付き合ってください
前書いてたやつをちょいいじっただけ
「先輩、付き合ってください!」
「嫌だ」
後輩の愛の告白、そう思うやつが多くいることだろう。
だが俺は知っている。コイツの戯言に、少しでも反応を示せばからかわれることを。
「嫌って……そこ、普通はえ、ええ!?つ、つつつ、付き合うぅ!?とか反応するとこでしょー?」
つまんないのー、と悪態をつく後輩の頭を人差し指でつつく。
「俺のこと、好きでもない癖してなに言ってんだよ。んで、どこに付き合えばいいんだ?」
付き合う、それはつまりどこかへ行くのに付き合えということだ。
今までコイツとは、なんども色んな場所に遊びに行っている。
「好きでもないって、私は先輩のこと、結構好きですよー?」
からかうような笑みで俺を見上げる。こんなのに舐められているという事実に、実にイラつく。
「嘘こけ。ほらさっさと行くぞ」
好きなら、一々からかってきたり、おちょくったりしない。そんなことしては逆効果なのだから。
「ほーんと、容赦ないですねー先輩。モテませんよ?」
「モテたいわけじゃねぇんだよ。大体、俺のこと好きな奴なんているわけないだろ」
「いるかもしれませんよー?身近にぃー」
その言葉にチラリと後輩を見る。
……ま、コイツは俺のこと嫌ってそうだけどな。ウザ絡みしてくるし。
「おやおやぁ?今私を見ましたよねぇ?期待しちゃったりしてますかぁ?」
「してねぇよ。お前俺のこと嫌ってんだろ」
「そんなわけないじゃないですかー」
その間延びした口調で言われても説得力ないけどな。
「……嫌ってたら、誘ったりしませんよ」
「あ?ああ、荷物持ちとして誘ってるってことか」
小声でごにょごにょ言ってるが、聞こえてるからな。
嫌ってはない。なら便利だから誘ってるってことかな、と一人で納得する。
「いえ、そういうわけじゃ……ていうかなんで聞こえてるんですか!」
「口に出す方が悪い。てかおい、マジで時間ないぞ。どっか行くんだろ?」
「む、むむむぅ……あーはいはい!じゃ、行きましょ!」
なぜか怒っている後輩が俺の横腹を肘で突いた。
「いって」
「痛くない!ほら!行きますよもう!」
いや、普通に痛かったんだが……。
はぁ、とため息が自然と漏れた。
俺は口であーだこーだ言っているが、なんだかんだ後輩と遊びに行くのを楽しんでいる気がする、いや楽しんでいる。
「? なんですか?先輩」
整った顔をキョトンとさせて俺の顔を見る。
「なんでもない。行くぞ」
「そうですか。あ、今日はですね!このアイス食べてみたくて……」
まぁ、コイツが俺に飽きるまでは、せいぜい付き合ってやるとしよう。
それまでは、俺も楽しませてもらうとするかな。