第十七話 正剛少将とのお出かけ3
母の着せ替え人形がやっと終わった。もう精魂尽き果てた僕は、初めのボクサー並みに白く燃え尽きていた。
それと違い、母はつやつやとした顔で、試着して気に入った服を買っていた。
そして、その行為を傍観者として見ていた正剛少将は、可哀そうな子を見る目で僕を見てきた。
そんな目線を送るぐらいなら助けてほしかった。
三者三様の状況に戸惑う店員さんに軽く例だけ言って僕たちは次の店に向かった。
「で、僕の用は終わりましたけど、どこに行くのですか?」
「次は、13番区だ」
「え?」
13番区と言えばこの大和の学園区と言われる場所だ。この都市にはB区の四隅に当たる場所に学園が存在する。R区にも同じような物はあるが、それよりも格式高い学園なのだ。その入学条件に超能力の有無もある。
もちろんの事、そんな場所だから何かを買ったりするような場所じゃない。本当に学園が集まった番区なのだ。
そんな所に今から行くとなれば驚くのも必然。もちろん驚きと言っても、何をしに行くんだ?と言う感じの驚きである。
「13番区って学園区ですよね?何しに行くんですか?」
「ん?いっておらんかったか?それはすまない。学園区には、超能力の練習に適した場所となる。そのため特別超能力育成に13番区に練習場を置いて居る。もちろん他の学園区にも同じような物がある。小僧がこれから通う場所にもなるのだ。一度は見ておいて損は無かろう?」
確かにそうだ。どんなところか気になってはいた。前々からネットを使って調べてはいた。しかし、まったくと言って情報が出てこなかったのだ。強いて出てきた情報と言えば、所属と活動名とその概要だけである。それ以外は全くと言って情報が無かった。
「確かにそれは気になります」
「そうか、なら行こうか」
来るときにも乗った豪華なリムジンに乗って13番区へ向かった。
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一つしか距離が無い13番区はめちゃくちゃ近い。距離にして2キロだ。歩いたらそこそこかかる距離でも車なら一瞬だ。
しかし、そんな短い距離でも、一つ番区の境界線をくぐれば、景色は一変する。先ほどまでは高いビル街と言った感じだったが、学園区に入ってからは、品のいいレンガつくりの学校と言った感じだ。みんなに分かりやすく言えば、高い私立高校の、お嬢様学校と言った感じだ。
そんな中をリムジンで走ると周りの生徒の目線を引いた。こんな学校でもリムジンは目立つらしい。
注目を引きながら校内を走る事3分で目的地に着いたようだ。リムジンが静かに停止すると、扉が開いた。
「ついたぞ。ああ、母の方は直接の関係者では無いから入る事は出来ない。ここで待っていてくれ」
「はい、分かりました」
そう母に言った。母は気を落とすどころかニコニコ漫勉の笑みだ。
なるべく見ない様にはしていたが、そのにやけきっている母を見る。それは買ったばかりの服を広げながらニヤニヤしている母の姿だった。
僕がげんなりしていると、正剛少将が先に降りた。僕もそれに続いて降りる。
母の言ってらっしゃいと言う言葉と共に車のドアが閉まった。
「なにこれ?」
降りて見えた光景はすごい物だった。
一言でいえば豆腐。そう豆腐だ。四角くて白い豆腐建築。こんな煉瓦作りの綺麗な学校には到底似合う様な建築物ではない。
「これが、訓練施設だ」
…まあ、まあ、まあ。一旦突っ込むことはやめておこう。もしかしたら、外見にはあまりコストを使っていないだとかの理由があるのかもしれない。
「随分と、、豆腐ですね」
「豆腐か?何とも面白いことを言うな」
「でも、この建物何というか、、場違いな気がするのですが…」
「それは、簡単だ。学校区は学問省の直轄で運営されている。この豆腐建築は防衛省の運営だ。だから、こんな見た目になっている」
なるほど。この何もない感じは軍人好みしそうだな。けれども、外観は周りの雰囲気に合わせてほしかったと思う。レンガ造りの建物の中に一つだけ豆腐建築があるのだ。違和感と言うか異物感がすごい。
「でも、この雰囲気ぶち壊し感はすごいですね」
「それは私も思っていたところだ。これはちょっとは外観に気を付けるべきだと思い知らされるな」
本当にそうだ。
