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「牢屋に入れられたぐらいで落ち込むかい」


 アメリアの姿をしたクラウスが言うとレスティノは嬉しそうだ。


「まぁ、もうすぐ効いてくるころだと思うよ」


「はぁ?」


 何を言っているんだという顔をしていたアメリアの体が傾いた。

 力を入れようと踏ん張るが上手く体が動かせず冷たい床へと座り込んでしまう。


『ど、どうしたの?』


 体を動かすことが出来ないアメリアが聞くとクラウスは辛そうに答えた。


「体が動かない。痺れている、息をするのもやっとだ」


 息を切らしながらクラウスが言うとレスティノは嬉しそうに見つめている。


「よかった。やっと効いたみたいだ。クラウスと同じ薬の種類だけれど、量を多くしておいたんだ。君、なんか変だったからね」


「変って失礼だな」


 辛そうな顔をして座り込んでいるアメリアの姿をしたクラウスはレスティノを睨みつけた。

 

「その目だよ。とても素人がする目ではない。そして、身体能力。お前、訓練された殺し屋か?」


「はぁ?」

『はぁ?』


 アメリアとクラウスは同時に驚いた。


 力が入らず床に座ったままのアメリアを見下ろしたままレスティノは満足そうに微笑んでいる。


「殺し屋かスパイかどっちでも、もう構わないが……。そうなるとアーサーが育てたことになるな。お前らはビオナ姫とつるんで我が国をクエール王国に売るつもりだっただろう」


「バカな妹が殺し屋なわけないだろう。こいつは引きこもりだぞ」


 呆れた様子のアーサーの声が聞こえてきたが、レスティノは肩をすくめるだけだ。


「訓練を受けた騎士二人を投げ飛ばしたり、剣を持った相手から逃げられる女性を普通とは言わないだろうね」


『クラウスのせいだ!』


 妙な容疑を掛けられとアメリアは怒ったがクラウスは舌打ちをしてレスティノを睨みつける。


「どうするつもりだ」


「我が国を売った罪を償うべきだ。可哀想だけれど、直ぐに仲間も同じと所に行くから寂しくはない」


 まるでこの世から消されるようないい方だ。

 レスティノは笑みを浮かべたままゆっくりとアメリアが入れられている牢屋の鍵を開けた。

 ギィとさび付いた音を立て扉が開き力なく座っているアメリアの腕を掴んで引き上げる。


「何をする……」


 アメリアの中に入ったままのクラウスが言うが舌さえも痺れていう事がきかなない。

 ろれつが回らない口調で言うアメリアの足をレスティノは力強く蹴り飛ばした。


「グッ」


 痛みで顔を歪ませるアメリアの足を踏みつけてレスティノは笑みを絶やさずに言った。


「逃げられては困るからね。それと、反抗されても困る」


 そう言うと腕をギュッとねじ上げた。

 足も手も折れてはいなないが、痛みで声が漏れる。


「いてぇな!でも骨は折れてない」


 体の中に入っているアメリアに言い聞かせるように言うクラウス。

 その顔をレスティノは殴りつけると面白そうに笑っていアメリアを見つめた。


「我が国を裏切る者は死だけだ。薬が効いてきたようだね」


「どうやら、薬を盛られたようだな。思い当たるのはベネッサが渡してきたグラスに入っていたか……」


『パーティーの時に渡してきたわね。怪しいと思っていたのよ』


 嫉妬で怒っていたベネッサが急に友好的になったのはクスリを入れた飲み物をの飲ませるためだったのかとアメリアは納得する。


「そうだろうな」


 呟くアメリアの姿をしたクラウスにレスティノは笑みを絶やさず肩をすくめた。


「妹は関係ない、薬すら知らない。同胞は沢山いるのだよ、この城の中にはね」


「クソッ。味方と敵の区別がつかねぇな」


 ベイツが鉄の柵を叩きながら言うとレスティノは嬉しそうだ。


「クエール王国と手を組むのも我慢ならないが、なによりこの国を明け渡すことは許せない」


「何を妄想している。俺達がそんなことをするわけがないだろう」

 

 ベイツが叫ぶがレスティノの表情は変わらない。


「お前たちがビオナ姫と組んでいたことも知っている。ビオナ姫はバスティア王子すら取り込んでいると思われる。でなければ、クエール王国と友好の式典など開くものか。今度こそ戦を起しクエール王国に勝利する時が来たのだ」



「バカか!その前に我が国が亡ぶだろう。身内がごたごたしている場合じゃないだろう。プラバード王が亡くなったのなら他にやることがあるだろうが」


 怒りに満ちたベイツの声の方向をレスティノはチラリと視線を向ける。


「今だからこそだ。アダン王子こそ王にふさわしい。その前に膿を出さないといけない。まずはお前からだ」


 そう言うとアメリアの腕を引っ張って無理やり立たせると背中の服を掴んで物を持つようにして部屋から引きずり出した。

 そのままアメリアの体を引きずって歩きだす。


「クソッ。一度、俺はここから出るからお前は耐えろ」


 体の自由が効かないまま、クラウスが小さく呟くとアメリアの視界がブレる。

 一瞬後、体中に痛みが走りアメリアは悲鳴を上げた。


「痛い……」


 足も痛いが、殴られた顔が特に痛み感じアメリアの目から涙が零れ落ちる。

 叫びたいほど顔が痛いが薬の影響からか呂律が回らず上手う言葉にできない。

 ぐぐもった声をを出すアメリアを見下ろしてレスティノは見下ろす。


「急に泣き叫んでも、罪は罪だ」


「私は、何もしていないわ」


 ろれつが回らないまま痛みを訴えていると心配そうなクラウスの瞳と目が合った。

 すぐ近くまで近づいてくると頭を撫でるしぐさをする。


『大丈夫だ。少し耐えてくれ』


 無理だと首を振るアメリアの頬をクラウスは両手で包み込む。


『直ぐに助けに来るから!俺を信じて待っていてくれ!』


「本当?」


 痛みと薬の影響から意識がもうろうとしているアメリアにクラウスは力強く頷いた。


『信じてくれ。俺は必ず助けに来る。それまで耐えてくれ』


 クラウスの黒い瞳と目が合う。

 じっと見つめられてアメリアはゆっくりと頷いた。


(きっとクラウスが助けてくれる)


 痛みで意識が遠のく中、クラウスの”俺を信じてくれ” という声が聞こえた。



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