マクシミリアン女王との密談
私は直接、相手を仕留める仕事を貰ったので準備を行う。その時間の中でマクシミリアン女王陛下にお話を伺うために、陛下のお部屋にお邪魔する。内装はシンプルであり、装飾品などはない。ただ国旗はしっかりと飾っている。
「マクシミリアン女王陛下、お質問よろしいでしょうか?」
「エルミア」
「はい?」
「エルミアさんとお呼びなさい。『おばあちゃん』は駄目。エルフ族は長命すぎて、人の基準で言われると少し……切なくなる」
「わかりました。エルミア姉さん」
「ソーマもいい?」
「エルミアばあちゃん……」
「……」
エルミアさんがソーマに近づき一瞬で腹に拳を叩き込む。鍛え抜かれたソーマが倒れ悶絶する。
「いい?」
「……」
悶絶しすぎて頷く事しか出来ないソーマに私は笑顔でつつく。
「そのまま内臓破裂で死ねばいいのに」
「銀姉!? 愛し合った中じゃないか!?」
「あなたの遺伝子はしっかりと残すから大丈夫。死んでいいよ」
「え、銀姉?」
「あら、銀ちゃん。もう……できたの?」
「いいえ、秘密の話です」
「銀姉のその話を聞きたい所だけど……エルミア姉さんへの質問が先だ」
ソーマが立ち上がりながら、私の隣へ来る。近い。
「エルミア姉さん。エルミア姉さんを倒す必要性は『同盟者』が英魔国女王陛下と親しい間柄と言うことでしょうか?」
「私もその線が強いと思う。また、私を『帝国と戦った。恨みがある人物』と思ってる方々は多いし、マクシミリアンは帝国領内である土地と思ってる人が多いのも事実。それが『完全独立国』に変わるのは嫌でしょう?」
「嫌でしょうけど。マクシミリアン国民はどう見ても『マクシミリアン人』ですし、正直な話は『エルフ族』ですよね?」
「生物学上ではハーフエルフですね。しかし、それは帝国も同じ。なんの血が混じってるなんてわからないわ。ただ、マクシミリアンの血統は確実に私を祖としてるので……ハイエルフの純血である私の血ならそうよね」
エルミア姉さんは腕を組んで悩んでいる。隠された歴史は今は常識である。
「帝国的には『魔族』ですので……宿敵ですね。タカ派ならば暗殺など。目障りなので消えてほしいでしょう。また、マクシミリアン家の者でも。『帝国側』の方々も多いでしょうね」
帝国で利益を得ていた物は尚更だろう。
「裏切り者は何処にでもいるわ。でも、数が多いし、面接していっても嘘つかれたらわからない。銀ちゃんの案を聞きましょう」
「毒殺されてみればいいんじゃないですか? 人は『事が起こって初めて動き出す』生き物です。毒殺後の人の動きで裏切った物を炙り出す方法です」
「却下、マクシミリアン国内が大荒れになる。それが狙いでもあるでしょう。騎士団が一応調査してる筈よ。調査報告を聞いてみるのも一考よ」
「私はそこら辺も臭いと思ってるんです」
「疑えばきりがないわよ。銀ちゃん」
「そうですね。多くの君主はそうやって破滅しました。『最初から疑って立つ』なら、短命になりますね」
「そうだね。私は『エルフ』だったから。今が生まれてる。一度、枯れただけどね」
その言葉に私は聞きたくなる。
「女王陛下は……どんな人ですか?」
「あなたもそれを聞くのね。『自分の眼で確かめなさい』。私のが格が上でも、実力も人徳も才能も全て上よ。不平等の権化で……おバカね。今は身が重いわ」
「第3者に頼るのはどうでしょうか? 私とソーマだけでは荷が重い事がここでハッキリしました。なら、第3者。身内でもなく、情の介在が入らない。お金と契約を重きを置いて『信用』を売っている。そして『公平』に見る眼がある組織。そんな組織と縁はありませんか?」
「……………」
エルミア姉さんは悩む。心当たりがあるのだろう。
