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第二話 嫉妬

 今日も変わらず、僕は片道1時間かかる学校へと向かう。

 落葉舞う通学路を走りながら、駅を目指す。

 満員電車に揺られ、行くだけでも疲れる距離だ。

 学校に着くと、靴を履き替え3階まで駆け上る。

 そして、3-1の教室へと入った。

 席に着くなりカバンを置いて、机に顔を伏せ眠る。


「おいおいまた寝てるのかよ西園正輝くーん。お前の寝付く速度は、某ネコ型ロボットの主人公と競えるぞ」

 こうやってからかってくるのは、同じクラスの枝野康二。

 小学校から今の高校に至るまでずっと一緒である。

 昔っから恰幅のよい体つきで、温厚な性格だ。


「うるさい、寝かせろ」

「志望校受かった人は気楽でいいですねー。イケメンは顔パスで行けるってものか」

 なんだよ、嫌味かい。

 俺は、指定校推薦でD大学の理工学部に合格した。

 だが、彼は一般受験でT大学の工学部に行こうとしているので、まだ先のことである。

 でも、偏差値でいったら俺とは雲泥の差だ。もちろん、彼の方が高い。

「枝野は勉強してろよ。しっしっ」

「全く、冷たいやつだな」

 いじけながらも席に付き、俗にいう『赤本』を解いていた。


 この高校は、公立の中でも工業に特化している。

 まぁ、工業高校ですよ…やっぱりイメージ良くないから何とか言い換えてるんだが。

 ここへの入学に学力調査は必要ない。面接だけで行けるような学校だ。

 そのせいか、かなり学力ややる気に差がある。

 俺のようにSEになりたくてここに来たやつもいれば、高卒認定だけ欲しくて来てるやつもいる。

 というより、後者の方が圧倒的に多い。

 あと、事情があって中学に行ってなかったやつとかもいたな。実は俺もそうだ





 ……始業のチャイムが鳴る。

 結局、あまり寝れなかった。

 1時間目からプログラミング技術とかキツいなぁ……自分で選んで損したよ。

 4階のパソコン室に向かうが、誰も人がいない。

 いつも、『岸辺』という女の子がいるんだが……。


「おや、今日は西園くんだけか? 珍しい」


 担当の小倉先生が、目をしばしばさせながら独り言を言っている。

 小倉先生は、この学校で一二を争うほど高学歴だ。

 何よりもルックスがよく、女子生徒から慕われている。

 ほんと、天は二物を与えずと言うけれど嘘だよな…


「最近、彼女を見ていないね…。彼とうまくいってないのかな」


 その彼というのは、さっき紹介した枝野のことだ。

 ……本人は否定しているが


「そんな感じには見えませんけどね」

「そうなのか、まぁ可愛いから単位はあげるけど」


 この先生の唯一の欠点がポロリと出た。

 そう、可愛くない子には単位をなかなかあげないという鬼畜だ。

 それはやってはいけない気がするが、逆らってもうまく丸め込まれるだけだと目に見えているから誰も言わない。

 ちなみに、男子は別らしい。


「仕方ない。君だけじゃ授業が成り立たないから、男同士何か語り合いましょうか」

「は、はい!?」


 ど、どうしてそうなった?


「授業でしばかれるより良いだろう?」


 赤茶色の瞳は、核心を突くように見透していた。


「えぇ……」


 こうして50分間、二枚目同士の諸事情を語り合うこととなった。


 ……そこで明らかになったのは、既に結婚していて子供がいる、年は26歳、犬派ということだった。

 それと、奥さんの惚気話が非常に多かった。


「では、君も教えてくれ」

「大したものはないですよ……?」


 少し恥じらいがあったが、話し始める。



 ――俺は、正直いって小学生の時からモテていました。

 俺自身は全く恋愛には興味がなくて、告白される度に断りをいれていましたね。


「ほう、気に入る女性はいなかったと」


 それもあります。


 しかし、それによって生まれるいざこざが嫌で嫌で。

 そんなこんなで断っていたら、女子からも男子も恨まれるようになっていました。


「恨むなんて愚かだな」


 先生は物分かりがいいですからね。

 まぁ、それがない人にとってはきっと気に障るものだったのでしょう。

 それで散々虐められ、そのストレスのせいで俺は授業中に倒れてしまいました。

 病院で目を覚ましたときは、ただただ出席数を気にしていました。

 これで推薦されなかったらどうしよう、社会的弱者に見られたらどうしよう、と。

 ……今思えばアホらしいことなんですけどね。

 1週間後に退院しすぐ学校に行ったのですが、女子生徒がクラスにいるだけで気持ち悪くなってしまい、耐えきれず逃げ出しました。


「……それで、ここに来たと」

「簡単に言えばそうですね」

「でも、今は女性を見ても平気そうだね」

「慣れないと生きていけませんし……」

 ははは、と先生は笑う。

「何も女性に慣れようとしなくていいじゃないか。男とじゃれあっているだけでも良いのでは?」


「流石に同性愛は…ちょっと…」

「あら、否定的だね」

「先生は、男を好きになれるんですか?」

「ん? そうとはいってないが、そういう形もアリだと思うよ」


 ……さりげなくかわされてしまった。

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