14 妹(兄視点)
オレはその日、自分の生い立ちを思い出した。
地面に膝をつく。
胸に妹を抱え、運命を呪っていた。
雪がちらつく十二月。夕方頃に仕事が終わり、現場近くのコンビニでコーヒーを買って飲もうとしていた。コンビニに行く手前に公園がある。通り抜けて近道をしようと考え足を踏み入れた。
前方のベンチに見た事ある奴がいる。……妹だ。
今日はクリスマスイブというのに。独り、公園で肉まんを食べている妹の行動が不自然に思える。旦那とケンカでもしたのか?
妹が唐突に立ち上がった。こちらとは反対の方へ行こうとしている様子だ。
直後、彼女は盛大に転んだ。恐らく地面が凍っていたのだろう。
仰向けに倒れている妹の側へ駆け寄った。
「大丈夫か?」
助け起こそうとした。頭を支えた時、手にぬるっとしたものが付いた。
――血だ。
震えた。
「嘘だろ? おい!」
必死に名を呼ぶ。応えがない。
背中を冷や汗が伝う。
その時、「奴」の気配を感じた。
近くに……いる。
妹の上半身を抱き起した格好で、注意深く目を凝らした。
オレたちの側には誰もいないように見える。でも確実に「いる」と分かる。
凄く懐かしい感覚に目の奥がジンとする。
姿の見えない「気配」は言った。
「久しぶりだね」
それまでの繰り返される人生に疲れ、忘れかけていた。
だが、声を聞いて確信した。
――父だ。




