悪役令嬢×悪役王子の第6歩 : 悩み
カフェの机に屈伏しながら私は深くため息を吐く。物語の悪役令嬢であろうとした。後悔はない……後悔はないはずなのに。
「何故、私は悪役令嬢で無くなってしまったのか………メアリー教えて」
頭を抱えながらいつもカフェでいつも空いている呪われた席に座り向かい側で尖った耳の悪魔族メアリーが座る。呆れた顔で私を見てくる。
「悪役令嬢とは………なんでしょうでって問い?」
「ヒロイン苛めて、最後に処刑でしょ。こんな簡単なのよね………簡単なのよね………」
「わかってるね。シャーリーさん」
メアリーが苦笑いをする。そして、言葉を続けた。
「ヒロインを苛めて。皆から悪役であるならあなたは悪役令嬢として完成されてました。しかし……」
「しかし……何よ」
「強すぎた」
「悪役は強い方が燃えるでしょ? 恋愛でも」
そう、ヒーローは強大な悪に戦ってこそ輝きが増すのだ。
「はぁ……だから。ヒロインが勝てない悪役はダメなのよ。正義は勝たないと意味がない」
「勝てない? 勝てるでしょ?」
「どうやって? あなたは悪役令嬢だけど愚かなようで洞察力もあり、死を恐れないほど勇敢なのよ? 強すぎだわ。能ある鷹は爪を隠すけど鷹である事には変わらない例ね。現にこの席はあなた以外に座れない事が物語っている女王の席よ」
「えっ? ここってもしかして私が座る用に空けてるの?」
「そうよ、絡まれたくないから誰も座らないの。皆、自分が可愛いからね……私も含め。唯一あなたの目の前で手を出さないだけでいいなんて気付けば近寄らないが正解よ」
「堅気に手を出そうかしら」
「ソーマドールさんがそれを許すと思う」
「くっ……アイツから始末しないといけないのか……きっつ。苦手なのよ」
私は残念な顔をして妹を思い浮かべる。妹しか相手にしてくれない事に寂しさを感じる。
「苦手なの?」
「凄く苦手。触ってきたらこう……フワッとするし。いい匂いだし。美味しいマクシミリアン国内食を食べさせてくれるし、いつも、私のことばかり見てくるから苦手なのよ」
「……私、ノロケられてる?」
「ノロケじゃないわよ……良いところしかなくて困ってるの。殺れないじゃない。利点がありすぎて」
「じゃぁ……悪いところは?」
「ちょっとベタベタくっつきすぎ。まぁ……慣れてしまったけど。あとはそうね……ちょっと隙あらば胸を揉もうとするのやめて欲しい。揉ませてあげる気分が起きないわ」
「………悪いところは?」
「…………………思い付かない。くぅ……殺せ私を……恥ずかしいわ……ノロケてるんじゃないの……でもね……」
「好きなのはわかったから……悪役令嬢やめてヒロインになれば……」
「残念だがメアリーさん。もう既に銀姉は俺のヒロインだ」
唐突にソーマがテーブルに近付き私の隣に椅子を置いて座る。手は私の太ももに置いて触ってくる。その手を私はつねるが全く退かす気配はない。
「いやぁ~銀姉の太もも。服の上からでもわかるぐらい柔らかいなぁ~」
「はぁああ!? セクハラ発言よ!!」
「……失礼しますわ。イチャイチャ見せられて。黒い感情が沸きそうなので」
「ちょ!? セシリー!?」
「末永く爆発してろリア充くそ悪役令嬢シャーリー」
「??」
ソーマが首を傾げる。言葉の意味が理解出来ていないらしい。
「末永く……爆発? りあ?」
「簡単に言うわ。末永くお幸せに」
「もちろん銀姉は俺が幸せにする。俺も銀姉が居れば幸せ……モゴモゴ!!」
私は手でソーマの口を押さえた。
「黙れ!! ソーマ!! お願いだから!! 皆見てる所でそんな恥ずかしいことは言うな!!」
「………」コクコク
テルが頷く。それを見て手を離した瞬間。
「愛してる。シャーリー」
「クソシネエエエエ!!」
パシッ
おもっきりグーパンチを決めるが手で防がれる。掴まれて全く動かない。
「綺麗な手が汚れてしまう。それに周りが見ている」
「見ているなら黙れ!! 恥ずかしいのよ!!」
「恥ずかしくて照れてる君が見れるなら羞恥心はきっと無くなる物だ。愛と天秤にかけるまでもない」
「羞恥心を無くすな。重要!! 拾え!!」
「焦る銀姉。かわいいすぎ。なぁ~このあとさぁ~一緒に何処か行かない?」
「ナンパはやめろ!! 行かないわよ!!」
「お家デートか。わかった」
「耳塞がってんの!? 嫌がってるよね!?」
「銀姉はあまのじょあくだから……嫌がってるじゃなくて好きなんだろ?」
「くぅ……そんなこと言ったら。全然言葉が変わるじゃんか。このバカ!! 好きじゃないわ!! 大好きよ!! あまのじょくなら!! これでどうだ………これで………ああああああああああああ!!」
「!?」
「…………」
カフェが静かになりストーブ音だけ響く。皆がニヤニヤして私を見ていた。
「銀姉……皆が見てるからな? 恥ずかしいからやめろよ!!」
「うぅ……違う。これは……本心じゃ……」
「俺も銀姉のこと大好きさ」
「ひっく……もうやめて……許して……」
ソーマに慰めながら。店を出た。口が滑ってしまい取り返しのつかないことになってしまったのだった。
*
「ねぇさま……ちょっと近付けませんわね。シンシアさん」
「でしょう? すーぐに二人の世界つくちゃうから割り込めないの……いいえ。ソーマさんが割り込めさせないほどに独占欲が強いんです。牽制してます」
「引き剥がすの難しそうね……ふひひ」
「どうするんですか? ローリエお姉さまは?」
「シンシアさん。情報提供ありがとう。後は見ていなさい。これが私達の戦いよ」
「………」
シンシアは蚊帳の外である事を自覚し何も言わない。シャーリーお姉さまを信じているから。
悪役令嬢として私を彼にくっつける行為は変だったけど。それができるお姉さまは負ける気は一切なかったのだった。
「……ローリエさん。なんで勝ちたいんですか?」
「お姉さまは影なら私は深淵。あの銀髪が無ければただの予備品だったのにお姉さまは………」
「お家事情は知りませんが……やめた方がいいです。いろんな令嬢が結託して裁こうとして返り討ちになってます」
「……ふふ。壁は高い方がいいのよ」
シンシアは「ああ、やっぱり姉妹なんだ」とその一言でわかるのだった。




