お義母さんにご挨拶
私は宿から、ソーマの実家に顔を出した。仏頂面での参加であり「嫌だ」と言っても聞かなかった。
「母さんただいま」
「お帰り我が子よ……ん?」
ガシャガシャと鎧を着た中年の女性が玄関に現れる。私はドン引いた。彼の母は女騎士ということに、話を聞いてなかったから驚く。
女騎士とは男と同じように騎士となる女性。原点は傭兵程度やごく少数の変わり者しかしなかった騎士の真似事をする者たちだったが歴代最強の女騎士と言われる者が現れ、女性の騎士は「実は強く、滅茶苦茶有能」と言う事とドレス風に作られる衣装が可愛いために……容姿に自信がある。剣に自信がある。全てにおいて素晴らしい女性像として一気に人気になったのだ。
男も戦場での華としてチヤホヤするので一般人よりも婚姻率は高く。それ目的に騎士になる者もいるほどに流行っていた。しかし、女より強い騎士の方々は多い。
「ごめん。今からお仕事なんだ。夜中には帰ってくる。かわいい人ですね。婚約者ですね」
「はい、シャーリーと言います」
「ゆっくり話したいけど魔物討伐に出掛けるわ。本当にごめん」
長い剛槍を背負いそそくさと去っていく。隣のソーマはやれやれといった雰囲気で私を見た。
「母さん……メイド長やめてから。騎士一筋になったんだ。昔に出会ってる人の話に即発されてさ。槍さばきは普通だけど、一閃の突きだけはスゴくて……父上もその一長だけは舌を巻いてるよ」
「そうなのね……」
ご挨拶せずに清々する。
ダッ!!
「そうだ!! ソーマちゃん。せっかく帰って来てるわよね!! ちょっと手伝いなさい」
「はい!?」
「帝国で遊んでるんでしょう。ちょうどいいわ。支度しなさい」
「帝国じゃないですよ……王国でしょう」
「そうだったわね~早くしなさい。門で待ってるから」
「………うえぇ」
「……あら~」
私は何とも言えない顔でソーマを見る。頭を掻くソーマに私は何となく同情するのだった。
母親も「変わり者なのだ」とそういう顔をする。
*
「えっ……王国のお嬢さん戦えるの?」
「母さん………こう見ても実は~」
「ソーマさん黙る。ソーマの母上様……足手まといにはなりませんのでご安心を」
「……ふふ。『王国の令嬢なんて』と思ったけど。中々の子ね。それより……『根が暗い』と思ってたのに今思うとよく喋るよね。顔の明るいし……しかもそれ……盾よね?」
色々と母親は落ち着いて質問をする。
「そりゃ!! 凄いんですよ母さん!! 俺の性格が変わるほどに彼女は凄く強い……あと、これは俺の新しい武器」
大きい盾を背負いながら、ソーマは私の手を繋いだ。「逃がすまい」とする。恥ずかしい気持ちの私が「逃げようか?」と考えての先手だった。
「!?」
「あら~仲いいわね~軽装だけど……護身用の刀もあるし、その大きいボウガンも背負ってるから……遠距離得意なのね。わかった。信用して背中を任せるわ」
「銀姉良かったな」
「はぁ……別に……あっ!? いえ……その……」
「……無理しなくてはいいわ~」
がわが剥がれた銀姉。溜め息を吐き、演技するのをやめる。手を振りほどき……ジト目でソーマを見た。
「勝手に繋ぐな……まったく」
「言えば繋いでくれるのか?」
「………まぁ」
「じゃぁ繋いでくれ」
「ん……」
再度つなぎなおし、ソーマの母親はにやにやする。私は諦めたかのように大人しくする。
すると、待ち合わせ場所に男の騎士が数人現れて馬に乗る。ソーマはその中でドレイクと言う馬擬きを1頭を借りた。私は彼の背中に乗らず。盾が邪魔の彼の代わりに手綱を持った。盾を横にして乗り、大きいドレイクはすいすいと気にせず歩く。
むにゅ
「ソーマ!! 腰にまわしなさい!! そこ……ちがう!!」
「ちっ、堅い。鎧か……」
軽装の上から胸を掴んだソーマを「振り落とそうか」と思ったがやめた。こいつ。
「若頭、それが最近話題の恋人ですね?」
「やはり、強い女性はいいですな」
何人かの騎士が馬を寄せて話始める。私はお辞儀をしながら……ふと考える。
このあとに絶対に恥ずかしい暴露話があることを。
*
森の入り口に馬を置き、私たちは「人喰い魔物がいる」と言われる場所へ入った。
私は降りた瞬間、ソーマを地面に叩きつけて恥ずかしさを爆発させる。ソーマは笑顔で耐え、己がここまで鍛えた事を後悔させられた。
皆は「激しい愛情表現だなー」とニヤニヤし、ソーマの母親は私をみて「安泰」なんて言う。こんな事になるなんて私は想像が出来なかった。
「銀姉……行こうぜ」
「くっ……わかった」
渋々、森に入る私。大きい大きい突然変異の木々は天空にそびえるほどに太く高い中で……大きい大きい足跡を探す。
魔物はここ数年で大型化し、何やら昔より強くなった事を聞いていた。
森も大型化し、「何やら世界が変わったようだ」と皆で話し合っている中で……足跡を見つける。
見つける瞬間……森の中で地響きがあった。
「銀姉、ボウガン構え」
「……すでに構えてる。獣臭いわ」
「フフフ……全員!! 剣を抜け!!」
大きい剣を騎士達は抜き、距離を取る。まとめてやられないように……そして私の目に映る。
大きい大きい猪が横を向いていた。もちろん先に見つけたので先手は取れる。
ビャアアアアアアアン!!
