13 幼馴染との約束(拓馬視点)
るりの望みを叶える為に、人生を捧げた。
いつの事だったか。彼女から願われた。「彼女」を助けてほしいと。
「彼女」とは、るりの友人で……通り魔に傷付けられ入院したと聞いた。犯人は捕まっていない。今、思えば。それが「魔法」によって行われたのなら、捕まらなかったのも頷ける。証拠も残らないだろう。
るりは大層ショックだったようで、随分と憔悴していた。
オレは、るりの幼馴染だった。小学校に通っていた頃は、ちょくちょく交流があった。中学では疎遠になったけどな。
当時のオレは、ひょろっとした弱々しい奴だった。るりと、接点を持てなかった。そのまま大人になり、人生を終えた。
るりの願いを聞いたのは、後の人生でだ。再び「オレ」としての人生を歩んでいた。気付いたのは、小四の時分。るりが言い出したのだ。泣きながら。怖いイメージが浮かぶと。中学生になってできた友達が通り魔に襲われるかもしれないと、オレへ訴えてくる。
信じ切れないながらも、るりの友達を助ける為に……るりを安心させる為に協力しようと決めた。
ひ弱な体では、犯人を捕まえられないかもしれない。体を鍛え、容姿も変えた。黒髪だったのを赤茶色に染め、中学に上がる頃にはピアスも付けた。何と言うか……張りぼてだ。少しでも強そうに見せた方がいいと思った。
そして、ついに。その日が訪れる。「彼女」の後をつけていた犯人の前に出る。「彼女」の足音が遠ざかる。日没後の、暗い道の途中で。犯人と向き合う。
「彼女」を害そうとしていたのは、「彼女」のクラスメイトだった。るりとも同じクラスだ。
そいつはブツブツと……「ほかの男を選ぶなんて許さない」とか、言ってたっけな。今後「彼女」に近付かないように「あいつは、オレの女だ」と、脅しておいた。近くに隠れて聞いていたるりに「そ、そうなんだね」と言われた。誤解されたのかもしれない。しかし、弁解の機会は得られなかった。後日、オレの方が悪者に仕立て上げられていたからだ。
腕を上げる為に売られた喧嘩を買い続けていたのも、よくなかったのだろう。オレの方が捕まってしまった。
「彼女」は、るりが「彼女」の為に望んだ願いを知らない。
後の……今の人生では、るりに記憶はなさそうだった。それでよかったのかもしれない。不安なく生きてほしい。その為にも「彼女」は、オレが護るから。
もう一度、覚悟を決める。
溜めていた息を吐き出す。
この人生での「彼女」は、今までと少し違う気がする。前の人生を振り返って思う。
今回の「彼女」が「魔法」による対決を制し、自ら打ち勝ったのを見届ける。
姿の見えなくなった「彼女」のお兄さんについては申し訳ないが思う。
「やっと守れた。……約束を守ったよ。るりちゃん」
幼馴染だった彼女の為に。
弱い心をハッタリの強さで覆い隠し、自分を変えた。
大事な約束を、胸に抱えている。
見上げた空は、今までで一番明るく……沁みた。




