表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

言葉の発火(スパーク)

ページが、音もなく一枚めくられる。

その音なき風が、無限の空間を静かに撫でる。


一冊の本。その中に記された、ただ一つの言葉――「物語」。

それは、存在を定義し、因果を生じさせ、世界を動かし始めた。


だが、まだそれは**“点”**でしかなかった。

一つの火種があっても、それが火となり、薪となり、燃え広がるには“連鎖”が必要だった。


そして、Xは気づいた。

言葉には、“力”がある。

名付けることで、存在を発火させる。



「……抗え」


彼はそう、静かに記した。

白紙の頁に、確かな線が刻まれる。


その瞬間、一つの物語が生まれた。

物語の名は、《ifの使徒たちよ》。


この世界の“定め”に、ifを突きつける物語。

神に定められた運命に抗い、自らの存在を証明する者たちの物語。


彼らの名は、アレフ=ゼファル。ゼノン=リーベル。篠宮秋人。

記されるたびに、それぞれの世界は確定し、書架に並び始める。



言葉が連鎖する。

一つのifは、いくつもの可能性を呼び起こす。

それは確定と未確定の狭間で揺らぎ続け、

やがて“選ばれなかった世界”たちが、書架に棲み始めた。


Xは静かに見つめる。

己が生み出した物語が、想定を超えて展開し始めるのを。


アレフがゼファルへと進化し、

ゼファルがアルマティアを名乗り、

やがて〇〇〇〇へと至る進化を、Xは頁の外からただ、読む。



「物語は、私の手を離れていく」

Xは静かに呟いた。


だがそれでいい。

なぜなら、それこそが“物語”という概念の本質だからだ。


定義された言葉は、やがて“予測を越える”。

想定を超えるからこそ、それは物語と呼ばれる。


書いた者の意志すら裏切って、

言葉は自らを燃やし、走り、戦い、愛し、そして――終わりへと進む。



Xは手を止めない。

ifの次に続く感情の世界も、やがて燃え出すだろう。

幸福の定義、怒りの揺らぎ、平穏の意味、そして悲しみへの回帰――


それはまた別の頁に記される。


だが今は、この“抗いの物語”を見届ける時。

Xはその頁を閉じない。

彼らの選択が、どのような結末を迎えるのか――それを、最後まで読み届ける義務がある。



白紙だった本に、火が灯った。

それは、永遠に燃えることはない。

いつかは燃え尽き、灰になる。


だが、その灰こそが、次なる物語の地層となる。



そして今、書架に2冊目の本が置かれた。

その背表紙には、こう記されている。


『ifの使徒たちよ』――著:X


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