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「ゴリラが檻を破壊したころ、俺はやっと体に戻れったってわけだ。それから長い事寝ていたから体がこわばって動けなくて大変だった」


 ため息をついて言うクラウスにアメリアは頷く。


「ありがとう。でも、反対派?の騎士達が沢山いたでしょう?どうなったの?」


 所々で赤い布を腕に巻いている騎士達を思い出す。

 アメリアが聞くと、ベイツは肩をすくめた。


「そこからが俺達の腕の見せ所ってやつよ。檻をぶち破った俺達は忍びながら反対派の騎士達を拘束しつつ、閉じ込められていた部下を解放して行った。バスティア王子も閉じもめられていたから直ぐに開放して指揮をとらせたらあっという間に俺達が優勢になっていったんだ。ま、当たり前だよな。俺達は最強だから。レスティノの部隊にやられるわけない」


 ベイツは大声でガッハッハと笑うとクラウスが話を引き継ぐ。


「明け方頃にやっと俺は体が動かせるようになったから城へ来た。すでにゴリラ男達が反対派を密かに抑え込んでいたんだ。レスティノはそれに気づかず、ビオナ姫とお前を連れて処刑なんて始めやがったから俺達が包囲をして、阻止したってわけだ」


「なるほど?」


 何となく理解はできたが、首を傾げているアメリアの頭をアーサーは乱暴に撫でた。


「バカなお前には難しい話は無理だろう。とりあえず、ゆっくり休め」


「……そうね。ねぇ、ここってお城よね?家に帰りたいわ」


 窓の外から見える景色にアメリアが嘆くとアーサーは軽く首を振った。


「まだ無理だ。城に滞在していた方がいい、怪我の具合をすぐに医者に診てもらえる。それに、お前からも話を聞かなければならんからな」


「えー。私、何を答えればいいの?」


 生霊になったことを言ってもいいのだろうかとチラリと視線を送るとクラウスは頷いた。


「もう、みんな知っているよ。俺が瀕死の重傷になってお前に付きまとっていたってな」


 なぜか不機嫌そうに言うクラウスにベイツは大笑いをしている。


「牢屋に入れられていたヤツらが噂を流したんだよ。死にそうになったクラウスが幽霊になってまで好きな女に取り憑いていて離れなかったって言って回っていたからな!それもクーデターが行われている最中なのに!」


「なぜか、ビオナ姫やアリッサム王子の状況より俺の幽霊になってまで好きな女に取り憑いている噂の方が早く回っていたからな!」


 舌打ちをしているクラウスが面白くてアメリアは思わず吹き出して笑ってしまう。

 取り憑いて離れなかったのは本当の話だ。


「冷静沈着の騎士のイメージが台無しね」


 アメリアが言うとベイツは首を振った。


「んなもん、クラウスにいいイメージを持っているのは一部の侍女たちだけだ。ほとんどのやつは口うるせぇねちっこいめんどくせぇ潔癖症だって知っているよ」


「ねちっこいは余計だろおっさん!」


 ベイツは揶揄うようにイライラしているクラウスを見下ろす。


「女たちはおめぇが幽霊になって女の体を乗っ取って動かしたことが本当に気持ち悪いって噂しているぞ」


 アメリアはハッとしてベイツを見上げた。


「姫様は今どうしていますか?」


「気落ちしているが、無事に過ごしているよ。アリッサム王子はまだ城に滞在中。来週にはクエール王国から偉い人がわんさか来て、お話合いがある予定だ」


 あー嫌だと呟きながらベイツは乱暴に頭をかく。


「アダン王子とレスティノは取り調べ中、残念なことにあいつらも体はピンピンしているよ。反対派の騎士達も逮捕された」


 クラウスが言うとレスティノとアーサーは頷いた。


「とりあえず、お前はゆっくり休め」


 アーサーに言われてアメリアは頷く。


 クラウスも立ち上がるとアメリアの頭を撫でた。


「何かあったら直ぐ俺かゴリラ男を呼んでくれ」


「ありがとう」


 アメリアが頷くのを見てクラウス達は部屋を出て行った。

 

 静かになった部屋を見回してアメリアはため息をつく。


「色々なことがありすぎて、頭がパンクしそう」


 クラウスが幽霊になってから怒涛の日々だった。


 浮かれて参加したパーティは結局最悪の状況になってしまったしとアメリアはもう一度ため息をつく。


 先ほど飲んだ薬の影響で痛みは無いが、代わりに眠気が襲ってきた。


 ベッドへ横になりながら窓の外を見る。

 今日も雲1つない綺麗な青空が広がっている。


 「ビオナ姫はどうしているのかしら」


 最後に彼女を見たのは、練習場で青白い顔をしていた。

 アリッサム王子とビオナ姫は本当の恋愛をしていたらいいなと天井を見ながら目を瞑る。


 (そっか、私もクラウスと両想いになったのか)


 先ほどのクラウスとのやり取りを思い出してアメリアは閉じていた目を見開いた。


 「私がクラウスと両想いですって!そんなことある?」


 大きな声を出して悶絶する。

 

 クラウスだけはあり得ないと思っていたのに一緒に過ごすうち好きになった。


 まさか彼もそう思っていたなんて。


 アメリアは布団を顔まで上げてもう一度叫んだ。


「ありえないわ!きっと夢、夢なのよ」


 そうに違いないと思って早く寝ようと目を瞑った。


 

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