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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
最強暗殺者は婚約者に弱い。婚約者は暗殺者に滅法強い。
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悪役令嬢×悪役王子の第八歩 : 刺客


 私は……寒くなる日々に身を震わしながら学園の外を歩いていた。そう、帰りである。


 日はすっかり暗く。早く休みを期待する日々だ。寒いのでついついソーマの手を掴むがこれは仕方ないことなのだ。


「銀姉……かわいい」


「一言も喋るなと言った!!」


「手を掴むのかわいい」


「……じゃぁ離す」


 ギュッ!!


「離さない」


「………ちぇっ」


 大きな手が私の手を掴む。それを痛いほどに握り返してやった。もちろん、硬貨をヘシャゲルほどに強い力だ。


「むぅむぅむぅううう」


「かわいいなぁ……女の子だから力が弱いな」


「えっ?」


「もっと強く握らないと」


 そんな馬鹿な!! 私の力は相当な筈!!


「にやぁ~」


「や、やめ……ハナシテ」


 背筋が冷える。殺られると思ったのだ。両手で手を離させようとするがソーマの手はビクともしない。


「馬鹿力!?」


「お陰さま……危ない銀姉!!」


「えっ!?」


 彼は手を離し私は突き飛ばされた。尻餅をつき、目の前のソーマの胸に矢が刺さった光景で体が勝手に動く。体を捻り、目の前に矢が通りすがる。


 慌てて立ち上がり。棒手裏剣に魔力を込めて投擲した。何処から矢を放たれているかを判断しての投擲だが……避けられたようだ。すっかり日が沈み……見えなかった。


 私は慌てて……彼に近寄る。


「うぐっ……」


「て、ソーマ!!」


 胸に矢を受けてそれを掴みながらソーマが苦しそうに唸る。


「大丈夫か……銀姉……」


「て、ソーマ!! どうして庇ったの!!」


「………はは。避けられただろうけど。体が勝手に動いたんだ。げほ……」


「ソーマ……ばか……ばか……」


「銀姉……俺はもうダメかもしれない」


「う、うそよ!! そんなことない!!」


「毒矢だ……もう………むりだ」


「ま、まって!! 解毒を!!」


 ガシッ!!


「いかないでくれ」


「て、ソーマ!?」


「最後まで一緒にいよう……」


「待って……最後って………そんな………」


 ぽろ……ポロポロ


「銀姉……泣くなよ……死んで清々するだろ……」


 私は何故か涙が止まらない。彼の空いている左手を掴み頬に当てて泣く。


「うぅ………死んじゃいや……」


「はは。嬉しいこと……言うんだね」


「て、ソーマ!! ダメよ!! 死んだら許さない!!」


「………はは。銀姉。泣くのもかわいいけど……俺は笑っていてほしいな」


 矢を捨て。右手で私の涙を拭う彼……私は……私は……


「……おやすみ」


「まって!! 目を開けなさい!! ソーマ!! あなたは私の婚約者でしょ!! ダメよ!! ダメって………誰か……お願いします。ソーマを……助けて」


「…………クク」


 私はソーマに覆い被さって泣いていたが。そも覆い被さっている人の声が聞こえて顔をあげた。


「あははははは!! 銀姉!! どうだった? 名演!! あんな遅い矢なんか掴んだよ。っというか右手使えるの見てたでしょ」


「えっ………」


 私は涙がひかない。


「ごめん!! ちょっと脅かしたくて死にそうなの演じた。でもすごく嬉しかったよ。さぁ!! 怒って煮るなり焼くなりしていいよ!! もういっぺん死ねってのも……覚悟してる」


 ソーマは私に対して……ちょっと。知らなすぎであり。


 ギュゥ


 私は体を起こしたソーマにくっつく。そして、耳元で囁く。


「ばーか…………」


「……ごめんなさい。悪かった………本当に。ごめん」


「ゆるさん……」


 私の頭に優しい手の感触がするのだった。





「仕留め損ねたわね」


 私はナイフの刺さり抜いた腕の止血をしながら悪態をつく。


「流石お姉さま……暗がりの矢を避けるなんて。恐ろしいわ」


 視認がしにくい矢を一瞬で見て避ける芸当は「恐ろしい」と思う。勝者の景品に矢が刺さってしまったが「仕方ない」と私は思う。


「まぁ……惜しい人材だったわ。お姉さまに勿体ない」


 そう……勿体ない。人の良いものは羨ましい。だから彼は死んでもいいと思っていた。


「私の者にならないなら………まぁ誤射ですむわね」


 そう思いながら私は負傷した手を押さえながら……その場から立ち去るのだった。



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