「ある、帝国の黒騎士団。あそこは帝国を『壊さないためにある組織』だから話がわかる。そして、英魔国首都に居る衛兵最上位の『イヴァリースの衛兵』と居る存在としてわかっているのに活動が不明な特殊衛兵の『黒衛兵』。英魔国内の都市ネフィアの保安組織『レオ組』が出て来ますね」
「流石です。それだけ組織あれば……どれか声をかけたら来てくださるのでは?」
「英魔式で選びましょう」
エルミア姉さんが棚から箱を取り出す。それを開けると数字が書かれた白金の拳大のサイコロが入っており、それは「何か」と言われるとわからない。
「サイコロですか?」
「サイコロです。サイコロですが、アーティファクトで他の影響を受けない公平性がある魔王のサイコロですね。賭け事にいいサイコロです。これに6つの組織を選び、サイコロに運命を預けます」
「魔王のサイコロ……魔王の!?」
私はそれをマジマジと見せて貰う。鑑定魔法を唱えて確認すると祝福されし、白金ではない。鉄のサイコロというのがわかった。しかし、鉄は魔法によって不純物のない鉄であり。それは錆に対して絶対の耐性があった。
「すごい、本物。お金で買えない物ですね」
「あなた、それを鑑定出来るのすごいわね。ソーマ……この子どこで見つけたの?」
いきなり声をかけられたソーマがそのまま笑顔で「学園」と答える。間違いではないが、「もっといい返事があっただろうに」と思う。
「まぁ、それは追々。これに6つ組織を書きます」
魔力を流し、6面に組織名が書かれる。『天楽街』なる名前もあり……私は背筋が凍る。マクシミリアン女王は女王としての縁の強さを見せつける。
「では投げます」
ポンと投げる金属サイコロは金属と思えぬ軽さで床をバウンドし転がり、そしてゆっくりと回転が治まり文字を浮かべる。それは『天楽街』であり、エルミア姉さんは笑みを浮かべる。
「では、天楽街に頼みましょう」
「銀姉、サイコロいいね。子供の名前決めよう」
私は「気が早いは!!」と叫びながらナイフをソーマのお腹に向けて投げつけたのだった。
*
私は今の状況に慣れなくなっている。帝国のお堅い令嬢風情が浴びるには異質な空気にだ。エルミア姉さんはアーティファクトを使用した次の日の昼に私は連れられた。
都市は「女王暗殺未遂事件」のために厳重な警備が成されており、身動きを制限されているエルミア姉さんの元へ料理人が来た。その料理人はなんと英魔国内から来たようで料理を振る舞ってくれるらしく、エルミア姉さんの部屋の一室を改造して調理場にし、鉄板を設置する。窓は開け放たれて魔法で送風されており、元々調理できる場所らしい。
そして料理人の種族は驚く事に天使たちである。詳しくは堕天使らしいが、純白な羽は非常に見映えがいい。
「そんないい物を用意してませんが、好きなの焼いていきます。よろしいですね」
「ええ、『おまかせ』で頼んだので。二人ともアレルギーと嫌いの物は?」
私とソーマは「ないです」と伝える。手慣れているエルミアは姉さんはそのままタオルで手を綺麗にして天使の料理人と話をする。
「あなたは『天楽街』からですね」
「はい、天楽街専属の衛兵です。今回お呼びいただきありがとうございます」
「衛兵なのに料理を?」
「基本です。それに鉄板料理にそんな腕なんて関係性ないですよ?」
私は本当に「そうだろうか?」と思っている。目の前でタレを入れた鍋を鉄板で温め、串に差した肉を焼いたあとに横によけたあとにタレを鉄板の上に流して焦がし、肉を入れてあえていく。他の天使も野菜も細切れにしたのを塩で炒めており、他の天使が先に焚いたお米をソーマの前に置いていた。エルミア姉さんはビールをそのまま小瓶で貰って瓶のまま飲む。
「秘伝のタレや、鉄板の焼き加減は料理人の証よ。屋台そのまま来てくれるなんてうれしい」