私は持ち出していたバリスタのような大きいボウガンを構えて撃ち込む。皆が一斉に私の撃った場所に向き直った。ソーマだけは同じように見つけていたらしく驚かず、私の前に躍り出る。
ギャアアアアアアシャアアアアアアアアアアアアア!!
森の中を化け物の叫びが木霊する。ソーマは盾を構え、化け物に備えた。
遠くの猪の目に私の撃った杭のような矢が真っ直ぐに刺さっていた。怒りをぶつけようと突進してくる巨大な家のような化け物に騎士達は木々に身を隠す。
「ソーマちゃん!! 突進はかわすべきよ!!」
「銀姉!!」
「装填!! ソーマは足止め!! やれるでしょ?」
「もちろん!!」
ガッゴオオオオオオン!!
大きい大きい猪の足がソーマを踏みつけようと走り、当たる。その瞬間……大きな金属音とともに化け物の勢いが収まり前足を引きずる。
直立不動で盾を構えていたソーマを追い越した猪の前足は骨が剥き出しで血が出ていた。私は避けながら放った矢が猪の後ろ足に刺さり動きが鈍い。魔物でも通るボウガンに「人に撃ち込んだら千切れそうだな」と思う。
「手が、痺れる……」
「全員!! 動きが止まった!! 攻めよ!!」
ソーマの母親の怒号に一斉に騎士が虫のように群がる。一閃の槍ぶすまは足に傷をおった猪を倒すのはそう時間はかからなかった。
*
「合格」
解体は他の騎士に任せ。雪が降る中の城門でソーマの母親は指差して私に言った。
「ソーマと結婚を許しましょう」
「……」
「……わーい、良かったな銀姉」
「あら? 嬉しくないの?」
私は頷く。
「母さん。銀姉は天の邪鬼だから気にしなくていいし。俺は絶対結婚するつもりだったから……」
「あら~そう~でも。私は応援するわよ~こうツンツンしてるけどソーマちゃんを信用してるのは見て取れたわ~」
「そんなことは……」
「ソーマちゃんの後ろから動かなかった。絶対に押さえるのを信じてたみたいに」
「……」
「フフフ。孫の顔が見れるのを期待する。早くお願いね」
私は肩を叩かれなが複雑な顔をする。ソーマはそんな私をみてニヤニヤするので足をふんずける。
「ふぅ。ソーマちゃん。これなら……明日の親族会親睦会に参加できるわね」
「はっ?」
「今から頼んでくるわ~」
ソーマがすっとんきょうな声を出して、そそくさと去る母親を掴むのを失敗した。私は裾を引っ張る。どう言うことかを説明を聞くために。
「あー銀姉………」
「なによ」
「明日……………マクシミリアン女王陛下………始祖婆さんに会うぞ」
「!?」
私は背筋が凍ったのだった。
*
「おうおう………俺を生け捕りにするだけでいいのか?」
「……」
「はぁ……最初っから殺れよ……殺されても文句はない」
「……」
「悪いの俺だからな……すまねぇな姐さん……そして、娘……妻よ……俺は無茶苦茶酷い男だ」
「……」
「願わくば娘が幸せになってくれる事だったんだが……俺が言っても駄目だな……すまんかった死んで詫びる」
スパッ!!