そんな建物の外観を語りつつも、建物内に入っていった。
中に入ってもその武骨さは、相も変わらず残っている。一切飾り気のない白い廊下は、どっかの精神病棟の用だ。
そんな建物内を歩いてすぐに、一つの扉の前で正剛少将が立ち止まった。
「ここが超能力を練習できる部屋だ」
そういって正剛少将はカードをスキャナーにかざすと扉が開いた。
その開いた扉の先には…何もなかった。
そう、何もなかった。椅子も、机も、本当に何もなかった。
ただ、白いだけの部屋は、豆腐の中側に居る気分になる。
「なんですかこれ?ただの白い部屋では?」
「そうだ。だけども、ただの白い部屋では無いぞ。この部屋は天使の灰を使った特殊な健在で作られている。どれだけ超能力をぶっ放しても大丈夫な部屋だ」
なるほどね。それなら何もない部屋でも納得だ。
「小僧の様な再生超能力者はあまり使わない部屋かも知れないが、ここの建物にはこの部屋が合計10個ある」
10×10×10の正方形の部屋が10個あるそうだ。この廊下から見える扉はこの部屋の入口なのだろう。
「さて、次に行くぞ。次の場所は小僧がメインで使う場所になるだろうな」
そういって着いた一つの扉。先ほどとは違い、両開きの扉があった。
その扉の上には病室と書いてある。と、言うことは再生で人を治すのが僕の超能力練習と言う事か。
「ここが病室だ。…そんなに気負わなくてもいい」
僕の緊張した面持ちで察したらしい。
「この病室はこの施設で怪我をした人のためにある。めったに怪我人は来ないし、気負わなくてもいいぞ」
その言葉を聞いてほっとした。てっきり地獄絵図の様な場所で超能力を使うのだと思っていた。それが違うだけでも、一安心だ。
「ほら、早く入るぞ」
僕がほっと胸をなでおろしていると、すでに扉を開いていた正剛少将がいそかしてきた。
「はい」
駆け足で駆けようと、そこには…誰も居なかった。
「誰もいないですね」
「それはそうだ。この施設を使える人自体多くは無い。それに加えて、全員がこの施設を使っている訳では無い。さらに、その中で怪我をする人はごく少数だ」
なるほど。
…って、それってこの施設を使う意味ある?だって、超能力の訓練をする場所なんじゃないの?これじゃあ全く練習にならないよ?
「それって練習になるのですか?」
「もちろん、それだけではない。以来と言う形で機会を作る。もちろん依頼だからお金が出るぞ」
「ちなみに。おいくら」
「ん?気になるか?」
そりゃ、気になりますとも。
半年前に一応の金額は聞いてる。たしか100万ぐらいの金額だった。でも、あの時は最低金額と言っていたし、もっと高くなる事もある。そしたら母に恩返しのプレゼントでもしようかな。
「そうだなぁ。一概には言えないが、国の依頼ならば1人治すごとに100万だ。個人の依頼ならば上限なんてない」
「ひ、一人治すごとに100万って、本当ですか?」
「ん?安いと言いたいのか。まあ、そうだな、安いと言えば安いな」
え?正剛少将の感覚からしたら100万って安いの?まあ、あんな高級服を7着も買えるぐらいだからお金持ちなのは分かっていたが、100万が安いって感覚なのには驚きだ。僕からしたら到底分からない感覚だ。
「えっと、その逆で…高い」
「…そう言うことか。小僧は一人100万が高いと思っておるのか?なるほど、なるほど。確かに一般人の感覚から言えば100万は高いわな。でもな小僧、考えてもみい。どんなに重傷を負った人間も、治療期間なしで回復できるのだ。その分の人件費や薬代が無い分安上がりなほどだ」
なるほどそう考えれば、安いのか?まあ、安いか。
確かに、優秀な超能力者を即座に全線に復帰させれる超能力が100万だと考えれば安いのだろう。(個人単位ではなく、国単位で言えば)
でも、ちょっと納得した。法外な金額じゃ無いことに。
まあ、それでも高い金額である事に変わりは無いのだけども。
「どうだ、納得したか?」
「はい、ありがとうございます」
そんな会話をしていたら、閉じていたはずの病室の扉が開いた。
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※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。