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 アメリア姿のクラウスが声を荒げると、会場内はシンと静まり返る。


 物音1つしない広い会場内にアメリアの姿をしたクラウスの声が響いた。


「お前の一存で決めているのか?」


 ドスの効いたアメリアの言い方にレスティノは驚いて拘束しようとしていた手を緩めた。

 その隙に手を引き抜いてアメリアの姿をしたクラウスはレスティノから後ろ飛びで離れ距離を取る。


「俺の一存の訳が無いだろう」


 何が面白いのかレスティノは笑みを浮かべて視線を会場の入口へ向けた。

 つられてクラウスも入口を見ると黒い騎士服を着た人が数人入ってくるのが見えた。


「俺を捕まえるだけにしては人数が多くないか?」


「”俺”?」


 レスティノはアメリアの姿をしたクラウスの口調に疑問を感じたようだが笑みを浮かべたまま剣を抜いた。


「アダン王子の命令だ! 我々はシリガリア王国との友好的な調印に反対をする!」


 大きな声で宣言をするレスティノにクラウスは舌打ちをした。


「そういうことか」


 小さく呟くクラウスにアメリアは混乱する。


『どういうこと?』


「アダン王子は反王国派だったんだ。お互いが歩み寄る調印式に納得がいかなかったんだろうな。だからと言って護衛騎士達が動くとは……」


 小さく呟きながらクラウスは入口から入ってくる騎士達を見つめる。

 

「俺が見る限り、アダン王子の護衛騎士と他にも騎士が混じっているな」


 呆気に取られている会場内に居た警備の騎士達が拘束されていく。

 

『どうしてみんな反抗しないのよ』


 反勢力派など知ったことではない。

 無抵抗に拘束されていく騎士達を見てアメリアは不満の声を上げた。


「そりゃ、自分の隊長の命令が無いと動けない。ついでに言えば隊長クラスでさえバスティア王子の命令がないとどうしていいか分からんって言う感じだな」


『どうしていいか分からないって馬鹿なの?』


 少しは自分で考えて動いてほしいと思いながらアメリアが叫ぶとクラウスはもっともだと頷く。

 その様子を見ていたレスティノは面白そうに声を上げて笑い始めた。


「報告にもあったけれど、アメリアちゃんちょっと頭おかしいの?それともクラウスが刺されて可笑しくなっちゃったの?」


 一人で話しているアメリアを頭が可笑しい人だと認定している様子にクラウスはイライラしながら偉そうに口の端を上げて笑い返す。


「頭が可笑しいのはお前の方だろう。主であるアラン王子の命令にただ従うのか?これで戦争にでもなったらどうするんだ」


「今度こそ我が国が勝つと思う」


 顔色1つ変えず言うレスティノにクラウスは舌打をする。


「そんなわけないだろう」


『ど、どうしよう。私どうなるの?』


 ポケットの中の手紙が見付かったらどうなるのだろうかと不安でいっぱいになりながら混乱しているアメリアが聞く。

 クラウスはそれどころではないと唇を噛んだ。


「やばいぞ。このままこいつらに屈してたら国が亡ぶぞ」


「口が悪いねぇ、アメリアちゃん。我が国は亡ぶはずがない。クエール王国を取り込んで大きくなるんだ。腰抜けのバスティア王子よりアダン王子が王にふさわしい」


 悦に浸りながら言うレスティノに意味が解らないとクラウスは眉をひそめる。


「どちらもまだ王になっていないだろう。現在の王はどうした」


『そうよ!今はブラバード王が一番偉いのよ!病弱で寝込んでいるけれど』


 アメリアもクラウスの中で叫ぶ。


「ブラバード王は先ほど亡くなった」


 顔色1つ変えずに言うレスティノにクラウスは目を見開いた。


「お前ら、まさか……」


「誤解しないでほしいな。俺達は手を下していない。神に誓って言うよ、病死だ。王が亡くなったことにより、アダン王子は自分こそ王にふさわしいとお考えになった。俺達はそれに従ったまでだ」


「それを本気で思っているのならお前かなりやばいぞ」


「どうかな?今、ヤバイ状況なのは君だろう。口調が悪いアメリアちゃん」


 レスティノは人のよさそうな笑みを浮かべてアメリアのポケットに手を入れようとする。

 

「何をするんだ!てめぇ、女性の服に手を入れるな」


「本当に口が悪いね。まるでクラウスが乗り移ったようだよ」


 クラウスが避けようとしてもレスティノの手が素早くポケットに入り小さな手紙を取って行った。


「これが証拠だ。王子とどういう関係だったかは後々問いただそう」


 満足そうに言うとレスティノは部下に視線を送る。

 気配を消して背後に居たラスティノの部下たちが二人係でアメリアの腕を掴んで拘束しようとする。


「なにするんだ!」


 条件反射でアメリアの姿をしたクラウスは男達の手を掴むとそのまま勢いよく回した。

 ドレス姿の引きこもりの女が反撃してくると思わず、拘束しようとしていた男達は宙を舞い床の上に背中から着地する。


「すげぇ。何?一体何が起こっているの?」


 静かに様子を見ていた人々の合間からカールの声が響いた。

 入口から頭だけを出して室内の様子を見ているカールを振り返ってクラウスは大きな声を出した。


「カール!どうなっているんだ!」


「えぇぇ……。アメリアさん?なに?僕、さっぱりわからないんですけれどぉ」


 混乱しているようで、カールはオドオドしながら入口から顔だけ出して入ってこようとしない。

 アメリアの変わり様に驚いて不安そうに体を震わせている。


「しゃきっとしろ!てめぇ、それでもビオナ姫の護衛騎士か!」


 アメリアの姿をしたクラウスが怒鳴るとカールは何度も瞬きをして訝しむ顔をした。


「そのいい方まるでクラウス先輩のようですね」


「そんなことはいいから、さっさと現状報告しろ!」


「僕もよくわからないですぅ。騎士の控室に行ったら先輩たちがどんどん拘束されてしまってゴリラ隊長も居ないし。助けを求めてパーティー会場に来たらよくわからない状況になっているし」


 今にも泣きだしそうなカールにクラウスは舌打ちをする。


「クソッ。どうすりゃいいんだ」


「大人しく捕まるのがいいと思うよ」


 レスティノはそう言うと抵抗する間もなくアメリアを足払いをする。

 バランスを崩したアメリアの体はそのままレスティノに拘束された。

 両腕を掴まれて後ろ手にされる。


「くそ。放せ」


 悪態をつくアメリアの体をしたクラウスにレスティノは肩をすくめた。


「本当に口が悪いなぁ。クラウスは本当に君に惚れていたのか?」


 拘束を外そうと暴れるアメリアだが、男のレスティノに叶うはずがない。

 入口に立っていたカールを見ると、彼も両腕を掴まれて泣きそうな顔をしている。


「うわーん。どうして僕が拘束されるんですかぁ。何もしていないのに!僕は真面目に働いていただけですよぉ」


「ビオナ姫に近い騎士達は信用をしていない。とりあえず大人しくしていてもらおう」


 レスティノはそう言うとアメリアに向かってほほ笑んだ。





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