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「疲れた……」
ビオナ姫とお茶会が終わり、やっとこさ自室に帰って来たアメリアは大きく伸びをした。
緊張していたせいで肩が凝り大きく回す。
『俺を刺したやつはビオナ姫とアリッサム王子の仲を知っているという事か?』
クラウスは当たり前のように難しい顔をしてアメリアの部屋に立っている。
クラウスが部屋に居ることは慣れたとはいえ、アメリアの目にはとても霊体とは思えないほどリアルだ。
「反対派の人達かもしれないわね。でも、クラウスを恨んでいる女性の線を捨てたわけじゃないわよ私は」
『何回も言うが俺に好意がある女性が多すぎて一方的に想われていたら見当もつかない!それに恨みを持たれることはしていない』
「よく言うわ。でも、クラウスがモテているっていうのは本当だったのね。私みたいなのが相手で女性達はガッカリしていたようね」
アメリアは呆れつつも、城へ行ったときに侍女達が自分を見てクラウスがあんな女を相手にしているなんてという陰口を聞いたことを思い出した。
『城の女性たちはプライドが高いからな。お前は見た目だけは可愛いが中身がなぁ……だらしなさ過ぎる』
見た目が可愛いと言われて嬉しくなったアメリアは満面の笑みをクラウスに向けた。
「可愛いって言った?」
期待を込めた目で見られてクラウスはたじろぎながら嫌々という様子で頷く。
『かわいいんじゃないのか?ゴリラ男の妹にしてはな!』
「そりゃ、お兄様に似ているって言われたらショックで寝込むわよ。見た目が可愛いならいいじゃない。中身なんて誰も見えないわよ。お城に居る女性達は分かりゃしないわよ」
さばさばというアメリアにクラウスは関心して見下ろした。
『お前のその性格も凄いよな。普通、同性に陰口を言われたら傷ついたりするもんじゃないのか?』
「別に、気にしないわ。言わせておけばいいのよ。それよりも私は売れる小説を書くことが目標だから!そうだ、今度パールおば様にコツを聞こうかしら」
『その前に俺をどうにかしてくれ。元の体に戻って俺を刺したやつと悪口を言った同僚をぶん殴らないといけないから』
イライラした様子のクラウスにアメリアは視線を向ける。
悪口を言われたことを思い出したのか唇を噛んでいるのを見てアメリアは肩をすくめた。
「根に持つわね。クラウスの性格が悪いのは真実じゃない」
『お前なぁ!少しは俺に協力してくれ。俺は一人で何もできないんだ』
困った様子のクラウスにアメリアは頷く。
「ずいぶん協力しているわよ。だって、なぜか知らないけれどクラウスと私は久しぶりに出会って付き合っていることになっているのよ!そしてビオナ姫様の恋の協力をすることになってしまったし」
『俺が体に戻ることと何も関係ないだろう』
「……それもそうね」
クラウスの言葉にアメリアは頷いた。
「ねぇ、もしかして何も進展していないじゃない。クラウスはどうしたら元に戻るのかしら」
アメリアに言われてクラウスはイライラしながら睨みつけた。
『俺が一番知りたいよ!』
一方的に怒っているクラウスにアメリアはため息をついた。
イライラするのは分かるが、それをこっちにぶつけないでほしい。
「そもそも、クラウスだって努力しているの?ずーっと私に張り付いているじゃない」
『何度も自分の体に戻れるか試しているよ!』
「いつ?」
アメリアが記憶する限りクラウスはずっと傍に居る。
クラウスは腕を組んで天井を見上げた。
『お前が寝ている間。家に戻って自分の体に戻れないか毎晩試しているよ』
「そうだったの?」
驚くアメリアにクラウスは目を伏せた。
『お前が寝ている間暇なんだよ。眠気も食欲も無いしな』
「霊体って便利なのか不便なのか分からないわね」
寂しそうな表情のクラウスにアメリアは同情しながら頷く。
(確かに誰も見えないし、話すこともできないと辛いかもしれないわね)
「私以外誰にも見えないのだから、そっと城に行って調べてくればいいじゃない。誰が犯人か」
『城に行ったってみんな普通に仕事しているだけだ』
呆れたように言うクラウスにアメリアは肩をすくめる。
「解らないじゃない。クラウスがまだ生きている、早く殺さないととか言っている人が居るかもしれないし。怪しい女性が居るかもしれないわよ」
『そんな話を城でしている阿呆が居るはずないだろう』
クラウスの言葉に確かにそうかとアメリアも頷く。
「それもそうね。しかしどうしたらいいのかしら。これ以上クラウスが私に取りついていたら最悪じゃない。私の人生が終わってしまうわ」
『大袈裟な。俺の人生が最初に終ったらどうするんだ!』
「まぁ、ご愁傷様って感じかしらね」
そう言ってアメリアはクラウスを見上げた。
完璧な美しい顔が自分を見下ろしていてじっくり見ていると不思議と胸が高鳴ってくる。
(ちょっと待って、クラウスってこんなに綺麗な顔をしていたっけ)
今まで何とも思っていなかったクラウスを急に異性として意識をしてしまう。
霊体だから何とも思っていなかったがよく見ると物語の騎士よりも美しいのではないか。
切れ長の黒い瞳に長いまつ毛、黒い瞳は霊体の為か薄暗い。
それでも人一倍美しいと思うとよく今まで一緒の部屋に居られたものだとアメリアは大きく気を吸って早鐘を打つ心臓を落ち着かせる。
(あいつは昔私の事をゴミを見る目で見た男よ!)
呪文のように何度も繰り返して心を落ち着かせた。
それでも一度意識してしまうともうクラウスを何と思っていなかったころには戻れず、アメリアの顔が赤くなっていく。
『お前、熱でもあるんじゃないのか?顔が赤いぞ』
心配するクラウスにアメリアは首を振った。
「なんでもないわ!気にしないで!」
(よく考えたら私の理想の異性なのよ)
”騎士と姫”を愛読しているアメリアはクラウスそっくりな騎士が初恋と言ってもいいほど好きなのだ。
物語の騎士と同じ顔をしているが性格が反対のクラウスには死んでも恋はしないだろうと思っていたがなぜか胸が高鳴る。
(一体どこで好きになったの?全く分からないわ)
クラウスにわからないようにアメリアは一人頭を抱えた。




