銀姉の凶行、マクシミリアン女王の奇行
銀姉が凶行に走ることは予想できない訳ではないがこの瞬間に行われるとは思いもしない俺は油断していた。
シュン!!
銀姉の手から真っ直ぐ放物線を描きながら飛ぶ棒手裏剣の先に王国の女王がいる。銀姉はそれに向けて投げたのだ。俺は……慌てて彼女を背後から取り押さえて赤い絨毯に叩きつける。痛みに顔を歪ませて笑う銀姉に狂気を感じ……背筋が冷えた。
善悪関係なく。人を殺める事の出来る魔物だったことを……今の今まで忘れていたのだ。
ガシャン!!
舞踏会の中でグラスが割れる音が響く。女王の持っていたグラスが棒手裏剣によって割れ、柱に棒手裏剣が食い込む。
「……銀姉!!」
「ふふふ……命中」
ガラスの破片は……女王の頬を少し切るだけで止まる。シーンと静かになった空間で、衛兵がささっと現れる。
「………」
銀姉は抵抗しない。俺は少し……おかしい気持ちで彼女を押さえつけたまま衛兵から手錠を借り手錠をはめて、衛兵と共に待合所まで向かった。
「すまない。連れが……」
「待合所で話を聞こう。ありがとう……取り押さえ感謝します」
「いや……近くにいて凶行を押さえれなかった。同罪だ。ついていこう」
衛兵と共に俺らはその場を後にする。背後のメイドにワインが濡れた所を吹く女王と目線が合い。俺は頭を下げる。
舞踏会をぶち壊したことは……きっと許されないだろう。そう……思ったのだった。
*
待合所で衛兵からお説教と尋問を銀姉は受ける。しかし、銀姉は笑いながら煽り、衛兵から何発も殴られても笑い煽るために衛兵の方が俺に救いを求めてきた。俺は俺で……首を振る。それが30分ぐらいした時、他の衛兵から「解放しろ」とに言われ拷問慣れしている彼女を足にも手錠をかけて俺は背負って持って帰ってきた。
屋敷に帰るとメイド達が何事かと聞かれ、銀姉の凶行を説明し、部屋に入らないことを約束させる。
流石に今回は怒る。
「はははは~帰ってこれたわね」
「はぁ……」
部屋に戻り。どっと疲れた俺は彼女をドレスのままベットになげる。
ドサッ!!
「ふふふ~みーんな顔がひきつって最高だったわ。衛兵も殴ってる癖に泣きそうな顔して~」
全く反省の色もなく楽しそうに語り出す。
「ああいうのが良いのよね~やっぱりこう~びびっと来る」
「……はぁ……手錠や足枷は抜けないな」
「ふふふ~無理ね。これは中々……素晴らしい呪物。力でも魔法でも難しいわ~でも時間をかけたら抜ける」
「落ち着いて解呪するんだな」
「もちろん~」
「落ち着いたら解呪出来るな」
「………?」
銀姉が笑うのをやめ……真面目な顔をする。
「含んだ言い方ね……なに?」
「……これから俺は俺のために」
「……えっ?」
吹っ切れた。銀姉の凶行に罰を与える事を考えた。しかし……銀姉が嫌がる事を考えた時。ふと、「我慢しないでいいのでは?」と考える。
ガチャガチャ
「ちょ!? ソーマ!? なんで手錠に鎖を!? ベットに括るの!? えっ!?」
「………」
銀姉が何かを察したらしく慌て出す。
「呪物の解呪は時間がかかる。知れて良かった」
「な、なにを!? つっ!?」
俺は……ドレスのスカートで隠れている銀姉の太股を掴む。服の上からでも分かる柔らかい太股。下卑た笑みを見せた。
「銀姉……経験は?」
「!?!?」
銀姉が嫌がる。わかったらしい。
「ま、まて!! ソーマ!! 噛みつくぞ!!」
「どうやって? 大人しく……食べられろ」
「け、けだものに!? 殺すぞ!! 触るな!! んぐ!?」
服の上から胸を握る。銀姉の顔が次第に紅潮し涙を貯める。やはりと言うか未経験らしい。
「嬉しいなぁ~俺が初めてか。初めてだから手加減しないぞ……今日の事で吹っ切れた。ゆるさん」
「ご、ごめん!! ゆ、ゆるもごぉ!?」
口の中にハンカチを突っ込む。そして俺はドレスをひんむいた。
*
チュンチュン……
「……ふぁ~。あー」
私は鳥の囀りによって起き。眠たい眼を擦る。背伸びをし……ゆっくりと体を捻った。
「…………………んん。なんで?」
頭が全く回らない中で下を向くと大きな大きな山がふたつが見え一糸纏わぬ姿なのがわかった。暖炉の火はゆっくりと燃えており。部屋は温かい。
「ん……銀姉……」
隣を見ると同じような一糸纏わぬ姿のソーマがおる。
「……………」
うん……
「……………………………」
うんうん………
「…………………………………………」
ゆっくりと視界が鮮明になり、忘れようとしていた記憶が飛来する。顔を押さえてワナワナと震えた。
「………やってしまった?」
襲われた。私と言う狂犬が容易く。蹂躙された。
「…………」
隣を見ると幸せそうに寝ているソーマが居て殺したい。
「……殺す」
爪を構え、シュッっと喉に突こうとした。その瞬間。
「銀姉……愛してる……すぅ……逃がさん」
寝言に手が止まった。
