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仁義なき悪役令嬢   作者: 水銀✿党員
最強暗殺者は婚約者に弱い。婚約者は暗殺者に滅法強い。
35/59

悪役令嬢×悪役王子の第五歩 : 銀狼と金狼……そして黒狼。


 待ち合わせ場所で私は彼を待たせていた。コーヒーをちびちびと飲みながら本を読んでいる彼の目の前に堂々と座る。店を変えたのはコーヒーがないからだ。


「こんにちは。お待たせ」


「……銀姉の所へ行ってたのか?」


「そうよ。宣戦布告してきちゃった。どっちが本当の家主かを決めるの。『あなたを私の物にする』と言ってね」


「ふーん。銀姉はどうせ、『あげるとかなんとか』と言ってたんだろ?」


「『奪えるものなら奪ってみなさい』だって」


「……本当にそんなことを?」


「ええ」


 彼は本を畳んで真剣な眼差しで私をみた。にやっと笑みを返す。


「あなたは物。強者に従うの……私と組みなさい。婚約者としてね」


「……愛してもない男と一緒になるのはいいのか?」


「いいわよ。使えるかどうかよ」


 そう、使えるかどうか。愛なんてのは表だけでいい。私はそう言う生まれである。


「話は以上だな。今日は先に帰る」


 彼は立ち上がる。焦燥感が漂い、彼の額から汗が出ていた。冬なのに。


「焦ってる。慌てなくても………あなたには危害を」


「どうでもいいから。帰る」


「……まちなさい。依頼でしょ!!」


「依頼なら断る」


「断ったらどうなるかわかってるの!!」


「どうなる? 殺すか? やればいい。受けてたつ」


 彼は手をあげてその場から立ち去った。私はドカッと席に座る。本が置かれておりそれを手に取った。


「ふん。忘れ物ね……どうせお堅い本でしょ」


 読んだ瞬間、顔が熱くなる。内容は過激な官能小説だったためだ。


「ちょっと!? あいつこんなところで!!」


 凄く変人の片鱗を私は見た。「涼しい顔して……なんてものを読んでいるんだ」と怖くなる。





 


「今日もソーマがいないから静かね………」


 寝室のテーブルで紅茶を飲みながら。のんびりしている私は笑顔で本を開けた。


「さぁ……続きは」


 ドンッ


「銀姉!! ただいま!!」


 勢いよく扉を開けてソーマが息を荒げながら私の近くへ立つ。なにこいつ怖い。


「おかえり。早かったわね」


「ああ。依頼は棄てた。銀姉頼みが……」


 唐突にソーマが手を合わせてお辞儀をする。私はそのちょっとな行為にふふーんと胸を張って威張る。


「な~に~ソーマぅ~そんなに頭を下げてやっと下僕らしく………」


「銀姉……さわらせてくれ」


「……………はい?」


「触りたくてたまらない」


 ぞわっ


「……ちょっと!! いきなり背筋がゾワッとしたわ!!近付くな!!」


「もう。我慢しなくていいか婚約者だし」


「いや!? 我慢しなさい!! 怖いわよ!?」


「目を閉じれば……」


「くゅぅ……」


 私は強く目を閉じる。その瞬間、ポスっと頭に手を置かれる感触があった。


「あ、あんがい。普通ね」


「まだ足りない」


「えっ?」


 頭を撫でながら空いた手で私の頬を擦り、首筋に伝う。ゆっくりと下へ下へと手が動いて行き。太ももに服の上から触れる。


「………ソーマ。いつまで触るつもり………」


「ちょっと、満足」


「恥ずかしいから離しなさい」


「わかった……銀姉。今日のこと聞いたよ」


「今日のこと? あれ? あなたを頂戴なんて言われただけよ」


「でっあげなかった」


「……そんなことないわ。あげてもいいと思う」


「じゃぁ……『なんで奪えるもんなら奪ってみろ』と男らしいことを言ったんだ?」


「………さぁ~聞き間違いじゃないない?」


 私はそっぽ向いて膝の上に置かれているソーマの手の上に乗せる。


「………銀姉。おれは凄く嬉しかったよ。飛んで帰ってくる程に」


「い、一応。婚約者だから」


「それだけ?」


「………そ、それだけよ。でも………うん。婚約者を置いて何処かへ行かないわね。普通」


「俺らは一度いろんな人と破棄してる。が、今回は続いてる。それだけで『素晴らしい』と思わないかい?」


「………相思相愛と言いたいの?」


「相思相愛じゃないか?」


「………」


「………」


 ちょっと照れ臭い。


「おれは愛してる。誰よりも。君の妹はそんな愛は邪魔とか言うが俺はそう思わない。おれは絶対に君の元から離れない。最初の騎士の誓いより強固に約束する」


「……」


「銀姉がどれだけ大変な道へ歩もうとついていくし悪役として悪巧みするなら手伝おう。女神に誓って………いや……僕だけの女神になってくれシャーリー」


「……ええぇ~」


 ちょっとドン引きながら顔を下げる。愛が重たい。恥ずかしい。


「答えて欲しい。頷くだけでいい。頼む」


 私は顔を下に向けてプルプル震える。しゃがんで私を見つめる彼に目線を会わせられない。何故、こうも恥ずかしい言葉を全力で投げられるのか不思議に思う。


「そんな恥ずかしい言葉が……スラスラ出るなんて……」


「愛していたら大体、大丈夫と聞いている」


「そ、そうなの……ふーん」


「で、返答は?」


「………まぁ……勝手にすれば」


「銀姉らしい。銀姉」


 ソーマが立ち上がり私の顎を掴む。


「……今日もいただかれるのね」


「毎日しないと……落ち着かないんだ」


 私は抵抗せず。目を閉じて、彼の好意を受け入れるのだった。人間は……慣れる生き物。好意を受け入れるのも慣れてしまった。


「んぅ……ふぅ。キス……なれてしまったわね」


「毎日のお陰だな」


「……満足かしら?」


「満足」


「……私はもうちょっと……なんでもない」


「銀姉……可愛すぎだろ」


 いつの間にか……私は男を知ってしまったらしい。彼の唇は本当に安らいで甘く感じるのだった。








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