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2. 林檎ジャム

その頃、城では出来上がった林檎ジャムが王へと届けられたようでメイドとともに二階にある部屋へと移動していった。

天蓋の付いたキングサイズベッドには真紅の髪の青年が左腕を目元に当て、苦しげに呼吸を繰り返している。

その横にいるスーツ姿の男性は彼の右手で脈を測っているようだ。


「様子はどうだ。」


「少し落ち着かれましたよ。」


「グラディオ、林檎ジャムを用意させたが食べられそうか?」


そう声をかけると軽く頷き、起き上がる。

精巧な人形のような整った顔立ちだが、左の額から頬にかけてできた傷跡。

右の瞳は綺麗な紫水晶だが、左の瞳は色を無くしてしまっていた。

その姿に内心辛くなるのを抑えながら、メイドにサイドテーブルへ林檎ジャムを置かせれば無言のまま口に含む。


「どうだ?」


「少し違うけど…美味しい。それは?」


「こちらは林檎の皮だけで作ったジャムだそうです。」


「…それも食べる。」


グラディオのその言葉で準備されたそれは皮だけというだけあって形が残っているようだが、黄色みのあるそれはたしかに美味しそうだ。

一口含むと彼の表情が変わるのを感じる。


「これ、誰が作ったの。」


「新しく配属されたメイドが作ったものですが…何か粗相でも?」


「父上も食べてみたらわかるよ。」


促されるまま口に含むとその懐かしさに瞳が潤んでいった。


「…イレーニアの作っていたジャムと同じ味だ。そのメイドを連れてきてくれ。」


王に指示を受けて連れてきたメイドは緊張しているのか小さく縮こまりながら頭を下げていた。


「あのジャムは君が作ったの?」


「じ、実はあれは私が作ったものではありません。」


「どういうこと?」


「城下町にある果物屋のレノア・オルコットという方に作っていただいたものなんです…。私の作るものではお気に召されるものが出来ず、お願いいたしました。」


「そう。父上、レノアという女性を…。」


「そうだな。ハロルド。」


「お呼びですか。」


扉に立っていた騎士の一人で金髪蒼眼の男性が王の元へと歩み寄ってくる。


「ジョアンナと一緒にその果物屋に行ってきてくれ。」


「かしこまりました。」


無表情の彼はジョアンナを連れ、部屋を後にした。


「顔色、少しは改善したようだな。」


「すごく懐かしくて痛みはどっか飛んでったよ。」


窓の外に視線を向けながらジャムをもう一口を含むのだった。

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