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『隣人』

交代、してはいない。3

作者: 鈴木
掲載日:2024/12/31

 大本は蜘蛛の(蜘蛛がしている、ではない)擬態だそうで、膨らんだ先端が蜘蛛の腹に、周囲のひらひらとした突起が蜘蛛の脚を思わせ、振ることで更に蜘蛛らしく見せて鳥をおびき寄せる。そしてこれに食らい付いたところで襲い掛かるらしい。

 ただ、あくまで元の、更にモデルの尾が、であって、現在は何にでも形を変えるようだ。

 流石にサイズは変化していない為、蜘蛛に近い大きさの生物限定で、"動物" でなく "生物" というのは植物に擬態させることもあるからだ。


 その植物に擬態させたのは相手が誰であるかを認識していなければ理にかなっていない選択となるが、認識しているならしているであまりに無謀な試みとも言え、実はただの偶然ではないかとそれを見た礼龍(らいりゅう)は冷静に分析した。

 ―――などと理知的な思考をしたわけではなく、見た瞬間、ある種本能的に「うっわーすっごいぐーぜんーーー」と呑気に考えただけだった。


 礼龍が目を止めたのは地球でいう Spider-tailed Horned viper(なんだが、何故だかスパイダーテイルドホーンバイパーでもスパイダーテイルドツノクサリヘビでもなくスパイダーテイルドクサリヘビという。そしてややこしいことに和名はクモダマシクサリヘビらしい。「"スパイダーテイルドクサリヘビ" ってダッサ~って言われてんのを見掛けたんでわざとそっちにした(笑)」「……」どちらの名称にも地球で縁のなかったカナンはコメントを控えた。[ホーム]にいると気付いたのはトリップした後だ。ジョシュアの言でトリップ関係なくゲーム当時から普通にいたらしいことを知ったが、当然ながらカナンが意図的に[ホーム]に設定したわけもなく、では拡張時のデフォルトだったのかと思えば、言わずとも察した愉快犯が「ランダム~」と何故かイイ笑顔で応えた。それを見たカナンは詳細を追求するのは止めておいた。ジョシュアの認識がどちら(・・・)なのかも)。

 クサリヘビの名称に相応しく?毒ヘビだ。

 体を丸めて蛇であることを分かりにくくした上で疑似餌の尾を振り、鳥をおびき寄せて噛み付き毒を送り込む。

 そのスパイダーテイルドクサリヘビが魔獣化した存在が、礼龍の視界の中で尾の先をミニトマトに変形させて振り子のように動かしていた。


 礼龍はその気になればスパイダーテイルドクサリヘビを丸呑みに出来る(この「その気になれば」というのは通常はスパイダーテイルドクサリヘビサイズのものを丸呑みしないということではない。蛇を食べようという気になれば、ということだ。好物・大好物であればこの蛇のサイズのものでも、それ以上のものでも嬉々として丸呑みすることはある。突然変異の巨大トマトとか。「あれはトリップ補正なー」)。

 毒も効かない。

 そもそも霊獣を害せる存在は[ホーム]にはいない。

 知能レベル関係なく、[ホーム]の生物は皆それを "知っている"。

 そして、まずダメ元で襲おうという冒険者も己こそは可能と慢心する者もいない。

 つまり、仮令魔獣化して通常生物だった頃より高い知能を得たとしてもそれは変わらないのだ。


 ただ、まず、と言うのはまあ、例外は何処にでもいるものだからだ。少々鈍感に生まれつき、それと知らずに攻撃をしてしまう――霊獣と知らずにガフレスクンウベイスをつついたキツツキもどきのように。

 故にこの魔獣スパイダーテイルドクサリヘビがそうである可能性は否定出来ない。

 否定出来ないが、ミニトマトを餌とする生物をおびき寄せようとして、たまたま礼獣に見つけられてしまった可能性もやはり否定出来るものではない。


 結局、事の真相は当人に聞くしかないのだが、礼龍にそのような探究心はなく、ただ、ちょっと遊んじゃえーという悪戯心は刺激されてしまったことで、わざわざミニトマトがちょうど一口になるサイズに身を縮ませて急降下し、気付いていなかったらしいスパイダーテイルドクサリヘビがびっくりマークを出して目を剥いた瞬間にぱくりと疑似餌に噛み付いた。


 それでどうなった?


 どうやら無謀な(たち)ではなかったようで、首を擡げたスパイダーテイルドクサリヘビは礼龍を凝視したまま固まってしまった。

 しかし相手は魔獣(「どーいう理屈ぅー?(笑)」)、礼龍はにんまり笑って疑似餌をはむはむ甘噛みした後、ぱっと口を離し、ぽんっと本来の巨体へ戻って、ばいば~~~~いと長々尾を引く去り際の言葉を口にしながら彼方へと去って行った。


 礼龍の唾液塗れな疑似餌ミニトマトは無駄にてらてらと龍の霊気で輝いていた。










 2025年10月25日、久しぶりに記録しておいたWikipediaのアドレスのページを開いてみたら、見出しが「スパイダーテイルドクサリヘビ」から「クモオクサリヘビ」に変わっていた。今はそっちが主体で別名が「スパイダーテイルドクサリヘビ」や「クモダマシクサリヘビ」らしい。




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