マクシミリアン王国2
「銀姉……あった。ここだ」
「ん? 普通の店じゃない」
「普通だが……まぁ普通じゃないんだ」
広場で懐かしさに浸っていたその時に私をソーマは呼んだ。そこは周りとあまり変わらない屋台だった。何故この店を探したのかと思っていたのだが暖簾を潜って理解した。
「んっいらっしゃい……ああ。ソーマの坊っちゃん」
オーク族の豚鼻の男が笑顔で語りかけて来た。ソーマの知り合いだった。ハチマキをつけていかにも料理人風情のオークだった。亞人ばっかである。それもオーク族。
「こんにちは。銀姉、ここに座るんだ。酒場のカウンターみたいなもんだよ」
「う、うん。失礼しまーす」
私は店の前のベンチのような木の椅子に絨毯のような物がひかれている上に座った。
「おっ!? えらいベッピンなねぇちゃんだね。ソーマの坊っちゃん誰だ?」
「俺の妻」
「ち、ちがう。婚約者よ、まだ!!」
「まだっと言ってもいつかは妻だ」
「私はまだそこまで認めてないわ」
私は彼を睨む。妻でもないのに妻だなんて言われても恥ずかしいだけである。
「ははは。ソーマの坊っちゃん嫌われてるねぇ」
「はは、店主。よーく考えてくれ。故郷に顔出せてるのはそういうことだ」
「おっ!? 脈ありかぁ。にしても坊っちゃん明るくなったな~」
「だろー!! そんなことより2つ作ってよ」
「ははは、すまねぇ~いやぁ~あの坊っちゃんがなぁー」
なんとも古い知り合い同士の会話に私は聞いてみることにした。
「どういった関係?」
「ああ、マクシミリアン騎士。元英魔族オーク族で今はマクシミリアン国籍のゴンジーさん。師匠だよ。まぁー剣は捨てて大盾だけどな。今は」
「坊っちゃん。今は黒大盾かい? オーク族じゃないのに生まれ間違えてるぞ。がははは」
「騎士なんですか?」
「おう、ここの屋台は皆。騎士だぞ」
「えっ?」
私は周りを見る。そんな風には見えないが?
「お嬢さん。騎士も暇なんだ冬は……そこで資金集めに店を出すんだ。あと趣味」
「趣味……」
「まぁその趣味は美味いんだが。まだ?」
「まぁ、急かすな。今は茹でてる」
「………」
何か本当に懐かしい匂いがする。こう、鼻孔をくすぐる匂いだ。そして、豚の店主が出したものに驚きの声をあげる。
「おまち。うちはこれしか作ってない」
ゴトッ!!
「えっ!? これって………」
「おっ。嬢ちゃんわかってるのか?」
目の前に用意されたのは底の深い皿に入った麺料理だった。海苔も入ってる本格の白いスープに私は皿を持って店主を二度見する。
「えっ? えっ?」
「王国では似た料理はあるだろうがちょっと違うぞ。まぁー口に合うかわからん」
「い、いただきます」
麺の料理にはスプーンとフォークが用意されており。私はちょっと異様な光景に眉を動かした。
「なんだい? 食べないのかい?」
「箸……」
隣のソーマを見ながら箸をお願いする。ソーマは手を合わせてスープと一緒に熱々の麺を啜る。
「ああ。嬢ちゃんは使えるのか」
「はい」
「どうぞ」
私は箸を貰い。麺を解してスープに絡ませ、そのまま口に運んだ。細い麺に絡むスープが美味しい。
「………どうだい」
「美味しいです。親方」
「がはは!! 嬢ちゃんいける口だな!!」
「ええ。本当に美味しい。オークが豚骨使うなんてね……」
「ああ、アイツらは化け物で俺らとは全く違うからな」
ズルズルと気にせずに音を立てで頂く。令嬢らしからぬ食事風景だが、私は別に気にせずに黙々と口に運んだ。お腹が空いていたのもあるのかペロリとスープも平らげてしまう。もちろん手を合わせて。
「「ごちそうさまでした」」
食事に対する感謝を捧げた。
「銀姉。美味しかった? なんか声をかけずらかったけど」
「そうね………夢中だったかしら。うん………癪だけど。ありがとう」
「そっか!! そっか!!」
ソーマが満面の笑みで私の顔を覗く。それに対して何故か悔しいと思い顔をそらした。
「あと、一ついいかしら?」
「ん?」
「箸の持ち方間違えてるわ」
「!?」
「がははは!! 坊っちゃん言われてるぞ!!」
「ぐぅの音も出ない……なんで銀姉の方が箸の持ち方を……」
ちょっと気分が良くなり背けていた顔を戻す。照れているのか鼻を掻いているソーマに対してドヤァと顔を向ける。
そんな私たちを聞いていたのか他の客らしき男が声を出した。
「この国は本当に……いい国だな」
「おっ。旅人さん。やっと顔をあげて喋ったな」
「すまない……その国々でどんな会話をしているか気になってね」
私はその旅人の姿をみる。傍らに刀とスゲガサを置いていた。見るからに東方から来ましたという風貌だった。
「何処から来られたんです?」
「東方にね。日と言う国がある。英魔国、都市ヘルカイトよりも東、海を渡った先さ」
「大分遠くから来られたのですね。旅人さん」
「ぎ、銀姉が普通に会話できて……イタタタ」
私はソーマの尻をツネル。
「ふふふ。仲のいい方たちだ。親方……今までで一番、美味し東方食だった」
裾から金貨を取りだしそれを置く。
「ほら、お釣りだ旅人よ」
「ふむ。では先に失礼するよ。末長く」
「はい。陽の導きがあらんことを」
私は祈る仕草をし、旅人は物を持って店を去る。
「東方からも来るんだね……」
「旅が出来るのは手練れの証。だが……冒険者はそれを目指すのも居るほどに今は放浪者が多い」
「そうだな。多い……しかし、魔物に喰われるのも多い」
「だが……自分の足で放浪するのは気持ちいいだろうね」
「…………ちょっとロマンね。私は結構ですけど」
今の生活に満足しているため、私はそう言ってソーマと一緒にすぐに去らずに王国の生活と成り染めを店主と語るのだった。
*
「やぁ……兄弟」
「お前が初めか………」
「ああ。全く……お前と最後にこうなると思わなかった」
「俺もだ……ここではなんだ。路地裏に行こう」
「……その前に一本吸わねぇか?」
「ああ、いいだろう」
「………ちっ……火がねぇ」
「ホラよ」
「すまねぇな」
「…………ふぅ」
「…………ふぅ」
「姐さん。寂しがってたぜ」
「姐さんやるよ。俺は無茶苦茶してしまった」
「はっ……勝ったくせに」
「ああ。好きだったが俺に姐さんは救えなかった。いや、俺は最悪な父親だ……」
「……ふぅ。今日は苦いな葉が」
「全くだ」




