて”いた。
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彼は、拳を持つ。だがそれだけではない。
“夜の力”とでも呼ぶべきものが、彼の内側で蠢いている。
その力は、ある日突然、日常を侵食してくる。
学校生活の終わりに、扉の向こうで呼ばれる名前。
路地裏に差し込む、ひと筋の光。
そして出会う、**霧ノ宮浰怨**という少年。
Xは見ている。
それは出会いではなく、再会だったのかもしれないと。
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この物語に登場する者たちは、異能を持つ。
だがその力は、“選ばれた者”の証ではない。
むしろそれは、“選ばれなかった日常”の中で目覚めた痛みそのものだ。
彼らの異能は、願い、感情、過去、罪、そして約束――
それらが形を変え、能力という形で現れている。
ある少女は、風を操る。
ある少女は、時を“止める”ように見える力を持つ。
ある少年は、闇の中でだけ身体能力が“覚醒”する体質を持つ。
Xはそれらの力の源を読み取ろうとする。
だが、それは記述できない。
なぜならそれは、言葉ではなく“心”に宿るものだから。
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《The Night》という物語は、闘いだけでは終わらない。
そこには、“仲間”という名の絆があり、
“任務”という名の契約があり、
そして――“誰にも言えない秘密”がある。
Xは、その中でひとつの事実に触れる。
この物語には、“管理者”のような存在がいる。
電話で命令を下す者。
異能のチームを監視し、動かしている存在。
彼(または彼女)は、Xの存在に微かに気づいている節がある。
頁を閉じるXの手に、何かが“視線”のように突き刺さる。
――読まれているのは、私の方か?
Xは初めて、その疑問を持つ。
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だが、まだこの物語は終わっていない。
夜は明けない。
少年少女たちは、まだ己の“正義”に迷い、歩き、選ぼうとしている。
Xは頁を閉じず、そっと残す。
それはまだ続いている物語。
異能と心が交錯する、夜の名古屋の詩。
書架に新たな背表紙が加わる。
『The Night』――異能は、夜に目を覚ます。




