14 居所
拓馬や仁も含め……全員、志望する高校に合格した。
ある日。街角でたまたま、拓馬と桃井野が歩いているのを目にする。…………二人は、手を繋いでいる。
えっ……?
仲睦まじい後ろ姿を凝視する。彼らは、オレの視線にも気付かずに去った。拓馬の、何とも言えない嬉しそうな表情を……もう一度、脳裏に浮かべる。
拓馬の好きな人は……もしかして。桃井野だったのか?
思い至る。
前世で聞いた拓馬の好きな人の話は……桃井野の事だったんだ。
勘違いしていた。紫織を誤解していた。
きっと、こんなオレだから。…………彼女の一番になれなかった。
紫織は、お兄さんを一番大切に想っているのだと……痛い程に感じている。
オレは彼女のお兄さんに、一生……敵わないのか?
複雑な心持ちになっていた頃。突如、お兄さんの居場所が判明する。
オレだけが分かった。誰も、まだ気付いていない。紫織も。
だから、秘密にする。
お兄さんの姿は見えないが……頭の中に、彼の声が響くのだ。聞こえているのは、オレだけのようだった。
「やあ。多一君。紫織の逆ハーレム計画を、阻止してくれてありがとう。紫織の知らない所では、逆ハーレムをコンプリートできていたみたいだけど……まぁ許そう」
「お兄さんも、きっちり約束を守ってくれたんですよね? わざわざ彼女を『家』の『外』に連れ出したくらいですからね?」
『家では手を出さない』約束だった。お兄さんは、悪びれもせずに言ってくる。
「ああ。バレてた? 手を出したの。別にいいよな? どうせ、お前の勝ちなんだから」
「それは……どうなんですかね?」
そうは思えなかった。多分、彼女は一生……お兄さんを忘れないだろう。
隣に紫織がいるから、実際には声を出さずに思考で会話している。
気になっている件を確認する。
「……いつまで、いるんですか?」
「ああ……いつまでだろうな……」
返答に一瞬、気が遠くなる。
お兄さんにも分からないだと? 冗談じゃない。
くっそ……! まさか、このままずっと……こんな感じ……な訳、ないよな? 誰か、違うと言ってくれ。オレは一生、お兄さんと生きていかなきゃいけないのか?
ゾッとする。
嫌だ、絶対に。
ライバルだった人が、永遠のライバルに進化したように……クソ煩わしい。
お兄さんが伝えてくる。
「……言うの忘れてたけど。考えた事も全部、聞こえてるよ?」
それから、お兄さんは……オレの中に居座った。いつまでいるのだろう。もしかして……紫織との結婚後も?
時々……思考に聞こえる声のみで、じゃんけんする。勝った方が体を数時間、動かせる条件で。全然譲らない日が続くと、お兄さんがうるさくて厄介だからだ。
「紫織が悲しそうにしてる! オレの事を思い出しているに違いない。多一君、代わってくれ。ここは彼女の想い人である本人が、慰めるべきだろう」
「は? 寝言は寝てる時に言うもんですよね? 今、この世に生きているのはオレです。彼女の婚約者はオレです。死んだお兄さんは引っ込んでてください」
「まだ死んだとは、決まってねーんだけど……」
彼女の側で秘密裏に、お兄さんといがみ合う日々を送っている。
ひとまず、あらすじにある当初の最終話まで書きました! 完結にしておきます。
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※2026年1月5日現在、修正中で……1月3日から別サイトにて【応募版】の投稿を始めました。各話の文字数を調整したバージョンです。




