みのり
「みのりちゃんはずるい!
ひかりはいぶきのお嫁さんになれないのに!」
今も忘れられないひかりの言葉。
幼なじみにして親友のひかりとは、生後数か月からの付き合いになる。
ひかりの双子のいぶきちゃんも交えて、小さい頃からいつも3人でまとまっていた。
私とひかりは気が合って、色々なものの好みも近くて……初恋相手も同じだった。
2人でいぶきちゃんを取り合って。
姉弟は結婚できないって知った時のひかりのショックはすごかった。
小さな女の子が、父親や兄と結婚したがるのは、割と一般的な話だ。
黒歴史にさえならない、とってもよくあること。
ひかりの場合、その相手が双子の弟だっただけで、一番身近な男の子なんだから、何の不思議もない。
ただ、大好きな相手が別の誰か──仲のいい友達──に取られてしまうというのは、ひかりに相当な絶望をもたらせたようで、ひかりは男の子全般に素っ気なくなった。
ショックを受けたひかりの様子を隣で見ていたいぶきちゃんは、ひかりをとっても大切に扱うようになって、いつの間にか私との間に少し距離を置くようになった。
あくまで、少し。
常にひかりを最優先するようになっただけで、私をないがしろにするわけじゃないけど、いぶきちゃんが遠くなっちゃったみたいに感じたのは間違いない。
ただ、ひかりはむしろ近くなったような気がする。
「応援する!」って言ってくれて、本当にずっと私といぶきちゃんの間に入ってくれてる。
小学校高学年になって、周りからからかわれるようになって、気恥ずかしさからいぶきちゃんに話しかけられなくなった私を助けてくれる。
今だって、私がいぶきちゃんの家に行きやすいよう、理由をくれてる。
ひかりのお母さんから料理を教わってるのも、そう。
いぶきちゃんの好きな料理を習って、作ったものを目の前で食べてもらえる。
私が習うって言っちゃうとバレバレになるから、ひかりの料理の練習に付き合ってるってことにしてくれて。
しかも、その後はお泊まりだ。
もちろん、おばさんとかもいるし、変なことはしないけど、小さい頃ならともかく、今だと同い年の男の子の家に泊まるなんて、普通なら無理だもの。
ひかりは、料理の間、ほとんど手を出さないで見てるだけ。
めっちゃ暇だと思うけど、名目がひかりの練習だから、いてもらわないわけにいかない。
時間を無駄にさせちゃって、悪いと思ってる。
おばさんは、私の気持ちとかには触れないで、淡々と料理を教えてくれる。
基本的なことを習ったら、私なりの工夫をしてごらんってことで、自由にさせてくれる。
自由っていうか、いぶきちゃんの食べる様子を見ながら、次はカスタマイズしなさいってことみたい。
ラブコメとかでよくある「うちの娘にならない?」って感じじゃなくて、好きなら自分でなんとかしなさいって感じかな。
カレーとかハンバーグとか、いぶきちゃんが好きなものは小さい頃から変わってない。
比較的簡単なものばかりで、料理初心者の私が作るにはありがたいけど、それでも難しくて。
カレーはともかく、ハンバーグを黒焦げにしたり、中が生焼けで焼き直しになったり(これはおばさんがチェックしてダメ出しされた)。
ちょっと残念なのは、“作ったのはひかり”ってなってること。
名前を使わせてもらってるんだから、文句なんか言えないんだけど、「私が作ったの」って言えないのは辛い。
いぶきちゃんに面と向かってそんなこと、私が言えるわけないんだけどさ。
さすがに今でもいぶきちゃんのこと好きってことはないと思うんだけど。
お泊まりの日は、昔みたいにいぶきちゃんとゲームができる。
ゲーム自体はどうでもいいけど、レースゲームだから、曲がる時とか体が動くんで、いぶきちゃんを真ん中にしておけば、私がぶつかっていっても不自然じゃない。
ひかりと2人で挟んでるから、いぶきちゃんは避ける先がなくてぶつかりやすい。
あと、罰ゲームにかこつけていぶきちゃんと触れ合えるのが嬉しい。
光が手伝って──というか、2人でいぶきの邪魔して、いぶきちゃんをビリにする。
で、腕とか揉んでもらうのだ。
手のひら揉まれてる時なんか、手を握られてる気分になる。
すっごく嬉しくて、めっちゃ照れる。
二の腕とか揉まれてる時なんか絶対顔真っ赤だと思うし、いぶきちゃんの顔見らんない。
ひかりなんか、肩まで揉んでもらってる。
うらやましい。
ひかりは「みのりもやってもらえばいいのに」とか言うけど、絶対無理! 心臓が爆発しちゃうよ!