「………夢でもこいつは私を犯してるのかよ……」
夜中は同じことを何度も何度も耳元で囁かれた。耳にへばりついて忘れられない。
「くっぅ……」
布団を引き寄せてそれを噛みついた。大失態だった………だが。
「畜生……す、すごく……良かったわ」
噛むのを止め布団に顔を沈めたのだった。
*
「強くなぐらたとこがまだ痛い」
「ふん……私の方が痛かったわ」
「………」
早朝。銀姉にお腹が空いたと叩き起こされた。殺されていない所を見ると俺は賭けに勝ったようだ。喉を噛みきられ、ベットの上で血濡れで生涯を閉じなかったのは運がいい。
「はぁ~……この馬鹿ソーマ。あーあ……」
「……悪かったとか謝ればいいのか? 残念だが悪いのはお前だからな。本来なら処刑されてもおかしくない。まぁそれはどうにか回避してやるが……以降は檻の中だぞ」
「ふーん。優しい……まぁいいわ。お腹すいた!!」
「はいはい……持ってこさせてるから……」
トントン
「ほら。もうきた……」
俺は寝室の扉を開ける。そして……
「おはよう」
「…………お、おはようございます」
目の前の耳が尖り放漫な胸を持ち、鋭い瞳、短いタイトスカート。装飾された騎士団女性用礼装を着こみ。腰に細い剣を差している。
俺は頭が痛くなってきた。
「……あら? 入れてくれないの? 朝食作ったわ」
「あ、あの……」
「入れなさい」
「は、はい!!」
「………?」
銀姉と目線があい、一歩引く。入って来た女性に銀姉も目をひんむく。
「ふぁ!?」
「ふふふ、驚いたかしら?」
「お、おばあちゃんどうしてここに!?」
そう、朝食を持って来たのは自分の大祖母でありマクシミリアン王国を束ねる生きる伝説。
マクシミリアン女王。エルミア・マクシミリアンその人だった。手際よく朝食を用意してくれているのを銀姉が眺めていた。
「あら? おかしいかしら?」
「い、いえ……メイドの真似事うまいですね」
「銀姉!!」
「しっ……ソーマちゃん。朝からうるさい」
「……すみません」
昨日の今日。何とも胃がもたれそうな重い事件が重なる。
「ソーマちゃん。私はこの子に用がある。少し黙っててね」
「……はい」
「偉い。他の子と違うわ」
椅子に俺は座り朝食のパンに苺ジャムを塗って銀姉の皿に移す。腕を組んで女王を睨む銀姉に女王は笑みを浮かべ続ける。
「懐かしい顔つき。彼女に良く似てるわ……でっこれ何か分かる?」
とんっ
机の上に小さな小瓶が置かれる。それを空け、銀姉は頷いた。
「神経毒。確か……何だっけ?」
「そうね。正解。で……これがこのように」
女王が自分の持って来た水を入れたグラスにそれを注いだ。俺は……息を飲む。
「私のグラスに入っていたわ」
「ばあちゃん!?」
「静かに……あなた。人狼で鼻が効くか勘が働いたそうね。だから……気付いてグラスを割った」
「……」
「返答なし。正解かしら? 何となくそうじゃないかと思って調べさしたら……これを見つけたわ。そしてあなた達をすぐに解放し。今は犯人探しをしている」
俺はあの行動の意味に驚く。
「おばちゃんを暗殺しようとした?」
「……はぁ。そう。私はその毒に気付いた。だから……投げたわ」
銀姉が「観念しました」と言う表情でパンを食べ始める。
「ふふ。ありがとう。でも……そんな必要なかったのに」
女王がグラスを持つ。俺は背筋が冷え叫んだ。銀姉も驚く。
「ばあちゃん!?」
「!?」
グビッ……トン!!
毒の入ったグラスの水を女王は飲み干した。
「ふぅ。ご老体には少し胃に重いかしら?」
「えっ……あっ……」
「………女王。もしかして」
銀姉がパンを食べるのを止めて口にする。
「耐性があるんですね」
「そうよ。こんな毒程度で私は殺せません。過去奴隷時代や側室正妻時代に沢山飲まされて来ましたからね。今さらこんなのではただの薬味よ」
女王がドヤって笑顔になる。そして、その格好いい姿に俺は。
「格好いい!! ばあちゃん!!」
流石自分のばあちゃんだと尊敬の視線を向けた。
「ふふふ~ばあちゃん凄いんだぞ~。でも、あなたも凄いわ~あんな距離をね~狙撃。それに~ソーマちゃんも結構凄いわよ」
「えっ? 何処がですか?」
「ふふふ。こんな難しそうな女の子をおとすなんてね。若いわ~本当に」
俺は背筋が冷える。銀姉も察し真っ赤になると同時に俺の背後に立ち首を締めようとする。
「照れ隠しね」
「ちゅ、ちゃうんです!! この人に無理矢理!!」
「無理矢理なら。手枷も何もかも外れてるのに逃げず。絡まってたのは何だったの?」
「~~~~~~」
声にならないうねり声を出しながら、銀姉はギリギリと俺の首を絞め続ける。
「かわいい。ねぇ後でキャッチボールしよう」
女王はさも嬉しそうに。その光景を眺め続けているのだった。そろそろ苦しいが……銀姉はきっと離してはくれないだろう。




