2日め(火曜日)
「2年A組の向井翔平ってヤツはどいつだ、ゴルアァッ!」
次の日も、リーゼント頭の特攻服男が教室に現れた。
っていうか、昨日会ったよね?
リーゼント頭は物覚えが悪いのか
「テメエか? おう? テメエか?」
と、目に付く男子に片っ端から声をかけている。
「あ、あの……。向井翔平は僕です」
昨日が昨日だったので、自ら名乗り出た。
するとリーゼント頭が「おおん?」とメンチを切りながら僕の前にやってきた。
「テメェか! 向井翔平ってやつは!」
「は、はい。……ていうか、昨日も会いましたよね?」
リーゼント頭は僕の言葉など聞きもせず、またもや廊下に向かって声をかけた。
「姐さん! いやしたぜ!」
すると廊下からまたもや特攻服を着た女の人が現れた。
「そうかい」
ええー……。
この演出、2回目なんですけど……。
「翔平。昨日は驚かせて悪かったね」
特攻服女はそう言ってゆっくり近づいて来る。
よかった、この人は覚えててくれてた。
「今日はね、あんたに用があってきたんだよ」
「用?」
瞬時にまわりのクラスメイトたちが一気にざわつく。
「なになに? 向井くん、またなんかやらかしたの?」という声があちこちから聞こえてくる。
いやー、僕にもわからないんですけどー……。
そんな中、特攻服女は僕の前に立つと少し大きめの風呂敷包みを差し出してきた。
「これ受け取ってくれるかい?」
「……なんですか、これ?」
「あたい特製のお弁当さ。あんたのために作ってきたんだ」
「お、お弁当?」
「弟を交番に届けてくれた礼だよ」
迷子の子を届けたお礼にお弁当って……。
大丈夫? なんかヤバイものとか入ってない?
でもよく見ると、彼女の指にところどころ包帯が巻かれていてちょっと痛々しかった。
「ど、どうも……」
断れるわけもなく、僕は包帯まみれのその手からお弁当を受け取った。
特攻服女はまたしばらく僕をじっと見つめたあと、「じゃあね」と言って帰って行った。
瞬時に「だああぁ」とため息をつくクラスメイトたち。
息がつまるとはまさにこの事か。
あまりの展開に
「翔平、おま、あの女の人とどういう関係?」
とまで聞かれてしまった。
いや、ほんともう僕にも何がなんだかわからないです。
~告白されるまであと28日~