「まぁ、そういう商売ですから。で、要件は『暗殺事件への調査協力ですか?』」
「もちろん」
私は目の前に出された串焼きをほうばった。遺伝子が覚えてる肉を好む性格が理性を忘れさせそうになる。これは豚肉だろう。
「ぶ、豚肉うまい……くぅ……タレが」
「塩もございます。塩は岩塩ですね。お魚には海塩です」
「用意がいいですね」
「出張料理人ですから。そうそう、風の噂で……莫大なお金がマクシミリアン陛下の首にかけているそうですけど。そんなお金が何処から来るかは実は見つかってるんです。声かけは魔国でも行われ失業に近い『暗殺者』達が勢揃いしてますし……ねぇ」
私は塩で肉を食べながら考えて答える。
「帝国でしょ? それも戦争で儲けた奴ら」
「そうそう、帝国の貴族達ですねぇ~。『戦争』で儲かった奴ら全員がもう一回欲しい。それが多い。それに乗っかる奴も多くてね。実は……『まだ全く行えてない』のが現状ですがね。未遂ですね。愚痴ってましたよ店で……『誰かがしくじったばか野郎がいる』ってね」
「あらぁ~そう。で、そのバカはどうしたの?」
「騎士団にそのまま聞かれてしょっぴかれて行きました。それと口の軽いお偉いさんから……『予想外だった。毒を盛ったのが他人にバレた』と言うの言ってましたね」
「……騎士団が盛ったの?」
「わかりませんがね」
私は考える。そして、一つの考えを話す。
「騎士団は『毒を盛って、それをバラす演技』をする予定だったんじゃないですか? 薬剤は『量で発現する』のでエルミア姉さんは大丈夫と知っての蛮行と言う線があります」
「まどろっこしい事をするわね……なんで、理由が乏しいわよ?」
「……エルミア姉さん。『私は大丈夫。来るならそのまま返り討ちにする』と言って護衛も何もかもお断りしたのではないですか?」
「………」
私は笑う、誰かの影響を感じて。ソーマは頭を抑えながらすかさず話に入ってくる。
「ああ、銀姉。確かに困るな……何か動きたいのに動けない。『明確な理由がほしい』のだろう」
「自作自演で危機を煽り、身を固めさせ、騎士団は『胸を張って挽回のチャンス』と大衆に示せます。まだ、実際起きているので……予防と言うより実害駆除に動けるわけですね」
ソーマと私の考えを述べた後。心当たりがあるのか、エルミア姉さんが悩む。
「えっと、情報のお会計は?」
「私の独り言ですから。それよりももっと頼んでください」
「3人では多くを頼めない。少し、呼んでみるわ」
エルミア姉さんが騎士団の幹部を数人呼びつける。いきなりの行為に皆が「不参加」を表明するなかで現騎士団長が顔を出す事が決まった。
「お会計、騎士団にツケて」
「……既にもらってます」
「はぁ………我が子孫は優秀なことで」
エルミア姉さんは嬉しそうに苦笑いを浮かべ、そのまま私は『護衛任務継続』となる。そして、私自身が考える最終手段は『挑戦者』のような損得勘定にない行動する人だけに絞られた。
「エルミア姉さんを暗殺するの大変ですね?」
「あなたは出来るでしょ?」
「私の命を断ち、呪い殺すなら。穴を一つ、刃物一つ、私を一つ、餌を一つを用意してね」
「呪いにも気をつけるわ」
エルミア姉さんはそう言いながら、禍々しいペンタンドを取り出して首にかける。それは呪いが強くかかっており、つける物を不幸にするような禍々しさがある。
「あなた……護ってね」
だが、禍々しい気はエルミア姉さんに害を及ぼそうとせずに巻き付くだけにとどめていた。そして、ソーマが「それはなに?」と聞く。
「マクシミリアン王の秘宝。廻り巡って帰って来たわ……まぁ多くの不運を生んでいる呪ってある物よ」
私とソーマは見つめ合って辿って来た人生を含めて「この人おかしい」と同じ意見で納得したのだった。




