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あの人の背中。

作者: 由水恵子

 私は夫を何度も殺したことがある。

 もちろん、心の中でだ。

 たぶん、世の中の既婚女性のほとんどはそんな経験があるんじゃないだろうか。

 死ね! と思ったことも数知れず、離婚してやる! と思ったことも何百回だってある。だけど、それは現実になることがなく今に至って気が付いたら20年経っていた。

 それを、モラハラと言うのだと知ったのは今から10年前。

 結婚してから、夫は私の少しの言動に怒って、無視をする。作った料理を一切食べない。料理が気に入らなければ、ひとくち食べて終わり。味付けが気に入らなければ、「鍋に戻して味付け変えて」そんなことを平気で言った。

 その頃の私はまだ図太くなくて、無視されるたびに「何が悪かったんだろう…」と気に病んで、ストレスがたまり、夫の言動ひとつひとつにびくびくしていた。

 結婚するまでは言われなかったのに、「ブス。デブ。お前は頭が悪い」そんなこと散々夫に言われるうちに、私は自尊感情がだんだん失われてとても卑屈になっていった。

 結婚10年目の記念日に、いつもと同じように理不尽に夫から罵られ、私は泣きながら「浮気してやる!」となぜか思った。

 女として見てもらえない。人間としても、頑張っても頑張っても否定される。そんな日々に疲れ果てていたから。今思えば、そこで離婚と言う選択を選ばなかったのは、子供がいたり、自分に生活力がなかったり。色々な理由があるんだけれど、気が付いたらネットのサイトに登録していた。

 今ならインスタなり、Twitterで簡単に出会いはころがっているんだろうけれど、その時はサイトに登録するぐらいしかすべがなくて、かたっぱしから登録してみた。

 「36歳。アラフォー主婦です。友達以上恋人未満のお友達探しています」

そんなプロフィール文を書いたと思う。夫に満たされないものを外で満たす。そんな軽い気持ちだった。

 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすくて、するすると終わりまで読めてしまいました(^^) 続きが気になります! これから先、物語はどうなっていくんだろう……(わくわく)。
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